僕、或いは無花果


 枇杷が死んでしまって僕たちは4人になった。

 八朔はっさく椰子やし苔桃こけもも、それに僕。


 枇杷は優秀な子だったけど欲を出してしまったね。

 神様が言った。

 残念そうな口ぶりだった。


無花果いちじく、おいで」


 皆の前で手招かれる。

 こんなことは初めてだ。


「お取り。これはあの子の体、あの子の置き土産」


 神様の白くて大きな手の中には、小さな金平糖があった。

 白、ピンク、青、薄緑、色とりどりの金平糖。

 どうしたらいいのか分からなくて神様を見上げる。


 神様は笑っている。


「好きな色を、好きなだけお取り」


 好きな色──

 枇杷は橙色の服を好んだ。

 枇杷。

 死んでしまったけど僕たち、ともだちだったよね?


 意を決して伸ばした手を、駆け寄ってきた苔桃が、強く掴んだ。


「やめろ」


 聞いたことのない声だった。

 僕は戸惑い、瞬きをすることしかできない。

 苔桃は強い口調で続けた。


「目、見えないのか? よく見ろ」


 よく見る。

 神様が──顔を顰めて──その手の中には、


 醜くひしゃげた眼球がふたつ。

 明るい茶色の虹彩の持ち主は、ああ、その瞳の持ち主は。

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