第4話 寮管理人生活、始動 その1
最後の授業からおよそ3週間経った4月7日。
いままで在籍する生徒がいないときに構造の確認や自身の荷物の運び込みを終え。
いよいよ今日から管理人生活である。
在籍生は高2が1名、高3が2名、大1が1名の計4名。
希望すると大学は外部進学しても入居することができ、さらに就職後も数年間は入居を続けることができるのがこの寮の特徴である。
さらに言えば、寮と言っても大きめの洋館といった形で、普通の一軒家と変わらないばかりか、こっちのほうがよっぽど豪華だったりする。
さて、今日は始業式なので生徒たちは通常早く帰ってくるのだが、どうやらここに入居する子たちは部活などがあるらしく、すぐには帰ってこないそう。
唯一高1の子は新入生なため、入学式が終わり次第帰ってくるそうだが、入学式は午後。
よって午前中は通常の職務さえ終わらせれば暇そのもの。
昨日まで管理人だった祖母も、その前の母も、俺も親子揃って超きれい好きなためか、掃除してもし足りない気分になってしまうものの、そこらじゅうがピッカピカ状態。
そんななか見つけたのは、リビングのとある大きい黒い物体。
それはかなりの大きさのグランドピアノ。
そもそもこの建物は入ったところが玄関で、靴箱があるほか、管理人室の受付窓口のような窓が設置されており、ここで入ってくる人のチェックができる。
そのまま廊下を真っ直ぐ進むと防音仕様の、キッチン併設のリビングルーム。
その先にある階段を登ると入居者の個人ルーム、階段の手前の廊下を進むと風呂とトイレがあるという構造。
そしてこのリビングルームに設置されているのが例のグランドピアノ。
製造会社はかの有名なSteinway。
型番からして、値段は現在1000万円近くするという超高級品。
どう考えてもそれをそのまま放置しておくのはもったいない。
目立った汚れをすべて取り除き、綺麗にしたところで弾いてみようとしたが。
「こりゃひどいな、結構調律に時間食うぞ」
調律などのメンテナンスがされておらず、音がありえないことになっていた。
マイルームである管理人室へ戻り、道具を持って来る。
しばらくやってると、どうやらいつのまにか時間が来ていたようで。
ガチャ
「ただいま帰りました〜ってあれ?管理人さんがいない?」
しかしそれは俺には一切聞こえていない。
なにせ内部構造のチェックのために頭つっこんで作業してるのだ。
そんなんで玄関の声が聞こえるなら、そいつは玄関で大声で叫んでることになる。
結果。
「ただいま帰りましたってうぎゃぁ!」
初っ端でいきなり入居者を驚かせるはめになったのだった。
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