第6話 610/オウマと命/メイ
ゴウラは歯噛みする。量産兵士はアラハバキ殲滅に至らず、
「営倉からリキを出せ! 命令はこうだ! 宇宙エレベーターの一階でセツナを始末しろとな!」
「かしこまりました」
ゴウラは衛星の監視映像や設置されたカメラの映像を眺めながら、思案する。
「リキが負けた場合を用意する。
「610ですね」
「それだ。今から
「かしこまりました」
側近はその場を後にする。ゴウラは楽し気に笑う。
「楽しませてくれよ、バイオエレクトロニクス。最強のサイコキネシスト相手にどう立ち回るのか、俺を楽しませてくれ」
――俺に自我など無いはずだった。だけどとあるモノを見せられた。それは隕石群が降り注ぎ都市を破壊する様子を3Dホログラム再現した映像。それを見て俺は『羨望』の感情を抱いた。すると、他のクローンとは違う
「あなたが610?」
「はい」
「感情が無いフリなんてしなくていいわよ」
「……」
――全て見抜かれているのだろう。ではこれから何が起こる? 欠陥品の処分は彼女の担当なのだろうか。アルビノの少女はこちらに手を差し伸べると。
「少しくすぐったいわよ?」
と言って――
「あ、ああああああああああああ!?」
610の全身に激痛が駆け巡る。しかし、それも一瞬、彼の全細胞は生まれ変わった。
メイが610の手を引く、すると、そこには大きな岩があった。軽く一トンは超えてそうな。
「さ、持ち上げてみて? もちろん、サイコキネシスで」
「……はい」
――自分は兵士だ唯々諾々と従うだけだ。
610が大岩に念動力を込める。すると軽々と持ち上げ、身体の変調もない。これは――
「これはどういう事ですか?」
「第二次変性、あなたは最強のサイコキネシストとしてその才能を開花させた。私のおかげでね」
「俺は戦えるのか?」
「ええ」
610は歓喜した。全てに感謝した。戦うために生まれた生命にやっと意味が生まれた。思わずメイを抱きしめる。
「ひゃわ!? ふ、不敬ですよ!?」
「ああ、申し訳ございません!!」
「……コホン、今回だけは見逃してあげます」
そうして宇宙ステーションにて仄かに甘酸っぱい香りと血生臭い戦闘の香りが入り混じった、混沌が生まれたのだった。
「そうだ、あなたに名前をあげなくちゃ、いくらなんでもシリアルナンバーだけじゃ寂しいわ」
「……?」
「そうね、オウマ、オウマはどう?」
「はい!」
まるで尻尾を振る子犬。由来すら知らずに。逢魔が時、魔が迫る時刻を指示したというのに。
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