第14話 登校、からの…… その4

 引き続き医師の説明は続く。


「搬送時のご容態についてご説明します。まず外傷から。原因は全て車との衝突によるものです。今回のケースは、車が制限速度を超過していたということ、そして事故現場はスクールゾーンがもうけられている区間であり、そもそもあの時間帯は走行不可だったということもありますので、このあと警察の方から詳しい話があるとは思いますが、入院費等は請求できます」

「すみません、なぜ車が制限速度を超過していたと分かるんですか?」

「律希くんが負った怪我の度合いが、どう考えても一定のスピードが出ていないと起き得ないレベルの傷でした。そしてそのスピードはどう考えても制限速度を超過しています。実際にはブレーキを踏んでいたようですから、減速前はもっとスピードが出ていた、と考えられます」

「そうなんですね」

「はい。そのうえでご説明しますが、外出血、これは傷口があって血が流れ出ている状態だったところですが、これが全身で14箇所。骨折箇所は30箇所、内出血箇所は43箇所にも及びます。ただ、止血処置が的確かつ早かったためか、出血量はそこまで多くないです。もし処置が遅れていたら助かってないですから、本当に良かったと思います。骨折は単純骨折もあれば、複雑骨折もある状態で、これらの手術に時間を要しました。内蔵の損傷等もなく、比較的状況としては大丈夫だったほうです。なかには内蔵が飛び出ていたり、血がものすごい勢いで飛び出していたりする方もおられますし、そういった意味では幸運だった、と言えます」

「これでも軽い方、なんですか?」

「そうです。あのスピードで突っ込まれて生きているというのは意外と珍しいケースなんです。普通、あのスピードだと即死してしまうか、出血性ショックで亡くなってしまうんです」


 次々と語られる律希の病状と、交通事故の凄まじさ。

 結局の所、律希はいつ目を覚ますかはわからない、ということだった。

 それは明日かもしれないし、1年後かもしれないし、もしかしたら何十年経っても目を覚まさないかもしれない。

 それはある一種の地獄の通告だった。

 彼女たちからすれば、もう二度と愛する人と会えないかもしれない、と言われたようなもの。

 さらに追撃を加えるように。


「それと、ここから3日は油断が一切できませんので、ご親族以外の方は面会謝絶とさせていただきます。なので今いらっしゃている方の内、血縁関係のない方は申し訳ないんですが面会できないです」


 しずくは会える。

 が、楓と莉乃は面会謝絶が3日間。

 楓と莉乃からすれば死ねと言われているようなもの。

 そのくらい彼女たちは律希のことを好いていた。


 そして面会謝絶が解けたあとも、彼の目は覚めないまま2年の月日が経過し、楓は受験生、しずくと莉乃は大学生になっていた。

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