第31話 データは何処まで
データは何処まで
「そう言えば父さんのパソコン瓦礫の下だよね」
「…な 忘れてた~~~~」
「どうするの?」
「いや、大事なデータはUSBの中だ、だがあのグラフィックボード…泣き」
そう自作とはいえ確か自分で決めたお小遣いの中から父はコツコツと貯めてようやく一つづつパーツを組んで自作のPCを作ったのを俺は知っている。
マザーボード、グラフィック、CPUなどなど最高のスペックとまでは行かないが、それでも当時の憧れのパーツを組んだのだから。
それが一瞬でゴミに変わってしまったのだ、本来今まで思い出さなかったのが不思議でならない。
まあパソコンより家の崩壊の方がショックが大きかったのだろう。
今父は二重のショックでがっくりと肩を落としている。
「もう落ち込まないの、今回の事は天災と同じよ、パパにはまたパソコンを買う権利をあげるわ」
「ママ、良いのか?」
「だってそうしないとそのウルウルした目で縋って来るんでしょ?」
まるで以前に同じ事があったような母の口ぶりだ、まあ元がオタクなのでありえる話どころかそう言う事が本当にあったのだと思う。
そこからは父の顔がバラが咲いたようにへらへらと笑顔に変化していく、まあ彼の仕事にも必要なものなので母は元からそのつもりで居ただろう、それに今の母はロボ化のおかげで機嫌が良さそうだ。
【宗ちゃん自衛隊のほうはどうだったの?】
早速母から現段階での情報共有の話しが脳内通信で入ってくる。
【一応、座標転移装置のデータは自衛隊に渡す事になったよ】
【そうなのね、宗ちゃんスキルの事は?】
【それなんだけど、ロボスキルは一応伏せてあるその代わり完全記憶能力って伝えてある】
【完全記憶…見た情報を全て記憶して忘れないという能力ね】
【そう、そう言っておかないと何故僕が敵を退散させる事ができたのか、その方法につじつまが合わなくなるからね】
【それじゃ宗ちゃんは頭が良いと宣伝しても良い訳よね】
【母さんそれは恥ずかしいからできれば止めて欲しいな】
【冗談よ、でも聞かれたらそう答えて良いでしょ】
【ん~出来るだけ小さくなら良いけど…】
【ふふ もうかわいいんだから】
母はキッチンで作業をしながら俺と会話を交わしている、たぶんその顔は少し微笑んでいるのだろう後ろからは見えないが。
今日はラタトゥーユとか言う煮込み料理、どちらかと言うとシチューに近いそしてハンバーグとサラダ、まあ割と普通の家庭料理だ。
「さあ出来たわ、皆 運んで」
「はーい」
「それで宗助、自衛隊はなんと?」父
「僕がインベーダーと通信した痕跡を見つけたんだってさ」
「本当なのか?」
「本当と言うか、交信じゃなくてハッキングかな?」
「ハッキング!」
「とうさん僕だって父さんの子供だよ、最近はシステム開発のC言語も少し勉強しているから、それを利用してアプリを作ってみたんだ」
父に説明するには少し苦しい言い訳ではあるが、俺の部屋には一応CGIやアプリに関する専門書がある。
父のおかげかそのあたりの情報は年齢を考えるとかなり進んでいると言って良い。
勿論今の俺にはそんなアプリの開発などできるわけが無いししていないのだが、強いて言えばハッキングアプリが最初のアプリ製作になるだろう、作成したのはAIリリーなんだけどね。
「そうかすごいな、何時の間にそこまで出来るように?」
「いや、物はためしに作ってみただけの試作アプリだよ、本当はハッキングじゃなく電波通信を利用してリモコンの操作が出来るというアプリなんだよ」
そうあのAI管理システム、音声で部屋の電気点けてくれたりするやつ、もちろんテレビのリモコンなんかにも使える。
そう言っておけば何とかつじつまが遭う、まあそれでも考えてみれば本来敵のマザーコンピューターに侵入できるところまでは飛躍しすぎだが、何とか父をだます事には成功したようだ。
「さすがだな、私よりすごい事をしてるじゃないか、宗助に負けないように私もがんばらないと」
「うふふ、宗ちゃんは優秀なのよ~」母
「ずるいおにいばかりほめて…」愛菜
「アイちゃんは可愛いから大丈夫よ~」
「それはおにいのとは違うと思うんだけど…」
食事が終ると早速、貰ったPCの設定を始めた、OSはWINDAUZ20、しかも自衛隊仕様でPROでは無くARMYと記されている。
(軍隊仕様って事?)
