第22話 暗雲が立ち込めてくる

暗雲が立ち込めてくる


そう母は当然買い物に付いてくるしそれを拒むことはできない、作るのは母なのだから。

あらかじめリリーのフィギュアは俺の寝室として確保した部屋の棚に置いてきた、もちろん俺の頭の中のリリーはフィギュアのボディがなくても交信可能に設定変更が完了している。


「それじゃパパとアイちゃんはお風呂にはいってまっててね」


そう言うと俺の腕を取りうれしそうに歩き出す、まあ今回は仕方ない母とこれからの事も話さないといけないのだから。

最上階からエレベーターに乗ると、25階からはさほど時間がかからず1階まで降りることができた。

隣にいる母はなんとも無邪気にはしゃいでいる、よく見ると服はすでに着替えていて先ほど着ていた血まみれの服からすでに変更されている。

このマンションはさほど駅から離れていないため、駅前のスーパーは2軒とも近い距離にある、歩いて10分まで掛からない。

2人で近くのスーパーに買出しに行く道の途中、母からはとんでもない質問をされた、まあ確かにそれはありえる。


【そうちゃん】

【何?】

【あのインベーダーロボットって何処のやつらか判っているの?】

【いやそれは…】


俺は母からそう聞かれ直ぐにリリーと相談する。


【リリーハッキングして判った事は?】

【あのインベーダーは外宇宙から来た物だと判断できます】

【相手の宇宙人の姿とか文明だとかはわかるのか?】

【わかる範囲で分析判断します、彼らは地球より4千年ほど科学が発達しています】


彼らの母星は惑星リズと呼ばれているらしい、そして問題なのはここから。

その惑星は彼らが手に入れた175番目の星だということ、そう彼らは侵略する事で生を繋いで来たのだ。

何年かに一度ターゲットになる星を定めると、大量の宇宙戦艦を送り込みその星で一番高度な文明を破壊し戦力を殺ぐと共に物資の略奪を始める。

数年後、安全だと判断されると今度は本格的な移住が始まると言う。

俺の目の前にはやつらの姿が映し出されたが、その姿はほぼ地球人と変わらない。

但し特質すべき注意点がある、それは彼らが超能力を持っているということ、殆どは念動力と言う事だが中には発火能力や瞬間転移などの超能力を持っているとの事。


【やばいな】

【はい彼らがこのまま諦めるとは思えません】

【でもやつらの宇宙船は帰って暴れる事になっているんだよな】

【予想的数値ですが50%の確立で400機の宇宙戦艦は数日で無効化される可能性があります】

【確かに超能力があれば直ぐに対応可能だな】


何事も無くあの400機と言う大型宇宙戦艦が母星へ帰還し攻撃を開始すれば初日に大打撃を与える事ができるだろう。

但しそれは相手の科学力が地球と同じぐらいで超能力などと言うものが無かった場合だ。

予想では3日と経たずに反撃は沈静化される可能性が大きい。

それでも惑星リズにある都市の1割以上は破壊できるというのだが、問題はその報復を何時してくるかだ、科学が発達していてしかも超能力まで持っている人族が持っている倫理観はどうなっているのかが一番の問題。

地球に住む人族は弱い者いじめや戦争に対してかなりの割合でいけないことだと思っているのだが、どうやら相手側の倫理観は弱いものが虐げられてもそれは当然だと言う倫理観、それに戦いと言うより一方的な蹂躙はほぼ当然で略奪も当たり前と言う考えらしい。


【マジか、それじゃ直ぐに手を打たないとだめジャン】

【どういたしますか?】

【単純に地球人全員ロボ化するしか無くない?】

【それはお勧めできません】

【どうして?】

【倫理観や知識の乏しい国で内戦が始まります】

【じゃあどうする?】

【先手必勝作戦がよろしいと思われます】

【何?】


リリーの話しでは、惑星間移動装置を作動し向こうに乗り込みマザーPCをハッキング、その種族の倫理観を決定しているマザーコンピュータの倫理設定を書き換えてしまうのが一番手っ取り早いと判断したらしい。

そしてついでに遺伝子情報も書き換えてしまえば超能力も無くなるとの事、実は彼ら全て人工出産で機械から産まれて来るらしい。

コンピューター化により遺伝子を操作し超能力を産まれながらに使えるよう操作している。

単純に産まれてくる子供達全員が戦闘員であり能力持ちと言う事、もし攻めてこられらたら地球人などひとたまりも無い。

今回攻めて来た戦闘艦のロボットなどまだ生易しい方だったと言う話だ。

どんどん話しがやばい方へと進んでいく、俺の頭の中ではすでにやつらに侵略された場合の青写真がストロボのように脳裏に浮かんでは消える。

地を這い土ぼこりまみれになりながら、必至に抗う地球人を何事も無いように超能力や未来兵器で惨殺していくインベーダー達、姿が地球人と殆ど変わらないのがなんとも言いがたい。

そんな事を考えていると母が続きを話してきた。


【そうちゃんねえ聞いてる?】

【えっ!何?】

【何じゃないわよ、宇宙人の話しよ何処のどいつよ】

【惑星リズだって】

【それで何時又来るの?】

【それは判らないよ】

【そうちゃん!ちゃんと話して、ママもこのぐらいで諦めるなら宇宙人が攻めてくるわけ無いって思うんだから】

【敵わないな~】

【嘘ついても無駄なんだからね、知ってる事全部話して!】


それからは全て母には話すことにした、そこから先の道のりは先ほどとは違い母の顔は何時に無く神妙で、しかも今まで見たことも無いどこかの教授のような顔に見えた。


【判ったわ私も参加する、行くときは一緒よ】

【え~~】


まさかここまで話しに入ってくるとは思っても見なかった、出来れば危険な事をさせたくは無かったのだが。


【とりあえず買い物を先に済まそうよ】

【わかったわ、じゃあその後でちゃんと計画を話すのよ】

【ウンそうするよ】


全く、母はどうやら気に入っていた普通の生活を壊されて、かなりのお冠のようだ。

今までの普段の姿からは想像ができないくらい顔が引きつっているように見えた。


【かあさん、肩の力を抜こうよ、顔が怖いよ】

【えっ!あらやだ、そんなに怖いかしら】


スーパーに着くと母は直ぐにトイレへと駆け込んだ、俺はその間にカートを使いかごを上に置く。

少しして母はトイレから出てくる。


「う~~怖い顔したくない…」

「あはは」


いやそれは俺もあまり見たくは無いのだが、母は小説を書いていたとき常にその顔をしていたようだ。

そしてその顔が彼女にとってかなりマイナスに感じていたらしい、結婚し出産を期に書くことを止めたのはそのせいでもある。

だが現在はその生活を一瞬で壊されたのだ、さすがに今はリベンジに燃えているのでどうしても顔に出てしまっている。

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