第13話 登校、からの…… その3
それからしばらくの時が経ち。
知らせを聞いた律希としずくの両親が到着したときには、すでに彼が担ぎ込まれてから3時間が経過していた。
それでもなお一向に手術中のランプが消える気配がない。
さらに約1時間が経過した頃。
ようやく手術中のランプが消え、程なくして扉が開いた。
「律希は、律希はどうなんですか!?」
半泣きになりながらも医師に声をかけたのは楓だった。
楓はこのメンバーの中で一番重いものを背負っていた。
自分がもっと早くあのトラックに気づいていれば、あのとき足がすくむことなく退避できていれば、そもそもあんなに広がって歩かなければよかったのに。
本来であれば律希ではなく楓がぶつかってるはずだったのに。
彼女の後悔は次から次へとこの4時間浮かんでいた。
これでもし律希が助からなければ、それは自分のせいだ、とまで思ってしまうほどに。
自分の命と引換えでいい、何が何でも大好きな想い人に助かって欲しい。
そんな言葉の裏に含まれた思いを察したのか、医師はすぐには言葉を発さなかった。
「とりあえず何とか最悪の事態は避けられました。ただ、今後どうなるかは分かりません。ここから3日程度が峠だと思ってください。詳しい話は長くなりますので、診察室でしましょう」
そう言うとスタスタと歩き始めた医師の後ろを5人はしずしずとついていく。
程なくして到着した診察室にあるたくさんのモニターが灯り。
様々な写真やグラフ、数値などがズラッと表示された。
数値は血圧や心拍数だろう、と5人は推測する。
一方で写真はおそらく搬送後の律希の写真だろう。
ただ、それはあまりにも酷いものだった。
まずレントゲン写真。
どこからどう見ても、骨がありえない方向に曲がっている箇所。
どんなに知識がない人だったとしても分かる骨折。
手で数えられないほどの異常を察することができる。
次の写真類はおそらく外傷の写真だろう。
出血している箇所、内出血で紫色になっているところ。
こちらも決して少なくないほどの数。
一方心拍数や血圧は安定している。
それが正常値かどうかは分からないが。
「それでは相原律希さんの状態を説明しますね」
「お願いします」
「まず今後の見通しなんですが、先程も言いましたように、ここから3日が峠でしょう。それさえ乗り越えればとりあえずは一安心といったところです。ただ、その後いつ目を覚ますかは正直言いますと、分かりません。最悪の場合、そのまま目を覚まさずに亡くなってしまうことも考えられます」
「もしかしたら、ですか?」
「そうです。今のところは大丈夫ですが、この先容態が急変することも充分にありえます」
そこで医師は一旦間をおいた。
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