第7話 管理人生活、始動 その4

 さて、何もこの寮には1人しかいないわけではない。

 当然この後も寮生が帰ってくる、そんな時間である。


 さくらが自分の部屋にあがっていったのを確認したところで、あることに気づく。


「そういや夕飯のおかずどうしよ……」


 寮生の好みを知っているわけではない。

 ただ、昨日祖母からは、


『ご飯のメニューに困ったらさくらちゃんに聞きなさい。あの子が食べたいものはだいたいみんな今一番ってわけじゃなくてもどことなく食べたいやつだから』


 とアドバイスを貰ったので。


「さくらー、上がったところ悪いけど今日の夕飯のおかず何が良いー?」

「主食はなんですかぁー?」

「白米は決定事項だよー」

「じゃあ唐揚げがいいですー!」

「サラダは皆食べるのー?」

「食べますよー。結構皆食べます!」

「はいよー、じゃあまずは課題ちゃっちゃと終わらせなさいー」

「はーい」


 上と下で話してればこんな感じである。

 そういえば祖母に、


『結構食べる子もいるから、おかずは揚げ物とかでも寮生だけで男5人前はいるからね』


 と言われていたのを思い出し、自分の分を入れて鶏肉を切っていく。

 そのまま漬け込みにかかると、そのすきを突いてサラダを作る。

 その後は一旦暇になるので、その間にスープに取り掛かる。

 唐揚げ、ご飯、サラダとくれば味噌汁が欲しくなるというもの。

 ただし、あまり時間はかけていられないので、豆腐とわかめだけではあるが。

 それも短時間で済ませると、スイーツに取り掛かる。

 といってもこっちはすでに下準備を終えており、あとは時間に合わせてオーブンに突っ込んでおしまいではある。

 そこまでくればあとは漬け込みをギリギリまで行って(本来は1日以上やるものをわずか数時間でできるように裏技を用いているが、それでも漬け込み時間は長いほうが良い)いる間が暇。

 それさえ終わればあとは揚げさえすれば終わり。

 となれば本来は管理人室に閉じこもっているのだが、ピアノを直したっばかりなだけに弾きたくてたまらない。


 そこで火を消したのを確認し、ピアノのところまで移動する。


「さて、何を弾こうかね」


 初っ端から性癖全開でボカロを弾いても良いのだが、そこで帰ってこられても困る。

 そこで、ボカロではあるものの、合唱に使うこともできるある曲に決めた。

 そういえば昔、高校生時代に合唱したな、と思い出す。

 あのときは合唱コンのあとの謝恩会のクラス発表に向け、皆で頑張ったものだった。

 自分はあのときは指揮をしつつ歌っていたものだ。


 当時散々歌っていたせいか、弾きながらでも自然と口から出る歌詞。

 そして当然、玄関から入ってきた次の寮生に気付くことが出来ず。


 ガチャリ。


「あら、『贖罪』ですか、新しい管理人さん?」




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 「贖罪」ってボカロですけど、合唱曲なんですよね。

 実は結構気に入っていたりします。

 伴奏弾くのは大変ですが。

 下のURLは「贖罪」の動画です。多分公式。


URL:https://www.youtube.com/watch?v=uoL_7cX0pCQ


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