第13話 計算が苦手な話


 随分、昔の話です。

 何十年も前の。


 父方の祖母の親戚だったと思います。

 おばあちゃんの妹さんだったような……ちょっと記憶が曖昧です。


 普段は専業主婦をされていたらしいのですが、親戚が開業した小さな店で働いていたそうです。

 ただ、おばあちゃんが言うには、かなりずぼらな人といいますか。


 計算するのがすごく苦手で、面倒くさがりらしく。

 親戚が開業したということもあって、たくさんの身内が遊びに来ました。

 その他にもご友人や近所の人など。


 おばさんとしては、良かれと思い、

「おつり多めに渡しておくわ」

 なんて適当に計算して、多めにお釣りを返していたそうです。


 その噂は知り合いの人々へとすぐに広まり……。

 連日、おばさんに

「これ買うから、多めにちょうだい」

 なんて集まるのですが。

 おばさんは、人が良いので。

「いいよいいよ。持ってきな。多めにお釣りあげとくわ」

 と毎回レジからお金を他人にバラまいていたそうで。


 おばさんは元々親戚が開業したからと、手伝いみたいな感じで、レジ打ちしていたのですが。

 結果的に、お店にとっては、損失ばかり生む存在になっていきました。


 僕はこの話をおばあちゃんから聞いて、その後が気になり、質問しました。

「なにそれ。儲からないじゃん。どうなったの?」

「潰れたよ、一ヶ月で。ばあちゃんが店に行った時も、買った商品を上回るお釣り返してきたもん」

「借金しか残らないじゃんか……」

「そうよ、だから破産よ」


 起業した際は、身内に任せない方がいいのかもしれません。

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