第6話 真珠貝を開いて

例の通話から数日後の二人で出かける約束をした日、予定時間の30分前にはもう静葉は待ち合わせ場所にいた。

「早く来すぎちゃったかなあ、、、」

早く予定時間にならないかとチラチラとスマホを見ていると、

「静葉ちゃーん!」

どうやら詩織も失礼があってはならないと早めに来ていたようで、少し遠くから静葉を見つけ呼びながら駆け寄ってきた。

「あ!詩織さん!ふふ、私も早く来てたけど、詩織さんも早めに来て下さったんですね!」

静葉はなんだか自分達は似ている部分があるなと思い少し嬉しくなった。

詩織と静葉は軽く今日の予定を話し合ったあと歩き始めた、静葉は詩織の少し後ろを歩いていたが、詩織に

「どうしたの?あ、もしかして私歩くの早すぎちゃった?ごめんね、つい仕事の癖で早く歩いちゃうんだ。あー、だからさ、私静葉ちゃんのペース知りたいから手を繋いでくれない?」

これは詩織なりの気遣いと静葉へのアタックだった。

「あ、え、はい!」

静葉はあまりにもなれないことで夏の暑さも相まって顔が真っ赤になりながら詩織の差し出した手をぎゅっと掴んだ。

「あのー、つないでくれるのは嬉しいんだけど、両手だと流石に歩きにくくない?」

静葉は緊張のあまり詩織の手を両手で掴んでいたのだ。

「あっ、そうですよね!ふ、普通片手ですよね!」

耳まで赤くなりながら嬉しさに少しニヤニヤして、片手で繋ぎ直した。

ああ、こんな初心なところも可愛いなあと思いながら詩織は再度、静葉と一緒に歩き出した。

二人が最初に来たのは最初詩織が誘ったカフェだった。相変わらずコオオと音を立てながら客を冷やし続けるエアコンだが、暑い外から入ったばっかりの二人にはとても心地いい風だった。

「あの時はフローズンベリーのパフェだったけど、今の時期の旬のパフェとかも食べてみない?ここのパフェはなんでも美味しいからさ!」

詩織がメニューを開いて季節のパフェを指す。

「おぉおー!それとっても美味しそうです!私それにします!詩織さんは何にしますか?」

「私はブラックコーヒーかなあ」

元々はあまり得意じゃなかったブラックコーヒー、かっこいい女になるためにずっと飲み続けたら好きではないけど飲めるようになってきた、でも本当はパフェが大好きで、だからここのカフェも知っていたのだ。

「んー、でも私わがままだけど詩織さんに同じもの食べて欲しいです!同じパフェにしましょ!」

静葉は自分でもわからない無意識の中で詩織がコーヒーではなくパフェを食べたいのに気がついていた。

詩織は思いもしない嬉しい提案に少し食い気味で返事をした。

「あじゃあ、そうしようかな!」

詩織は店員を呼び、季節のパフェを二つ注文した。

「あのね、重い話になってしまうんだけど、、、」

詩織はパフェが届くまでの間、元カレの好みに合わせてカッコよくいて、本当は苦いコーヒーよりも甘いパフェが好きなこと、だからあまり人の少ないここのカフェも知っていること。でもその元彼は結局可愛らしい後輩に奪われたことを話した。一通り話し終えたあと、タイミングよく店員さんがパフェを届けた、少しの間二人は黙ってパフェを食べていたが。

「ぞ、ぞんなの、、、ひどいじゃないでずがああ゛」

静葉は半泣きになりがら口を開いた。

そんなひどいことを、自分を好きになってくれたこんなにも素敵な人にするなんて。

悲しさと怒りで涙がどうしようもなく溢れて詩織と会うからといつもより頑張ったアイメイクも崩れてしまっていた。

「一緒に悲しんでくれてありがとう、、」

詩織も静葉につられて少し目がうるうるしていた。まだ知り合ったばかりの自分の重い身の上話を真剣に聞いてくれて、そして泣いてくれるなんて。

この子は見た目だけでなく心も真珠のように綺麗なのだと改めて静葉を好きになってよかったと思った。

二人がパフェを食べ終わった頃、詩織は静葉の顔を見てある提案をする。

「静葉ちゃん、よかったらこのあとコスメを見にいかない?」
























  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る