第19話 大問題発生

 これで3人と交際がスタートすることになったわけだが。

 ここにきて大変大きい問題が立ちはだかった。


 それに最初に気づいたのは、しずくだった。


「そういえば律希、誰を正妻にするの?」


 正妻。

 突然飛び出したそのワードに、首を傾げる俺。

 そして、はっと目を見開く楓と莉乃。


「正妻って?」

「一夫多妻制の復活と同時にその制度も出来たの。立場上に違いはないんだけど、一番最初から結婚している人が正妻、2番目以降が妾になるんだって」

「じゃあ別に誰でもいいんじゃないの?」

「ただし、実際には正妻が一番旦那さんのお気に入りだとみなされるらしいの。だから、誰が一番奥さんにしたいのか、ちゃんと考えて選ばないと、ね?」


 つまり。


「もちろん私だよね、律希?」

「だからそうとは限らないだろう、楓。私だって正妻になる権利はあるはずだが」

「いやいや、ここは一番付き合いが長い私だと思うな〜」


 こうなるわけで。

 3人そろってこの上なく恐ろしい笑顔をたたえている。

 その背後に黒い炎が燃え盛って見えるのは俺だけだろうか。

 しかも3人の目と目の間では、バチバチと火花が飛んでいる。


 これはもう、新たな戦争が始まったようなものである。


 そしてこれは、後に「正妻戦争」と呼ばれる熱き女の戦いの幕開けだった。




 話が微妙にそれた気がするが。

 これが今後の人生で大きく関わってくるのは一目瞭然。

 「正妻=一番好きな人」という等式が成立するのだから、当然だ。

 とはいえ、今の時点では1人該当する人がる。

 だから。


「みんな」

「どうした、律希。ひょっとして、もう決まったのか?」

「ちょっと違うけど似たような話。……今のところは、正妻を楓にしたいと思っている」


 いきなりの重大発言に、目を見開く3人。

 が、しずくだけは気づいたようだ。


「今のところは?」

「そう。今のところは。まだ結婚できるようになるまでは時間があるし、何よりここまで付き合ってきた時間はバラバラ、それに仲が悪かったりもしたから、これだと不公平だと思う」

「ほう?」

「ここから数年間お付き合いして、それで最終的に誰を正妻にするか決めたいと思うんだけど、良いかな?」

「律希がそう言うなら」

「律希が変なこと言うとは思えないしね、莉乃」

「そうだな。姉のお前が見てそうだと言うなら、そうなんだろうよ」

「もう姉じゃないわよ」

「ああ、すまん。ついつい頭の中からその感覚が消えなくてな」

「じゃあこれで行くよ?」

「うん。……でもその前に退院しないとね?」

「あ。なるべく早く退院できるように頑張ります……」


 そしてここからリハビリが始まるのであった。

 このときにもいろいろあったのだが、それはまた別の話。



 そしていよいよ、実に数年ぶりの登校を果たすのだった。




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 次回からは退院後の話になります。


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