第17話 楓としずくと莉乃と
俺は3人に対してどう思っているのか。
まずは楓。
始めて会ったのは生後数ヶ月の頃。
幼稚園から始まり、小学校、中学校、そして高校とずっと同じ学校に通う生活を送ってきた幼馴染み。
恋心を自覚したのは事故のちょっと前くらいだが、いつ頃からそれがあったのか。
少なくとも幼稚園と小学校はありえない。
その頃は楓はこんなお淑やかな人間じゃなかった。
どっちかと言えば男子。
最後は力づくでいくこともあったし、当時そこまで積極性がなかった俺は、よく振り回されたものだった。
それが中学生になるとガラッと変わる。
急に髪を伸ばし始め、学校では清楚可憐、才色兼備な非のつけ所のない女子に変わっていった。
それと同時に目立つようになったのがその美少女っぷり。
最初の頃こそまともに話せていたが、途中からは妙に意識してしまい、うまく話せないこともあった。
おそらく恋したのはその頃だろう。
もっとも当時は、幼馴染みにそんなことおかしい、と全否定していたが。
しずくはちょっと複雑だ。
姉ということもあり、文字通り産まれたときから一緒に生活してきた。
学年こそ違えど、学校も同じ、寝食を共にすること十数年。
途中からはものすごく冷たくなったりしていたけれど。
でも最終的にそれはカモフラージュだったって事が分かって。
本当はずっと好きだったけど無理やりそれを封印してきて。
でも最後は打ち明けてくれた。
思えば小学校くらいまではとっても仲が良かったことに自覚がある。
当時は、お互いにべったりくっついているのが当たり前だったし、それを普通と思っていた。
それが変わったのは俺が小学5年生のとき。
当時のクラスメイトだった女子に、それがシスコンと言って、世の中では決していい話ではないということを知った。
それ以来俺は姉と距離を置くようになり。
いつしか姉がものすごく冷たくなり。
それに安堵した自分と、寂しく思う自分がいた。
それがどうして寂しく感じたのか、当時の自分には全く分からなかったが、今なら言える。
あれが多分姉に多少なりとも恋をしていたということだろう。
ただ、1つ解決しないといけない問題がある。
それは姉弟であるということ。
それの話もしなくてはならないと思うと、憂鬱な気分にさせられるが仕方がない。
莉乃さんは一番思い出が少ない。
出会ったことの発端は、中2のときか。
あの頃はまだ姉も優しかったし、多少距離は置きつつも、家族としての関係は保てていた。
そんなときに起きたのが、不良事件である。
その弱そうな見た目からなのか、当時うちのクラスにいたレディースの方に巻き込まれた。
そしてカツアゲじみたことをされたことを姉に相談。
次の瞬間それはそれは恐ろしい笑顔をたたえて、1人でグループを壊滅させてしまった。
その総長だったのが莉乃さん。
ちなみに、そういういわゆる不良がすることは一切許していなかったようで、姉から事実を聞いた瞬間にブチギレてそれはそれは恐ろしい光景が広がったそうだ。
それ以来莉乃さんは髪を染めるのをやめ、生徒会長になった。
その一方で、他人に迷惑をかけるような輩を片っ端から2人で潰し、わずか数日で全て壊滅させてしまった。
また、姉の突撃の後にはわざわざ家まで謝罪にやってきて、土下座までしたのだ。
別に莉乃さんは何も悪くないし、謝る必要もない、当事者さえ謝ってくれればそれでいいと伝えるも、
「いや、これはちゃんと抑えられなかった私の責任だ」
といって、全然頭を上げてくれなかった。
その後は早々に俺がしずく姉と冷戦を勃発させ。
以来お昼のお弁当を含めた姉弟伝達の仲介をしてもらっている。
一番思い出が少ないけれど、戦闘面で鍛えてもらったし、なんだかんだ言って頼れるお姉さんという感じがする。
莉乃さんがお姉ちゃんだったらな……と思うこともしばしばあった。
それは恋とはちょっと違うけれど、でも一緒に暮らしたいという思いは確か。
さらに言えば、他の男性と話しているところを見るとなんとなくもやもやする。
今までは恋じゃないと言ってきてはいたが、もしかしたら恋してるかもしれない。
やっぱり3人全員を選ぶということへの抵抗はある。
だが、そんな自分でも受け入れてくれると言外に言ってくれたのだ。
それだけじゃない。
3人が皆自分を愛している、というのを知ってしまった。
自分も好きなのであれば、それはちゃんと応えるべきだろう。
しずく姉問題を解決してからではあるが、できることなら4人で暮らしていきたい。
そういう結論に至った俺は、ひとまず血縁という厄介な問題を解決すべく覚悟を決める。
しかしその問題は、思わぬ方法で解決されてしまうのであった。
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いったいどんな方法で切り抜けるんでしょうか?
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