第10話

蒔田と山上が沈没した大型客船に潜入する3日前。伴場は釣り仲間と船に乗り、大型客船が沈没した付近に来ていた。


伴場「ダメだな、全然釣れやしねえ。、、沈没船の影響かねえ」

そう呟くと、伴場はポケットから電子タバコを取り出してスイッチを入れる。口から水色の煙を吐きながら、左の手のひらを開き始める。


時が遡り始める。穏やかな日本海。その海面から大きな波と水しぶきが上がる。その中から現れたのは大型客船の姿だった。


伴場「おぉおぉ。こりゃでっけえ船だ」


伴場が乗る釣り船よりも遥かに大きい客船が目の前に浮かぶ。伴場は釣り船の操縦を行い大型客船に近づく。ここで一度左手を握り一時停止させた。既に割れている客室の窓を目掛けてフックの付いたワイヤーを銃の様な物で狙い打つ。


伴場「よし、引っ掛かったかな。じじいにこんな事よくやらせるよ。怪我しても知らねえぞ」


そして、ワイヤーリールを始動させ、客室の窓から侵入する。船内の見取り図を元に依頼人の部屋を探す。伴場は船内にいる人間達を避けながら進む。


伴場「えーと、303、あったあった。、コンコン。お邪魔しますよ」


伴場がNo.303と表示された部屋に入ると、若い男女がベッドの上であぐらをかいて向き合っていた。伴場は依頼品が、この部屋の机にあると言う事実確認をする為に来ていた。


伴場「引き出しの中に、、あったよ。大丈夫だ、後で迎えに来るからねー」

そう言って伴場は引き出しを閉めて、部屋を後にした。

伴場「彼女の誕生日にネックレスのプレゼントかー。俺も若い時、女房の誕生日にあげてたな。今はどこにあるんだかな」

伴場は電子タバコのスイッチを切った。


・・・

蒔田と山上は、依頼品を渡すために公園の中にある噴水の前に来ていた。


蒔田「こちらが依頼品です。中身は確認していません」

蒔田から群青色のケースを受け取った若い女性。

鷹野(たかの)「ありがとうございます!、彼氏が私のために用意してくれたプレゼントだったので。どうしても受け取りたくて」


蒔田にはひとつ、気掛かりな事があった。それは、蒔田よりも先に依頼人の部屋に入っていた人間の存在。変な胸騒ぎを感じ、蒔田はつい依頼人に聞いてしまう。


蒔田「あの、、」

鷹野「はい」

蒔田「ここで依頼品の中身を開けて頂く事は可能でしょうか?」

鷹野「あ、大丈夫です。はい」


女性は蒔田にそう言われ、群青色のケースの蓋をゆっくり開ける。


鷹野「あれ?、、ネックレスが、、無い。です」

山上「蒔田、何かあったのか?」

蒔田「すいません。もしかすると、ケースの中身だけを盗んだ人間がいる可能性があります。なので再度、中身のネックレスを探すお時間を頂けますか?依頼料はネックレスをお渡し出来た時で良いので」

鷹野「え、はい、探して頂けるなら私は問題無いです。すいません、よろしくお願いします!」

蒔田「ありがとうございます」


そして、依頼人と別れた蒔田と山上は車の中に戻る。運転席に座った蒔田はすぐにスマホを開き、直近に受けた依頼人数名に連絡を取り始めた。その結果、箱状で中身の確認出来ない依頼品に関して、依頼人からは中身だけがなかったと返事があった。


山上「蒔田、どういう事だ」

蒔田「依頼人の品が次々に盗まれてる。しかも中身だけだ。こんな事が直近で続くのは、おかしすぎる」

山上「蒔田が前に言っていた、悪魔とか契約者の話が関係してるのか」

蒔田「俺達は踏み込んではいけない領域に足を踏み入れた可能性がある」

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