第7話 交際戦争 Part3

 現在時刻、午後5時。

 現在の状況、家にひとりっきり。


 結局あの後、すぐに3人揃って買い物に行ってしまったため、俺は1人帰宅していた。

 速やかに部屋着に着替えると、上からエプロンをまとってご飯の仕度に取り掛かる。

 今日は3人がおかずを作ってくれるので、ご飯と味噌汁だけで済むという珍しく楽な日。

 せっかくなので、ストックしてあるだしパックではなく、煮干しやら昆布やら、ついでに冷凍庫の中に眠らせてる野菜の芯とかヘタとか皮とかをグツグツ煮込んでしっかりと出汁を取る。

 だがその前に、米を研ぐのが優先だ。

 一度目は素早く、4回ほど繰り返して炊飯器にセット。

 吸水時間をパッと計算して炊き始めを予約。

 あとはそのまま放置するだけで炊けるというのだから驚きである。

 残念ながら、帰ってくる時間が全く読めない以上、鍋炊きにするわけにもいかず、その間にグツグツ煮出していた出汁を確認。

 きちんと出ているのを確認すると、昆布を除いて水気を切り天日干し。

 昆布はある程度の大きさに切って鍋に戻す。

 そこから味噌をとき、最後に豆腐を入れて完成。


 それから程なくして。


「お邪魔しまーす。……あれ、まだ誰も帰ってきてないのかな?」


 まず最初に帰ってきたのは楓。

 その手には今やすっかり身につけているものの1つになったエコバッグ。

 中はどうやらいろいろはいっているらしくパンパン状態。

 

「あ、律希、キッチンもう使って大丈夫?」

「ああ、大丈夫だよ。まだ誰も帰ってきてないしね。コンロにかけてる鍋だけはいじらないで。あと炊飯器はもうスイッチが入ってるから触らないこと。あとIHだから火加減は気をつけてね」

「分かったよ。大丈夫、ウチもIHだもん」


 世の中オール電化住宅とかいうものが増えているせいか、ガスコンロなんて学校の調理実習以外で触れることはないという生徒が増えているのはどうやら事実らしい。

 俺の許可を得た楓は、スタスタとキッチンに入ってくると、勝手知ったるかの如く、冷蔵庫にバッグの中身の一部を詰め込むと、残りをカウンターに出す。

 そのまままな板と包丁を取り出したかと思うと、手早く鶏肉に包丁を入れていく。

 まさかの隠し包丁、さらにその後の手際の良さ。


「隠し包丁に冷やした玉ねぎ、だと……!そんじょそこらの大人ですら出来ないぞ、それ」

「だってそのほうが味が染みるし、噛み切れないとかがなくなるからね」


 そう言ってる間にもテキパキと調理を進める楓。

 さらにちょっと暇ができれば洗い物までこなすという、もはやこの中が女子高生というのが信じられないくらいである。


 そうこうしているうちにお姉ちゃんと莉乃姐さんも帰宅。

 あっという間にキッチンは戦場と化し、俺は至急部屋に退避するのだった。




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 玉ねぎを冷やすと目に染みることがなく、涙が出てこないんです(結構マジ)


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