第5話
深夜2時。都心のビル街に建つ「東山本銀行」と書かれた高層階の建物。その入口となる自動ドアに青い薔薇の絵を描く何者かがいた。
・・・
水色の煙で鼻の中をくすぐるのを楽しむ伴場。今朝、警察に通行人から通報が入った。誰よりも早く現場に到着した伴場は、他の仲間が来るのを待っていた。
その時、山上と蒔田は東山本銀行の隣に建つ廃ビルの屋上にいた。2人は黒い服装に身を包んでいた。
蒔田「依頼品は隣に建つ、東山本銀行の隠し金庫にある、依頼人の父からの遺言書と贈り物だ」
山上「父親に頼まないのか?」
蒔田「最近、亡くなったそうだ。銀行に預けた父の物は全て凍結させられて何も出来ない状況だ。依頼人の母が、父の遺言書と依頼人への贈り物は東山本銀行に預けてある、と知った事がきっかけで今回の依頼が来た」
山上「どうやって金庫に入る?」
蒔田「警察にいる契約者の男に協力してもらう。まずは銀行の屋上に飛び移るぞ」
山上「前回の協力者もその男か」
蒔田は山上を見て頷いた。そして、屋上の端に移動し思い切り走り出した。廃ビルの屋上の縁(へり)ギリギリで踏み切り、銀行屋上へ飛び白い柵(さく)を掴んだ。山上も蒔田に続き銀行屋上に向かって飛び移る。蒔田の手を借り無事着地した。蒔田は時計を確認した。
蒔田「あと2分だ」
時刻は朝7時58分。蒔田と山上は屋上にひとつだけある扉の前に立っていた。
蒔田「銀行員が開店準備で入る時刻丁度にこの扉を開ける」
山上「ボタン式の鍵がかかってるぞ」
蒔田「解錠番号は取得済みだ」
朝8時。東山本銀行の銀行員2名が来た。先に到着していた伴場に挨拶を交わし、裏口の従業員入口の鍵を開ける。同時に屋上にいる蒔田はボタン式の鍵を解錠し扉を開けた。
蒔田「おそらく、今下にいる銀行員は鍵持ちをしている社員1名と、警察からの連絡で急遽来ることになった支店長1名。鍵を開けると、セキュリティチェックが作動しアラームを鳴らす。鍵持ちは扉を開け、アラームを鳴らすセキュリティの解除ボタンを押す。毎日のルーティーンに何の違和感も持たず、屋上のセキュリティチェックのアラームも解除するだろう。直に警察が入口に描かれた絵を調べに来る。それが終わるまでに依頼品を持ち帰る」
山上「依頼品のある金庫の場所は1階か?、地下か?」
蒔田「いや、この最上階だ」
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