第3話

伴場と古武がフラワーアートの件で、タカノ美術館を訪れる3年前の話。

・・・

伴場は部下の日下(くさか)と2人で居酒屋に来ていた。日下は満足気な表情を見せるのに対し、伴場はどこか煮え切らない表情を見せていた。


日下「仁さん!一課への異動、おめでとうございます!」

伴場は日下が掲げたビールジョッキに日本酒が入ったおちょこで乾杯した。

日下「すごいですよ!三課から一課に異動なんて、三課の全員鼻高々ですよ。栄転ですね!」

伴場「なんだかなー。こんなジジイを一課に呼んで何になるんだかな」

日下「何弱気になってるんですかー。三課の希望なんですからね!応援してます!」

そう言って日下はジョッキに入ったビールを飲み干した。伴場はおちょこに新しい日本酒を注ぎ、一口飲んでゆっくり目をつむった。


伴場「なぁ日下。この間まで、うちが捜査してた連続通り魔事件。急に打ち切りだったな」

日下「仕事の話ですかー。、、でも何であんな唐突にストップかけられたんですかね?防犯カメラに犯人らしき人物の顔まで映ってたのに」

伴場「俺は警察内部にその事件に関与している者がいると見た。じゃなきゃ急に一課の桜田が現れた理由がわからん」

日下「怖いこと言わないで下さいよー。、、内部監査も勤めてる桜田さんが来たからって勘ぐりすぎですよ」

伴場「警察が正義とは限らんぞ日下、俺は単独でもこの事件調べるつもりだぞ」

日下「そんなに気になるんですか?」

伴場「あぁ。俺の勘が怪しいって言ってんだ」

日下「、、独りじゃ危ないですよ。、、本気なら僕も使って下さい。元々三課の担当だったから、まだ資料は残ってるはずです」

伴場「悪いな日下」

日下「飲みましょ飲みましょ!今日は祝い酒何ですから!」


伴場は、三課で担当した最後の事件が突如捜査を打ち切られ、未解決事件になりかねない事に憤りを感じていた。もう少しで通り魔犯の尻尾を捕まえる寸前に、捜査一課の桜田が打ち切りを伝えに来た。明らかにおかしなタイミングでやって来た桜田に、伴場は警察内部に蠢く悪を垣間見た。


伴場が捜査一課に異動して1週間が経った。伴場が署内の喫煙所に向かう途中、廊下で偶然にも桜田と出会った。


桜田「おー。これはこれは伴場さん。お疲れ様です」

伴場「お疲れさん」

桜田「ひとつだけ、警告しておきます。もう連続通り魔事件に足を突っ込むのはやめて下さいね」

伴場「うん?、じゃあ解決したんだな?」

桜田「ええ。三課の皆さんのスピードよりも早くに一課が動きましたから」

伴場「おかしいなー。まだ新聞に事件解決なんて記事、載ってなかったけどなー」

桜田「載せる必要なんて無いんでしょう、伴場さん。警告しましたからね」


話が終わり伴場と桜田は、お互い別々の方へと歩き出した。


・・・

それから一週間後。伴場は捜査一課の仕事の傍ら、日下と協力して通り魔事件の調査を進めていた。そこで、日下から監視カメラに映っていた映像から犯人だと思われる人物が特定できたとメールが入った。伴場は急遽一課の仕事を切り上げ、近くの駅前で日下と会うことになった。


日下「すいません!、、遅くなりました」

伴場「ご苦労さん。それでどうだった?」

日下「仁さんの勘が当たりましたよ。犯行現場周辺の監視カメラ映像から顔が確認出来たので間違いないかと。」

伴場「内部の人間か?」

日下「はい。警察庁長官のご親族の方でした。このUSBに犯人の画像と新しい捜査資料が入ってます」

伴場「わかった。何かと面倒かけたな。ここからは俺独りで動く。日下はしばらく俺と距離を置け」

日下「僕は大丈夫です。ただ、仁さんの事が心配なだけです。何かあったらすぐ連絡して下さい!」

伴場「ありがとさん」

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