第2話とある幕府物語 二章「嵐の前の静けさ」

登場人物

・大宮…(一番隊隊長、荒くれ者を纏める強者だが酒癖が悪い) 

・古宮…(一番隊の参謀、スイッチのオンオフがハッキリしてる基本寝坊助)  

・木更津…(一番隊のお調子者、馬鹿なことしか言わず、隊を困惑させるが)

・轟… (一番隊の脳筋、猪突猛進しか頭にない)

・N(ナレーション)…語り手


 

 N「裏飯茶屋事件の後、反乱の兆しを感じ取った。古宮は、組員を鍛え上げるべく訓練に力を注いでいた」

 

 二章 「嵐の前の静けさ」

 

 木更津「ぶはぁ〜疲れた〜」

 轟「お前、そんなので疲れるとか雑魚いな」

 木更津「いや、お前の体力が化け物なんだよ」

 轟「ブハハハ、お前の体力がねぇだけだろ」

 木更津「てか、大宮さん最近稽古力入れすぎだろ」

 轟「でも確かに、前も気合入ってたけどさらに気合入ってるよな」

 木更津「なんか、あったんかな大宮さん」

 

 N「前の組みの打ち合いが終わり番が回って来た。」

 

 轟「おっと俺達の番か木更津いくぞ」

 木更津「もうちょっと休憩させてくれよ」

 

 N「轟と木更津の模擬戦が始まる」

 

 木更津「行くぞ! 轟!」

 轟「さぁ、どっからでも打ち込んでこい!」

 木更津「オラ! オラオラ! くらえ!(竹刀を打ち込む)」

 轟「ふっ! (攻撃を避ける) 木更津打ち込みがあまいぞ!」

 木更津「クッ!これでどうだ!」

 轟「だから甘いって言ってんだよ!」

 

 N「轟のカウンターで木更津は倒れ込だ」

 

 木更津「うぁ! いててて」

 轟「お前これが戦場だと真先に死ぬぞ」

 木更津「いや、お前が強すぎるんだって」

 轟「そう言われてもよ。俺はまだ弱いよ。古宮さんみてみろよ」

 古宮「ふっ!はっ! オラっよ!お前らもっと真剣に打ち込めよ! 死にテェのか? 死にたくねぇならもっと打ち込んでこい!己を守れるのは己だけぞ!」

 轟「今倒したやつでもう10人抜きしてるぞあの人」

 木更津「ありゃ〜。あれは鬼だな」

 古宮「あ?木更津お前何稽古中に寝てるんだ?」

 木更津「なんで急に俺に目をつけてくるんすか」

 古宮「お前が暇そうにしてるからからだよ。ほら、相手してやるから打ち込んでこい。」

 木更津「おりゃー!」

 古宮「遅いな。ふっ!」

 

 N「木更津、古宮の一太刀に沈む」

 

 木更津「ぐへー」

 古宮「木更津もっと稽古に励むんだな。轟、木更津のこと頼んだぞ」

 轟「分かりやしたよ。古宮さん」

 木更津「なんか今日の古宮さん怖かったな」

 轟「これから何か起きるかも知れないって事かもな」

 木更津「それは嫌だな。戦いに行きたくねぇ」

 轟「死なねぇ様に稽古続けるぞ」

 

 N「古宮稽古後自室にて」

 

