20話-刹那
1
「お、2人ともどこ行ってたの~?」
刹那が振り返りこちらを見る。
地面に剣を突き立て、暇そうに地面に座っている姿は中々様になっていた。
「え、え~と特別試験、的な?やつ~?」
「へ~、2人はめっちゃ強いんだ」
刹那が興味ありげに彼方と菫の顔を覗き込む。
「当たり前よ雑魚。私の剣を使えた事を光栄に思いなさい」
菫の台詞と共に突き立てられた剣が消滅する。
菫は剣を生み出す魔法しか使わないのだろうか。
それとも、それしか使えないのだろうか。
人を見下す言動から考えるに、魔法も剣術も秀でてるのだろう。
関係なくこういう性格という線もあるが、薄いと見て良い。
魔法1つで充分だった。
と、彼方は結論づけた。
「皆さん終了です」
突然耳にハッキリと蝋先生の声が入ってくる。
ゴーレムと戦っている班の手が止まり、ゴーレムも動きが止まる。
魔法の一種なのだろう。
「次が最後の測定ですので、この赤い柱の元まで来てください」
蝋先生が赤い石を置くと、赤い柱が昇る。
信号弾のような役割を果たしていた。
生徒全員が集まり、次に行われる測定についての説明が始まる。
要約すると集団戦のPvPだった。
場所は森の中。
30人を2つのグループに分けて戦うらしい。
「今回もお忙しい中、
クルアンタと呼ばれた人がゲートから姿を現す。
基本色が黒に赤色の3本線が入ったトンデモセンスの外套で全身を包み、見慣れた部屋から姿を現す。
そんな人間は1人しかいない。
(嘘でしょ...)
蒼園櫻巴の姿がそこにあった。
2
「こんにちは、私の名前は櫻巴。怪我や事故は私がなんとかするから安心して測定を受けてほしい」
櫻巴の後に蝋先生が話を続ける。
「この戦いは相手を倒す気で戦ってもらいます」
「貴方達の今後に響くので頑張ってください」
基本的に勝ち負けの判断は蝋先生が行い、危ない所は櫻巴が未然に防ぐといった方法で怪我や事故から生徒を守るシステムらしい。
「場所は私が安全な場所を見つけたから安心して」
そう言い櫻巴は彼方の方を見やる。
(あの森か~)
彼方と櫻巴が戦った事もある森。
複雑な地形と変わりやすい気候が特徴で何分広い。
確かに戦うのに最適な土地だ。
蝋先生の決めたグループに分かれる。
菫と彼方は同じグループだが、刹那とは違うグループになった。
「刹那、さん。き、気を付けて」
「うん、ありがとう」
刹那は軽くお礼だけ言うとゲートの中へ消えていく。
公平を期す為に1人1人違うゲートが割り当てられており、飛ぶ場所は完全ランダム。
しっかり索敵をしないと奇襲を受けそうだ。
「待機組は教室にゲートを繋げてあるからそこに行って下さい」
少し歩く距離にゲートが出現する。
何故少し離れた位置にゲートを出現させたのか疑問を持ちながら教室へ戻る。
黒板であろう板には森と生徒が映し出されていた。
3
生徒の中には刹那の姿もあり、今戦っている様子がモニタリングされていることが分かる。
彼方は窓際の1番後ろに座り映像を見る。
炎の魔法や水の魔法、菫のように武器を作ったりする者もいる。
小動物を使役して索敵したり、粘着性の糸を張って罠を作ったりと各々自分の長所をいかして戦おうとしている。
そんな中
画面が切り替わる。
(あ、刹那さんだ)
そこには2人の生徒に挟まれ、絶体絶命のピンチに陥っている刹那の姿があった。
「悪いが、野蛮なやつにはさっさと退場してもらうぜ」
「獣を狩るのも慎重に、と言いますしね」
2人の男子生徒が刹那に向けて魔法を打つ。
が
刹那は己の体1つで全てを防ぐ。
「私が出会った冒険者さんはもっと強かったよ」
瞬間、2人の生徒は地に伏し、刹那のみが立っていた。
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