23話-エンカウント
1
ガキィィン!
剣と楯の目がぶつかり合う。
視界に入っている間はどんな攻撃だろうと通さない絶対の障壁。
「その瞳、便利ね」
「な、なんで瞳の事...」
「見てれば分かるわ。私を舐めんじゃないわよ」
菫の言葉と共に彼方と菫の間にエレイの腕が挟まる。
腕は輝きを増し、いずれは目を潰すのに充分な光へと至る。
(やばい...!)
『
何をも移さない瞳という隙を作り出し、彼方を切り裂く。
が
その実、虚空をの横に盛大に空ぶった菫は大きな隙を作った。
『ジオショッ――
「声出してんじゃないわよ!」
下に振り下げた剣を地面に突き立てたまま、それを軸に回し蹴りを彼方に入れる。
「ぐぅぅ...」
蹴りは腹の深くまで入り、軽くよろめく。
それはこの世界での初めての他者による痛み。
そして彼方が戦う意志を無くすのに充分な一撃。
「もう終わり?期待はずれね」
「菫」
「分かった分かった。残り片付けに行くわよ」
「それじゃあね、雑魚」
菫は彼方を置いて森の中へ消えていった。
2
最後の測定が終わる。
菫が全ての生徒を倒し、最後まで立っていた。
ゲートを使い教室へ戻る。
彼方は窓際の1番後ろの定位置へ座り、へたり込む。
「お疲れ、彼方」
「うん...」
刹那がさわやかな笑顔で話しかけてくる。
刹那は刹那で一種の火種を作り出していたが、大丈夫なのだろうか。
「刹那、さん、は、大丈夫だったの?」
「大丈夫だったよ。私を止められないほうが悪いって先生が言ってた」
「あぁ、そう、なんだ」
ルールには則っているのだから問題はないのは分かっていたが、止められないほうが悪いという方向で争いを収めるのは予想していなかった。
蝋先生が教室に入り、生徒を労う。
今日の結果が今後に左右されるらしい。
魔力量、手札の数、動き
ザックリ分けて3つの分野を測った測定は今後どのように影響をもたらすのだろうか。彼方は失意の中家に帰る事となった。
3
「それじゃあ彼方、また明日」
「あ、うん明日」
気づけば刹那と喋ることが出来ていた。
(刹那さん明るくていい人だなぁ)
刹那と菫の事を考え1人反省会を開く。刹那との会話、菫の期待向こうは彼方に対して友好的に近づいたのに彼方はまごついてばかりいた。
「はぁ...」
(このままじゃ駄目だなぁ)
朱色の空が広がる帰り道、今日は珍しく人が少なかった。
何かあったのだろうかと考えるもとくに思い浮かばない。
それにどことなくどんよりした雰囲気が彼方の肌を撫でる。
(なんか黄昏時って感じでちょっと嫌だなぁ。怖いの苦手なんだよなぁ)
(気分転換にちょっと寄り道して帰ろうと思ったけど間違いだったかも)
不気味な雰囲気を嫌がり、早足で帰る彼方。
そしてそれが彼方の運命を大きく変える存在との出会いでもあった。
ドン
「いて」
曲がり角で何かに頭をぶつける彼方。
反射的にすいませんと謝るが、返事も退く気配もない。
これは何事かと顔を上げると熊のような見た目をした全身黒色の何かが、座ってこちらに振り向いていた。
「え、これ人じゃ...」
明らかに魔物の容姿をしたソレはこちらに向き直り、餌を見るような眼を向けてくる。
ガキィィン!
突如激しい火花を上げ、魔物の攻撃が弾かれる。
恐怖に負け、尻もちをつく彼方を楯の目が救った。
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