第24話 学校が遠い(マジの話です)
学校が遠い。
以前じゃ考えられないくらい遠い。
武蔵野線に乗り換えた俺は、座席に座った後、ドアの上の画面を見てそう思った。
すでにつくばエクスプレスに30分近く揺られていたというのに、ここからさらに電車で15分前後、もう1回乗り換えてさらに10分弱、そこからバスに乗って、歩いて…とかなり時間がかかる。
以前は家から歩くだけだったから、随分と遠くに引っ越したことが分かる。
「ここまで随分来た感じだけど、まだまだなんだな」
「うん。でも武蔵野線もだいぶラクになったよ?」
「そうなの?」
「うん。2年前、まだ旧車両がいたころはね、座席がすっごい硬かったの。今の車両とは大違いなんだよ?」
「そんなに硬かったっけ、ああ、硬かったわ、あれ」
「そうなの?」
「ああ。……アレに座って東京まで行ったときの地獄感よ。途中から座面が痛くなってくるんだよね、硬すぎて。しかもこれと違ってドアの上画面じゃなかったし」
「確かにそうだったね。回りはどんどん画面になっていく中で、武蔵野線はならなかったね」
「そうそう、しかも武蔵野線って地味にそこそこスピード出し続けていたじゃん」
「昔からそうだったけど、今はもっと早くなったよ?」
「そうなの?……あ、確かに前はこのあたりで加速が止まっていたけど、いまだに続いているもんな」
「区間にもよるけど、だいたい時速120〜130kmまで出すようになったんだ。おかげで所要時間が意外と短縮されたんだよ」
言われてみれば、前よりも所要時間が短くなっている印象はある。
だからといって決して楽ではない。
そもそも南流山駅でもダッシュしてなんとか間に合ったのだ。
こんなカツカツ乗り換えのどこが楽なのか、非常に問いたい。
もっとも、人目を気にせずイチャイチャできるという意味では最高なのだが。
……そんなことを考えているのが筒抜けだったのか。
「電車の中も充分人目あるからね?」
「……な、なんのことかな?」
「今さっき、変なこと考えてたでしょ」
「何も考えて無いけど?」
「しらばっくれても無駄だよ?」
「……なんで分かった?」
「だって律希のことだもん。それに――」
「それに?」
「律希ってね、顔に出やすいんだよ?」
「マジで!?そんなに出てる?」
「すっごい分かりやすく出てるよ?」
思わぬ指摘に、愕然となる俺。
そんなに顔に出ないようにしていたのに、どうやら俺は出来ていなかったようだ。
「そうか。……ところでずっと気になっていることがあるんだが」
「ん?どしたの?」
「俺留年してるはずじゃ……?」
「ああ、それのことね。……この間プリントやったじゃん」
「そういえばやったな」
ある日急に楓がやってきたと思ったら、プリントの問題を制限時間内に解けと言ってきたのだ。
それで頑張って解いたのだが。
「あのプリントの結果だと、高3に進級しても大丈夫なんだって。ただ、カンニングの疑いが無いわけではないから、今日のテスト結果次第だって」
「今日のテスト?」
そんな話は一度も聞いていない。
「今日学力診断テストの日だもん。今日の結果次第では下の学年に移行するって。でもこないだのプリントよりは簡単らしいよ」
「じゃあ大丈夫だな。……お願いだからテストがあるなら事前に言っておいてくれよ。心臓に悪いんだから」
「次からは気をつけるよ」
そうやって話しているうちにも電車は高速で進んでいく。
気づけば埼玉県に突入し、 そこそこ進んできていた。
『まもなく東川口、東川口です。お出口は右側です。埼玉高速鉄道線はお乗り換えです。 The next station is Higashi-Kawaguchi. The doors on the right side will open. Please change here for the Saitama-Railway Line.』
「もう東川口か。ここでもう1回乗り換えだよね?」
「そうだよ。今回はそんなに焦らなくても大丈夫そうだけどね」
本日3回目の駅構内ダッシュにはならなそうで安心した。
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つくばエクスプレスはちょっと今よりも古いです。
というのも、今はボックスシートは消滅済みなのです。
一方武蔵野線はちょっと時代が進みすぎていますね。
想定ではE233系(中央快速線、京浜東北線、埼京線等首都圏JR線で大活躍している車両、関東地方でコレを見ない県はない)あたりを想定していますが、コレが来るかどうかはわかりません。
あと、現状武蔵野線は時速95km前後までしか速度を出しません。
なぜなら、武蔵野線は貨物線としての顔も併せ持っているためです。
何度もいいますが、駅構内ダッシュはダメですよ!
だいぶいちゃいちゃ成分が少ないですがご容赦ください(電車の中でいちゃつかせるわけにはいかないのです)。
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