手紙 市岡稟市
ヤクザと一緒に大阪にいるらしい弟から手紙が届いた。
スマホで通話をしている最中に奇妙なノイズが入り、一方的に会話を打ち切られ、その後こちらから発信してもメッセージを送っても一切の反応がなかったため何やら面倒なことに巻き込まれているのではないかと思っていたらこれだ。
市岡稟市様
文字は確かに弟のものだ。稟市の自宅ではなく勤務先である弁護士事務所のポストに、薄っぺらな白い封筒が投げ込まれていた。
事務所の中には入らず、入り口で立ったまま封筒を引き裂くようにして中を確認する。ノートからむしり取ったような紙が一枚、雑に折り畳まれて入っていた。
ヤタベコウヘイ
マルヤマサクヤ
以上ふたつの名前は弟の筆跡だ。
その傍らに赤いボールペンで、
椰田部康平
丸山朔耶
と添えられている。
「ヒントにもなりゃしねえじゃねえかバカ弟が」
口に出して呟いた瞬間、紙も封筒も手の中で燃えて消えた。
炎が上がったのはほんの一瞬のことなので、熱さも感じないし、火傷ができたりもしない。
誰かがこっちを見ている。
そんな気がした。
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