第6話
蒔田と山上は屋上の扉を開け、階段を降りるとエレベーター乗り場があった。そこを通り過ぎ、短い通路を進むと銀色の扉が存在していた。
蒔田「ここだ」
山上「扉なのか、ドアノブも鍵も付いてない只の銀の壁だぞ」
蒔田「先に説明する。金庫室の中にはひとりしか入れない。俺は万が一に備えるため、このイヤホンから指示を出す」
山上「わかった」
蒔田「中に入ると、床一面が碁盤の目になっている。その床下からはセンサー付きの地雷がランダムにせり上がってくる。俺の指示通り一マスずつ進め。間違えれば、床下から上がってきた地雷がお前の体重に反応して爆発する」
山上は頷き銀色の壁を見つめた。蒔田は右手の人差し指で、何もない銀色の扉に三角形の頂点を触るように3回触れる。
ピーピー
すると、小さな電子音が鳴り、山上の目の前にあった扉が左にスライドした。山上の視界には真っ白な部屋が現れた。
蒔田「行くぞ。まずは目の前にあるマスから2マス直進」
山上が真っ白な部屋に入ると、すぐに扉が閉まった。
・・・
伴場に遅れること10分。部下の古武と鑑識等の警察が合流する。
伴場「いや~。どっちだっけなー。右だった気がすんだけどなぁ。肝心な所で眠気が来ちまったからなー」
古武「おはようございます!、仁さん朝強いっすねー!アラームのスヌーズって誘惑なんすよね」
伴場「おぅ、ご苦労さん。見たか今回の絵、、なんか花よりトゲの方が印象的でよ。痛々しいぞ」
古武「あー、忘れてました!、行ってきます」
鑑識がいよいよフラワーアートの調査に入ろうとした時。古武は銀行の自動ドアに描かれた絵を確認した。そこには、ダークブルーの薔薇にうねうねと葉や茎が伸びていた。茎から生える鋭利なトゲは、先端まで細かい線で描かれていた。見ているだけで痛々しさが伝わる絵だった。
・・・
山上は蒔田の指示を遂行し、金庫棚の壁面まであと一マスまで近づいていた。
山上「次はどこだ?」
蒔田「直進か、斜め右のマスのどちらかだ。ここまで来て申し訳ないが、協力者が最後の一マスをうろ覚えなんだ。だが、おそらく右のマスだ。判断はその場にいるお前に任せる」
山上「直進か、斜め右」
山上は選択に迷っていた。真っ白な床に黒いラインで区切られたマス。一歩間違えれば片足が無くなる。最悪の事態も想定した。確率は2分の1。、、、、警察は信用出来ない。だが、前回の美術館の件では警察にミスがなかった。今の協力者は信用出きるかもしれない。、、山上は気持ちを決めて斜め右のマスに足を乗せた。
山上「金庫の壁面まで着いたぞ」
蒔田「よし。後は金庫棚にアルファベットで´´F18´´と書かれた扉を押し込め」
山上は正面の少し下に´´F18´´と書かれた小さな扉を見つけ、グッと押し込んだ。すると、押し込まれた扉が引き出しの様に出てきた。中には遺言書と書かれた白い封筒、そして赤色の箱が入っていた。
・・・
山上と蒔田は依頼品を渡すため、大きな橋の中腹に車を止め外に出た。先に到着していた依頼人の男性がこちらに気付き会釈をする。
山上「こちらが依頼品です。中身は確認していません」
金森(かねもり)「、、ありがとうございます」
依頼人の金森は、どこか不思議な表情で依頼品を受け取った。それに気付いた蒔田は金森に訪ねる。
蒔田「何か気になる事でも?」
金森「いや、、つい数日前、東山本銀行から僕宛に手紙が届いたんです。そこに、凍結された父の物品は銀行の金庫利用規約により破棄させて頂きました。と書かれていたので、依頼の件はお断りしなければと思っていたんです。でもこうしてちゃんと父の物を受け取れた。遺言書の字は間違いなく父の字です。本当にありがとうございます」
蒔田「そうだったんですね、無事に渡せて何よりです」
金森「はい!、すいません。早速この後、親戚達に見せなければいけないので僕はこれで」
そう言い、金森は白い車に乗って去って行った。蒔田と山上も車に戻り、直ぐにエンジンをかけ出発する。
山上「銀行からの手紙。俺達の方が破棄されるより先に取り出せたと言う事か」
蒔田「それなら良いが。、、俺達とは別の目的で動いている人間の仕業だとしたら、面倒な話になる」
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