まあそれはさておき立ち上げると表示待ちうけは最新鋭の108型AI自走型の戦車がドーンと現われた、そして登録ページが表示される。
指示に従いタップしていると、リリーが話しかける。
【宗助様、少しよろしいですか?】
【どうした?】
【そちらのPC追跡システムが組み込まれておりますが、よろしいのでしょうか?】
【あ~そう言うことか…】
タダでくれるとは、お国の機関も太っ腹だと思ってはいたのだが確かに上手い話には裏がある。
だからと言って使わなければデータの保存も出来ない、まあ敵の星に行くときはお留守番してもらうしかないか。
【宗助様、切り替えスイッチを設定すれば追跡ビーコンを無効にできますが】
【可能なんだ、じゃそうしよう、でも地球に居る間はONのままで良いからね】
【かしこまりました、3・2・1追跡システムにスイッチ設定完了現在はON設定】
【さて、ここからはどうするか…】
【宗助様、USBを差し込んでいただければ後は私が設定いたしますが】
【マジ!】
実はどうやって空間座標転移装置なるもののシステム設計図をUSBに入れ込むか、そんな方法などわかるはずも無く、だがやっておくと言ってしまった手前どうするかと考えていたのだが。
【大丈夫ですよ宗助様、私にお任せください】
この時代でもエクサルやワールドなどの文章システムは同じ、今回は設計図と言う事で文章に仕様書、そして設計図はエクサルに、部品関係の仕様書は実物の画像つきでまとめる事になった。
【とりあえずここまでかな、でもこれ本当に作れんのかな~】
【現行の機械部品やエレクトロニクスの関係上一台作るにはコストとして最低1億円が必要になるかと思えますが、もし他国へ販売するとその百倍の値打ちがあると思われます】
確かに出来上がると輸送革命が起きるのは確かだ、日本からアメリカまで数秒で品物が届く。
よく考えてみるとえらい事を頼まれてしまった気がする。
【宗助様億万長者ですね】
【いやそれは飛躍しすぎだと思うけど】
【たぶんこのデータをお渡しになると、開発担当の会社からオファーがありますよ】
【そうなるか?】
【はい絶対そうなります】
【それってまずくない?】
【宗助様がどうしたいかによって答えは変わってきますが】
【いや俺はまだ学校に行きたいんだけど】
【大丈夫です、学校に行きながらリモートで夜の数時間を使うようにお勧めします】
【確かにそれならば何とかなりそうだ】
【問題は開発会社からどういうスタンスで協力を求められるかによります】
【確かにそれは考えておかないとだな】
座標空間移動装置の設計図、ちゃんと作れれば数百億ドル、請け負った会社は上手く行けば業界では一番の会社となる。
儲けは国家予算レベルになるだろう、勿論ちゃんと作れればの話。
裏に国が関わればそのあたりも冗談ではすまなくなる、設計図どおりに作ったのに使えませんでしたではすまない。
しかも予定では一年以内に試験まで済ませ、敵の星に空間転移できなければならないのだ。
そこまで考えれば宗助に助言どころか懐柔を迫ってきてもおかしくない。
お金で釣って来るかそれとも地位か、はたまた生活の保障かなどなど…
そんな事今の時点で考えても仕方の無い事なのだが、前もって起こる可能性が分かっていれば対処はそれほど難しくは無い。
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