第8話 セツナVSリキ 下
爆炎と雷光が交差する。片や虚ろな器、片や信念の籠った剣。地下トンネルは赤と青の光に埋め尽くされていた。ゴウキがレイを避難させる。
「本当に勝てるのか?!」
「相手は死なないだけ……回復はしない、はず」
「はずってお前」
ゴウキは歯噛みするしかない、自分の異能ではあの戦いに参加出来ない事を悟っていた。ただの肉体強化。現実を希釈し幻想を通した結果とは思えない。いつもこうだ、とゴウキは壁を殴り穴を開ける。驚くレイ。
「ああ、すまない……なあ、レイ、さっきセツナと何かを話していたよな? 第二次変性がどうとか」
「それは……」
「俺にもやってくれないか。出来るんだろ?」
「……あなたの力を強化したら反動で肉体が耐えられないかもしれない」
ゴウキは構わないと無言の首肯でそれを伝えた。レイもまた無言の首肯でそれに答える。
「かなり痛いよ」
「ああ、慣れてる」
一方、セツナとリキは激闘を繰り広げていた。雷撃は業炎を食い破り、炎熱は雷光を苦しめる。敵は不死性を持った
「ぶ、ざ……ま」
「ゾンビに罵倒される日が来るとはな……ッ!」
雷撃で辺りを包む、業炎を飲み込む、しかし、その炎は逆に雷光を包み込んで圧縮した。雷を喰らうセツナ。
「がっあああああああ!?」
「セツナーッ!」
そこにバイクが突っ込んで来た。UAZの後部座席に乗せていたのだ。乗っているのはもちろんゴウキとレイ。レイをセツナの傍で降ろすと、ゴウキは鎧を身に纏いリキと対峙する。
「これが第二次変性、俺が欲しかった幻想だ。あの日、俺が隕石に抱いた感情は『畏怖』畏れ多くも恐怖した。だから鎧が欲しかった。でもそれは不可視で、俺の目の前に現れてくれなかった。それは現実の強度が強かったから、今の俺はレイのおかげで現実の強度を超える肉体を得た。えーっと説明こんくらいでいいか?」
「ざ、こ……が」
鈍色の鎧と深紅の炎がぶつかり合う、そして、ようやく、突破する。アラハバキは突破する。その炎の壁を突破する。穴が開く、リキへと一直線の経路が開く。それを辿るのは無論。
「セツナァ! いつまで寝てんだァ!」
「わーったよ! リーダー!」
立ち上がる。人類最後の希望。対星砲を止めるため雷撃の一撃を放つ。
「悪いリーダー! 車両借りるわ!」
UAZを用い弾丸とする。雷撃を纏わせて、発生した磁力で吹き飛ばす。リキにぶつかり爆発する。それはあくまで目晦まし。最後の一手はセツナ自身。突撃した光の矢は全てを切り裂く。
「アラハバキ特製電熱ナイフ……! 保ってくれよ!!」
本来ならば、セツナの出力にナイフが耐えきれない。これは第二次変性前からの懸念事項だった。しかし、今、オーバーロードを引き起こしてもナイフは原型を保っている。幻想が現実の強度を上回った。セツナの持つ武器はセツナに合わせその強度を変える。つまり世界の定義が書き変わる。ルールが世界からセツナへと譲渡される。リキはナイフでミリ単位に切り刻まれた亜光速の間に。埃を散らすように消えるリキ。セツナはレイの傍に駆け寄る。
「ありがとう」
「いいの、そんなことより急がなきゃ。対星砲が発射される前に、こっちよ」
その時だった。業炎が吹き荒ぶ。
「嘘……まだ生きてるの……!?」
「どうすりゃ……」
「セツナ! レイ! 先に宇宙ステーションに行ってろ!」
「ゴウキ……?」
ゴウキは鈍色の鎧からロケットランチャーを取り出した。そして指笛を吹く。すると、トンネル内に怒号が飛び交う。それはアラハバキのメンバー達だった。
「ここは俺らに任せて先に行け」
「言って見たかったんだろそれ」
「バレたか、いいから行け」
「ああ! 頼んだ!」
ゴウキは生体認証を突破するセツナとレイを見送るとアラハバキを背後にリキの残滓に宣戦布告する。
「お前は俺らが倒す!」
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