 古宮「はぁ、疲れた。もう寝ようかな」

 大宮「古宮いるか?」

 古宮「はい? いますがなんでしょうか?」

 大宮「今、何かしてたか? 悪かったな」

 古宮「いや、稽古も終わったので昼寝でもしようかと思いまして」

 大宮「お前は昼寝好きだな」

 古宮「当たり前じゃないですか。今日は稽古終わってから用事はなんですよ」

 大宮「あぁ、そうだったな」

 古宮「で、なんの様なんですか? 何もないなら寝たいんですけど」

 大宮「すまん、伝えたかった事なんだが、懸念していたことがとうとう起きた」

 古宮「と、言うと?」

 大宮「外様大名である木嶋長政(きじま ながまさ)が謀反を5日ほど前に起し花都へ進軍中と情報が入った」

 古宮「なるほど。とりあえず、内容は理解しました」

 大宮「俺は、花都で戦いが起こることを防ぎたい」

 古宮「でも、幕府軍が討伐隊を編成しているのでしょう? そう考えたら、ここまで木嶋軍は攻めて来れないと思いますが」

 大宮「いや、討伐隊を編成し向かっているのだが、謀反を起した木嶋軍が想定してたより強くてな苦戦をしいられる戦いになりそうなんだ」

 古宮「まぁでも、私達のやることは花都の治安を守ること。でも、この都に危険が迫ってきたら私達も出陣の命令が来るかもしれないですね」

 大宮「あぁ。準備だけはみんなにさせて置いてくれ」

 古宮「わかりました。あの事件以降稽古は厳しくしていますが、さらに鍛えないとという事ですね」

 大宮「あぁ、そうだ。で参謀の、古宮の知恵を借りたいんだが、少しいいか?」

 古宮「いいですけど、なんですか?」

 大宮「木嶋軍だが何処からせめて来ると思う?」

 古宮「ちょっと待ってくださいね。えぇとここにあったはず」

 

 N「古宮は小棚から地図を取り出した」

 

 古宮「あったあった。そうですね」

 

 N「地図を大宮に見せるように広げた」

 

 古宮「私の考えですけど良いですか?」

 大宮「俺はお前の知恵を借りたいんだ頼む」

 古宮「分かりました。そうですね。この都に攻め込むにはまず、時守城か萩月城のどちらかを必ず落とさなければならない」

 大宮「なるほど。でお前はどっちを落としに来ると思う」

 古宮「時守城ではないですかね」

 大宮「何故そう思う?」

 古宮「簡単ですよ。木嶋の持つ国には海があり時守城の近くにも海がある。萩月城は山上にあるので狙われ難い」

 大宮「ほう」

 古宮「相手が強いと言っても所詮は人間です。討伐隊とぶつかったとしても相手もただ事では済まないでしょう。そこで、海の近くにある城を落とす」

 大宮「ほう。何故海の近くの時守城なんだ?」

 古宮「それは今から説明します」

 大宮「続けてくれ」

 古宮「はい。海の近くの城を落とす事で自国から武器や物資を届けやすくしたいと考えられます。陸路より海路のほうが多くの物が運べますし、何より攻め込んだ時、海と陸からの挟み撃ちが出来るようになります。私の予想ですが攻め込む利点はこんなところですかね」

 大宮「なるほど。では、時守城をまず落とすには、水南街道(スイナンカイドウ)を上ってくる必要があると考えて良さそうだな」

 古宮「そうですね。敵からしたら人が疲弊しにくい道を選びたいと考えますし」

 大宮「古宮助かった。とりあえず、我が組の意見として上に報告をあげておく」

 古宮「まぁ、そこまで来るにも、幕府軍に食い止められると思いますけどね」

 大宮「あぁ、ありがとな。あと、昼寝の邪魔して悪かったな」

 古宮「いいですよ。明日の昼は全力で昼寝しますから」

 大宮「いや、お前昼は街の巡視する役目だろ」

 古宮「そうでしたね。なら頑張って働きますよ」

 大宮「サボるなよ」

 古宮「私は仕事はサボりませんよ」

 大宮「じゃ、また来る」

 古宮「また、情報が分かり次第私にも教えて下さいね」

 大宮「あぁ、分かった」

 

 N「会話の三日後、木嶋軍の両軍が水南ヶ原(スイナンガハラ)にて激突。幕府軍応戦するも敗走喫す。その二日後に幕府軍の惨敗であったと一報が花鳥取締組に伝わった」

 

 大宮「古宮、皆を広場に集めてくれ」

 古宮「分かりました」

 

               二章 完

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

とある幕府物語 瑠衣君 @ruirui-9

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る