第20話 学校も休み

学校も休み


今日は一応月曜日なわけで、本来ならば今日から登校しようと思っていたのだが、あんな事があり当分は何処の学校もお休みを決めたらしい、もちろん妹が通う中学校もお休みになっていた。

そしてこの日は母の持ち物であるマンションへと家族4人で移動していると、非常事態に直面する。


「うわーまじかー」

「うそっ」


大通り沿いのファミレスが2軒それに車の販売をしているモデルルーム、さらに10階建てのマンションが無残にも壊されていた、その回りには人だかりが。


「ありゃ瓦礫に埋まってんのか?」

【そうちゃん、見てきて】

「チョツト見てくる」


そう言うと俺は壊れたマンションへと近づく、そこにはすでに救急車と消防車も来ていたが、捜索は難航していた。


「危ないです、近づかないでください」


といわれながらも側に寄ると10階建てのマンションの3階から4階部分の半分がごっそり削り取られたように壊されていた。

火事にならなかった事が幸いしたのか怪我人数人はすでに搬送された後で、残されているのは子供一人と大人一人と言う話し。

だが、死にそうな人がいたとして丸っきりの他人にロボ化を適応するのはあまりにも無責任すぎる。

まさか助けてあげるけど後は知らないとは言えないし、かといってその人にずっと寄り添うわけにも行かない。

ふと俺は忘れかけていた事に気が付いた、ロボ化して直った後に解除すればいいんじゃね…

だから母は見て来いと言ったのだ。


【リリー何処にいるか分かるか?】

【母親らしき人が3階の奥の瓦礫の下にいます、子どもと見られる個体も同じ場所に】

【マジか】


俺はマンションの裏手に回り走りながら人気が無いのを確認し光学迷彩機能を作動させ半壊したマンションの3階へと飛び移ると瓦礫の奥に足を進めた、そして直ぐに生体反応を探し出したのだが。

うわ~これ死んでないよな、瓦礫を取り除き子どもを抱き上げる。


【まだかすかに生体反応があります、子どもを守っていたようです】


見ると母親は虫の息だが今なら何とかなりそうだ、直ぐにロボ化を起動し体全体を直した後でロボ化を解除することにした。


【ロボ化80・90・100%完了しました、個体の生命反応が復活各内臓機能も正常化完了】

【ではロボ化を解除】

【はいロボ化を解除します50・60・80%・解除完了しました】

【子どもの方は怪我などはなさそうです】

【じゃあ一度光学迷彩を作動させてこの場を移動しよう】

【かしこまりましたお子さまは私にお任せください】


子どもをリリーのフィギュアに任せ、俺は母親を抱き上げる。

ロボ化した体にでもやはりその重みはしっかりと感じたが、細かい事など考えている余裕も無かったので、3階から飛び降りるとマンションから少し離れた空きスペースで母親と子どもを下ろし、光学迷彩を解除した。


「大丈夫ですか?」

「…ここは?私の子、由実は?」

「ここにいますよ」

「由実」

「有難う 有難うございます」

「こっちで~す」救急隊に手を振る

「それじゃあ後は救急隊員にお任せしますから」


面倒ごとに巻き込まれる前に助けた親子に手を振りその場を離れた。

直ぐに2人はやって来た救急隊員の手で担架に乗せて運ばれて行った、まさかこんな使い方もあるとは。

その後俺は家族の下へ戻ると、そこにはニコニコ顔の母が様子を聞いてきた。


【どうだった?】

【何とか間に合ったよ】

【思った通りね】

【母さん知ってたんだね】

【だって直した後で解除できるならどんな怪我でも治せるのと一緒でしょ】

【まあその通りだったけど、解除したのは今回が初めてなんだよね一応ナビのリリーから話しは聞いていたけどさ】

【良かったじゃない実践して本当だって分かったんだから】

【でももし失敗したらやばいでしょ】

【それはそうでしょうけど、目の前に困っている人がいたら助けるべきよ、もうそうちゃんはヒーローなんだから】

【いやいや俺はそんなたいそうな事をしようとは思わないんだけど…】

【情けない事言わないのよ、もう覚悟しちゃいなさい】

【…】


「お兄ちゃんどうだったの?」

「何とか救急隊員の人が助けたみたいだよ」

「そうなんだ」

「さあもう行かないと」

「そうだね」


【ヒーローは忙しいわね】

【母さんのせいだからね】

【ふふふ】


それから10分と少し歩くと駅前の通りを北へと進む、そこからは壊れた家や建物は殆ど無く道も普通に通る事ができた。

その後も少し駅に向かって歩くと大きなマンションが目の前に見えてくる。


「ここ?」

「そうよ」

「でけ~」

「ほんとにここなの?」愛菜

「ママにはいつも驚かされる」


どうやら父にとっては驚くのは今回が初めてではないようだ、まあそれ以上ビックリなこともあったのだがそれは今後も伏せておこうと思う。


「ええと、暗証番号は…」

ピッピッポッポップップッ


母がインターホン脇にあるキーボードで入力すると厚めのガラス扉が音も無く開き中からフローラルの香りが漂う。


「うわ~なんか良くない?」

「さ 入って」


マンションのエントランスにはところどころに鉢植えがありロビーにはテーブルとソファが。

そして認証システムはすべてAI化されているらしい。


「何階なの?」

「えっとね最上階かな」


そのマンションは25階建て、この辺りでは一番高い民間のマンションであり、セキュリティも万全と言う、買うと億はくだらないマンション。

聞くと最近まで人に貸していたらしい。

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