第23話 登校は続くよどこまでも(ダメです)
猛スピードで駆けていく電車の車内。
土曜日の朝だからなのか、車内にそこまで人はいない。
外の景色とは異なり、中は比較的緩やかな時間が流れていた。
「…こうしてみると、結構2年で変わるもんだな」
「そうだね。……律希が寝てるうちにちょっとずつではあるけど変わっていっちゃったもんね」
「この車両だってそうじゃない。いつの間にかこういう4人がけの座席がある車両が減ってきちゃってるのよ」
「そうなんだ……」
気になって調べてみると、なるほど。
確かにだんだんと4人がけボックスシートを装備する編成は減ってきているようで、すでに残りわずか5編成にまで減ってきているという。
土日になればそもそもの運用数が減るため、一日中車庫からでてこないこともざらにあり、そういった意味でも今ではレアな車両になってきているようだ。
2年前じゃ信じられないことである。
それどころか、この先の武蔵野線に至っては、車両が違う。
2年前はまだ置き換えが始まっていなかったが、この2年でほぼ完了したようで。
今日稼働しているのは、すべてこの2年のうちに武蔵野線にやってきた車両達だけのようだ。
「はあ、本当にいろいろ変わっちゃってるんだね……、変わらないのは3人だけかな?」
「うーん、楓は結構変わったわよ?あと莉乃も前以上に男に対する風当たりが強くなったし」
「しずくだって前よりも怖いキャラになってるじゃないか。同性相手じゃ丸いのに、異性相手じゃ私より怖いってどんだけだよ」
「どんだけって言われても……。好きな人がいるって言っているのにしつこいからしょうがないじゃない」
「それはありがたいんだけど、でもやりすぎないようにしてよ?あと何ならいちど迎えに行こうか?」
「うーん、その方が楽だけど、でも制服で来ちゃうでしょ?」
「私服で行けばいいだけでしょ?やろうと思えば出来なくはないと思うけど」
「一旦うちに帰るの?」
「学校で着替えて、上からコートだけ着ておけばばれないし。学校出たら羽織るもの交換するだけで私服になるよ?」
「ズボンは?」
「黒いやつで見た目が似てるやつならバレないでしょ。コートである程度隠れるし」
うちの学校はいわゆるブレザータイプ。
だから、一番上のやつさえきておけば案外バレない。
「そういえばそうだったね。じゃあお願いできる?」
「もちろん。…なんなら今日行く?」
「今日?」
「だって今日秋葉行くし。それに、もう受験生だしね」
「ああ、そういうこと。じゃあ15時に正門までおいで。軽く大学の中案内するから」
「ほんと?じゃあ15時に合わせて大学正門前に行くね?」
「はいよ。じゃあ私達もそれに合わせて用事済ませておくから」
「用事?」
「うん。今日は講義1コマだけだし」
「了解」
これでしつこいやつも消えるだろう。
それに大学見学にもなるしちょうどよいのだ。
その後も他愛のない世間話をしているうちに、あっという間に電車は流山おおたかの森を過ぎ、トンネルに入る。
それはつまり南流山にもう少しで到着するということ。
案の定すぐに放送が入り。
『まもなく、南流山、南流山、お出口は右側です。南流山の次は北千住にとまります。三郷中央、八潮、六町、青井とJR武蔵野線はお乗り換えです。 We will soon stop at Minami-Nagareyama. TX-10. The doors on the right side will open. The stop after Minami-Nagareyama, will be Kita-Senju. Passengers going to Misato-Chuo, Yashio, Rokucho, Aoi, and the JR Musashino-Line, Please transfer at the station. 』
「じゃあ行ってくるね。またあとで」
「行ってらっしゃい、気をつけてね?」
「はい、いってきます」
電車から降りて座席のところへと歩くと、しずくと莉乃がこちらに気付き、手を降ってくれていた。
手を振り返すと、ちょうど電車のドアが閉まり動き出す。
乗ってきた電車を見送り、改札を目指す。
今度乗車する武蔵野線は地上2階。
対するつくばエクスプレスは地下深くに存在するため、乗り換えにも一苦労。
そのくせ、接続時間は微妙に短かったりする。
「これ、急がないと間に合わないやつ?」
「間に合わないやつ。……走ろっか」
また駅でダッシュすることになった。
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駅構内で走ることは危険です。
律希君のように走ってはいけません!
放送の流れるタイミングなど違う可能性もありますが予めご了承ください。
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