第25話 やっと学校……

 電車は遅れもなく東川口に到着。

 改札を出てすぐ地下にもぐっていく。


 ここから地下鉄に乗って、さらに歩いてようやく学校である。

 ここまでくれば、もう埼玉県川口市に入っているということもあり、ちらほらと同じ制服の生徒を見かけるようになる。

 ここからバスで行くこともできるのだが、なにせ時間がかかる。

 この時間なら、地下鉄で行くしか方法はない。

 もしくは遅刻するかの2択になってしまうのだ。


 多少めんどくさいが、わざわざここまで長く電車に乗ってきている以上、これ以上電車に乗ろうと乗るまいとあまり変わらない。

 そんな事情もあり、俺たちは電車一択だった。


 地下深くまで降りていき、そこからまた少し歩いてようやく改札口。

 そこを抜けてさらにもう一度エスカレーターを下りようやくホーム。

 ホームには電車を待つ人がそこそこいたが、案外電車が来るとそうでもなく、全員が座ってもなおまだ空席がちらほらとある状態。

 始発駅の次の駅だからなのか、それともたまたま車両の位置がよかったのかは分からないが、少なくともこれでのんびり座っていけることが確定した。

 電車はすぐにドアを閉めて走り出す。


 車内にいるのはこれから会社に行くのであろうサラリーマンと、どこか別の高校に通うのであろう高校生、そして同じ制服に身を包んだ高校生。

 そしてうち1人が俺の右肩に頭を乗せ、ぴったりくっついてくる。

 言わずもがな、楓である。

 人前だろうと何だろうと容赦なくくっついてくる楓。

 当然、それに気づいた同級生らしき生徒たちから殺意の目線(男子)と好奇心の目線(女子)を向けられる。


 それに気づいた俺は。


「楓、さすがに殺意を浴びたくはないんだ、だからまっすぐ座ってくれないか?」

「そんなの無視すればいいの。私たちの邪魔をする奴は敵なんだから」

「好奇心まで向けられても困る」

「いいじゃん、興味持ってもらえてるってことなんだから」


 楓に一蹴される俺。

 かくして俺は、3駅10分弱の間、殺意に耐える最悪の乗車になったしまったのだった。


 ようやく目的の駅に到着し、殺意から解放されるかと思いきやそんなことにはならなかった。


 ここから約20分にわたって歩いていくことになる。

 てっきり朝のつくば駅までのようにとなりを歩くだけかと思いきや。


「あの、楓?」

「なに?」

「なんでそんなにくっついてくるのかな?」

「なんでってそりゃちゃんと私の彼氏だってことアピールしたいからね」


 ピタッと足の先から肩までくっついており、その手は恋人つなぎにされていた。


 右腕にとっても柔らかい、けれど当たってはいけないものが当たっているのがわかる。


 さらに背後からものすごい殺意を感じる。

 それを完璧にすべて流し、堂々とくっついてくる楓。


 結局俺は殺意を回避することを完全にあきらめ、おとなしく楓とくっついて登校することになったのだった。




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 諸事情により一回お休みしました、申し訳ございません。


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