第12話
天使と名乗る天野に助けられた翌日。桐谷は依頼人に頼まれた品物を届けに行く。白いバイクを止めたその場所には、一軒家とは思えない程の敷地の中だった。玄関口から現れた家政婦の女性に案内され桐谷は家に入った。
双木(ふたき)「待っていたよ桐谷君」
大きな応接室にいたのは、体格のガッチリとした白髪の男性だった。
桐谷「遅くなりました。こちらが双木様のご依頼品です」
桐谷が双木に手渡したのは1冊の本だった。双木は本を受け取ると、桐谷に背を向け本の中身を確認した。
双木「よかった。ちゃんと入っている、これは妻の形見なんだ」
桐谷「奥様の、」
双木「ありがとう桐谷君。疲れているだろうから、日を改めて御礼をさせてくれないか?」
桐谷「お心遣いありがとうございます。そのお言葉だけで十分です」
そう言うと、双木は優しい笑みを桐谷に返した。依頼品を渡し終えた桐谷は、白いバイクに乗り次の依頼へと向かった。
・・・
自宅のお風呂から上がると、桐谷のスマホに双木から1件のメールが届いていた。桐谷が依頼品を渡してから1週間が経っていた。メールの内容は端的に書かれていたが、桐谷はその内容を理解するのに時間がかかっていた。そこには、依頼品の本に入っていた妻の形見であるネックレスがいつの間にか無くなっていた事。そして、その行方を追う為に動いていた息子の和哉(かずや)が行方不明になっていると言うメールだった。メールの最後には、桐谷に無くなったネックレスと息子を探して欲しいと書いてあった。桐谷はこの一件の犯人に心当たりがあった。以前会った桜田と名乗る男と、桐谷を欺いた井岡の存在だ。桐谷は改めて双木からのメールを読み返すと、桐谷だけでは危険だと思い、他の人間にも協力をお願いしてあるとの事。その協力者とチームを組んで依頼を遂行して欲しいと添えられていた。メールの最後の文章の下には、協力者の連絡先と名前が書かれていた。桐谷は早速、協力者の電話番号に連絡をした。
スマホから流れる呼び出し音。すると直ぐに協力者と電話が繋がる。
蒔田「もしもし」
桐谷「私は双木様から依頼を受けた者よ、あなたは蒔田って人かしら?」
蒔田「そうだ、ショートメッセージをすぐ送る。指定した場所に来い、話はそれからだ」
桐谷が答える間も無く電話は切られた。
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