第9話 宇宙エレベーター
屹立する宇宙エレベーターは移出式だ。ワイヤー式ではない。コンテナを電磁レールに乗せて発射する。そしてステーション側で受け取る仕組みだ。そのコンテナに乗り込む。本来ならば人間が訓練無しで乗り込む代物ではないが、かれらは
「なあ、宇宙ステーションには何があるんだ?」
「……カグツチ隕石のサンプルとか」
「ふーん……そこに対星砲、か」
コンテナに窓は無い。荷物があり、四方を壁に囲われているだけだ。しかし、そこで、荷物の中からナニカが突き破って出て来る。
「白い兵士!? ツクヨミ財団の!?」
「私達が此処に来る事を知って!?」
財団兵がサイコキネシスでレイを捉えようとする。セツナはそれを雷撃で吹き飛ばす。
「ちっ! こんな狭い場所、しかも極地で多勢に無勢かよ!」
「……私に、任せてください」
財団兵の前に出るレイ、財団兵は然動力をレイに向ける。しかし、そこで。
「上位個体、複製体第零番が命じます。イザナミ兵は今すぐ戦闘行為やめなさい」
「……命令受諾、戦闘行為を中断します」
こちらに向けた腕をおろす財団兵。セツナは瞠目する。
「……今まで、なんでそれをしなかった?」
「……ステーションに着いたら、全てをお話します。必ず」
「――分かった。信じる」
しばし沈黙が舞い降りる。そしてガコンッ! という音と共にステーションに到着する。コンテナを降りる二人。
成層圏上にたどり着く、扉が開く。
そこには目の前に両手で抱えるサイズの大岩があった。
「カグツチ隕石……」
「……こっちです」
レイが案内したのはデータベースルームという部屋だった。
「此処に真実があります」
セツナはレイの力を借りてデータベースへとアクセスする。
――当初、心因性現実希釈症候群はカグツチ隕石の放射線による突然変異だと思われていた。少なくとも学者の中では。しかし、それは否定された。ありとあらゆる検査による情報はカグツチはただの石であるという事を証明した。つまり心因性現実希釈症候群とは人間の真なる可能性であり、人類進歩の一助であるという事が分かった。そこで我々はカグツチによる異能発現を再現。複製体に試験を実施した。
「複製体のデータにアクセス……」
――複製体、カグツチ隕石が降り注ぎ、我々は異能の発現が各地で発見された時、つまりまだ心因性現実希釈症候群と名前がつける前にとある少女を確保した。
「まさか……」
――その少女の能力は「生命の操作」それを利用し行使、少女に自身の複製を作らせた。その出来は完璧で、能力も再現されていた。その時点で少女は用済みだったが、実験部門に回した。数年来の研究の末、少女は死亡したが、計画に支障はない。
「……」
バチバチと青白き電気が静かな怒りを現す。しかし、セツナは静かに読み進める。
――新人類を生み出す計画は順調だった。被検体から生み出されたクローンは先ず財団の兵士として起用した、いずれは全クローンを第二次変性を引き起こし、第三次変性を引き起こした個体をリーダーとして宇宙へと放逐する。その際、用済みになった地上は廃棄する予定である。
セツナは電撃でデータベースを破壊した。
「セツナ……」
「レイ……イマは死んだのか?」
「……」
「そうか」
セツナは宇宙ステーションの奥へと歩いて行く、レイはその後ろにゆっくりと進んで行くのだった。
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