第12話 無理した話
僕の兄は貴金属、アクセサリー、高級腕時計などを扱ったお店で働いております。
一時ですが、福岡最大の繫華街とも言える中洲の店舗で勤務していた頃の話です。
中洲というのは、東京で言う歌舞伎町みたいなころでしょうか?
僕もあんまり行かない場所なので、詳しくは説明できないのですが。
一晩に人生を変えるぐらいの大きなドラマがあるとか、ないとか。
まあキャバクラとか、あとはピンク系のお店とか。居酒屋が多いイメージです。
僕が知らないだけで色々あります。
で、兄貴は深夜に働いており。
お客さんに高額の商品をショーケースから出したり、説明したり、販売する仕事です。
やはり中洲という場所なので、客層が他の店舗とはちょっと違うそうな。
同伴だかアフターだか、知識と経験のない僕にはわかりませんが、露出度高めのお姉さんとオタクっぽいお兄さんがご来店。
「ね~え~ この時計が良い~ 買ってぇよ~ お願い~!」
「えぇ……参ったな。うーん、どうしよう」
兄はその男性を見て、見るからに金持ってなそうな若いオタクだと、同情したそうです。
お姉さんがケースから出した時計は、きっと二桁は軽く超える額です。
一応、兄貴は同じ男として、助け船を出したそうで。
「あの、お客様。こちらの商品かなりお高いですよ? 無理はされない方が……」
そう言うと、お姉さんがキッと店員の兄貴を睨みつけ。
「ね~え! 買ってよ、買ってぇ~ これじゃないと、私嫌だぁ~」
と甘い声で囁き、胸の谷間をグリグリとオタクさんに擦り付けます。
それが決定打になったのか、
「うん……買う」
頬を赤くして、クレジットカードを出したそうです。
「あ、ありがとうございます。お客様、何回払いにされますか?」
「24回払いでお願いします……」
「やったぁ~ 大好き~」
この時、兄貴はサインしているオタクさんの姿を見て、思ったそうです。
(買っちゃったよ……払えるのか? この兄ちゃん。かわいそうに)
一期一会ってことで、中洲に行くのも、いいかもですね。
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