第12話 ロボ空を飛ぶ
ロボ空を飛ぶ
かかる重力を0.1にしたため普通にジャンプしただけで地上300メートルまで一気に上昇した。
「エア推進システム始動!」
フッ ヒュワー
風を切る音がすごい、空気抵抗がこれだけ有ると生身のボディだとかなり負担になるだろう。
ロボ化したおかげで風は感じるがその影響はさほど気にならない、スピードを出すと息が苦しくなってくる。
「エア吸入自動装置に切り替えます」
「ああ頼む」
その後はさっきの苦しさが嘘のように無くなり、平均時速400k程度出ていると思われる空の移動もかなり楽になっていた。
そして上空にあった不思議な物体へ近づく。
「こいつをどこか遠くへ運ぶかそれとも2度と来れないようにしたいが出来ないか?」
「ハッキングでしょうかそれとも解体しますか?」
「そうだなまずはハッキングしてみよう」
「かしこまりました」
宇宙船らしき機体の上に降りようとすると、たぶんバリアのようなものが張られているらしくはじかれてしまう。
バチッ!
「あっ!」
「船体にバリアが張られているようです」
「無効化できないか?」
「やってみます、敵宇宙船の防御システムに干渉します、失敗・今度は防御システムと同化します、成功しました着陸できます」
「よし、ありがとう」
俺は今未確認物体の屋根部分に当たる場所に立っている、別に何かセキュリティが働いている様子は無い、たぶんバリアに同化させたため俺を異物とは判断しなくなっているようだ。
「リリーこれからどうすればこいつらを撃退できる?」
「思考します3・2・1コンピューターをハッキングし予定を書き換えるのが、89%で最善策と出ました」
「ハッキングなんて出来るのか?」
「現在宗助様は船体に触れている状態なのでこの場所からならば敵が使用している電波帯を使い敵インベーダーのマザーコンピューターにハッキングを掛ける事は可能です」
「分かった、やってみてくれ」
「かしこまりました、3・2・1周波数特定しました、通信モジュールを使いハッキングを掛けます。3・2・1、50%70%3・2・1敵マザーコンピューター内部に入りました」
「じゃこの宇宙船をまずは撤退させよう」
「了解しました」
「まず地上に降り立ったロボットを回収させてくれ」
「かしこまりました」
「回収命令を出します」
ドンッ!
「おわっ!」
自衛隊のF40が攻撃を開始したようだ。
このままだと自分達も巻き添えを食う、それに発射されたミサイルが誤爆しないとも限らない。
「まずいな、間に合うか?」
「地上攻撃ロボット全機回収まであと5秒4・3・2・1、回集完了しました」
「よしまずは高度を上げよう」
「かしこまりました」
急遽高度を2千メートル以上に設定航空機の上限より上げれば攻撃機のミサイルもとどかない、しかも真下から見るとこの宇宙戦艦は空に同化してしまうようだ。
「この船のリーダーとコンタクトは取れるか?」
「この船に生体は乗船しておりません」
「そうなのか?じゃあこの船に命令を下したやつらを帰還してから攻撃するように設定してくれ、そして2度と来れないように最後に自爆するように設定できないか」
「了解しました」
数秒後AIリリーの設定は完了したようだ。
「この船の推進力は座標空間転移式のようです」
「座標空間転移?瞬間移動か?」
「そうとも言います」
「それは俺の体にも使えるか?」
「今この船の情報をコピーします、3・2・1コピーしました」
「やった!これで瞬間移動も出来る」
「後数秒で船が移動します近くにいると巻き込まれます、移動しますか?」
「分かった離れよう」
「この船から離脱します3・2・1離脱」
次の瞬間風が吹くようにすーっと未確認物体の屋根から体が離れていく、そして宇宙戦艦から500メートルほど離れたところで未確認物体は一瞬で掻き消えてしまった。
「ま まじか!」
あれだけの大きさの物体が一瞬で消えるのだ、まさかそんな事が目の前で起こるとは思わなかった。
「宗助様地上に戻りますか?」
「ああまた同じスーパーの屋上に頼む」
「かしこまりました」
数分後スーパーの屋上に戻るとそこからの景色は散々たるものだった。
あちらこちらから火事のように煙が上がり、家の一部は瓦礫となって焼け崩れ。
道路のあちこちでは車が壊され、そして人が倒れ死んでいる。
それを見ただけで、俺の何かが沸騰してくる。
「クソッ!」
「残念です」
「あの宇宙船はどのぐらいの時間で帰還するんだ?」
「こちらの星の時間で約1年になります」
「結構かかるんだな」
未確認の宇宙船が現われてまだ数時間しか経っていないと言うのにこの惨劇。
なんともろいのだ、これが自分の住む世界なのかと改めて考えさせられた。
それと何者かが送り込んだ葉巻型戦艦だ、今まで宇宙人はいるのだろうとは思っていたがまさかそれを目の当たりにするとは。
だがあの船は無人だという、今回敵から手に入れた情報から座標は分かっているので瞬間移動で行ってみようと考えているが、それは果たして吉と出るか凶と出るかは又今度書いてみよう。
それよりも置いてきた妹が心配だ。
光学迷彩を纏ったまま階段を駆け下り人気が無くなったところでシステムを解除した。
ダッダダダ
「愛菜!」
「あ おにい」
「ごめん遅くなって」
「そんな事はいいけど、もしかしてビビッちゃたの?」
愛菜は宇宙船がいなくなりいつもの状態に戻っていた。
「いやビビッてはいないかな」
「ほんと~?」
(調子の良いやつ)
「皆様入り口が開きました」
どうやら一連の騒ぎのせいで電気は止まってしまい辺りは薄暗くなっていた。
「こりゃ帰るしかないな」
「スマホは?」
「何か通じないっぽい」
「この状況じゃ近くの基地局も電気が止まっているか…」
買い物袋を手に提げ、俺達は帰りの道を足早に歩き出す、帰り道の先々では車が押しつぶされ家が壊されていた。
勿論電線は全て引きちぎられていた。
「まじか」
俺と愛菜の足は徐々に速くなる、それは家にいるはずの母が心配になったから。
終いには俺は走り出していた。
「お兄ちゃん待ってよ~」
追いすがる妹を振り切り家を目指す、信号だった場所はまだ健在だがその手前の電柱はひしゃげていた。
そして歩道を渡り路地を抜けるとそこには半壊した建物が…
「嘘だろ!」
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