18話-測定2

1


「では、次に魔法の適性を見ます」


「ゴーレムを1班に1体ずつ、計10体用意しました」


蝋先生の背後にゲートが出て、ゴーレムがぞろぞろと歩いて出てくる。

20mはあるであろう大きさのゴーレムだ。


「面倒なので全員同時に見ます。それぞれの班は持てる力全てを使って、ゴーレムを壊してください」


(えぇ...?)


急にめちゃくちゃな事を言い出す蝋先生。

面倒くさがりなのかもしれない。

しかし、本当に30人全員の適性を同時に見れるとしたらかなり凄い人なのでは?と考えてしまう。


先生の指示で各班は等間隔を空け、ゴーレムも定位置に着く。

彼方達の班は他とは違い、余り緊張する空気は流れていなかった。


「ねぇ、彼方か菫」

「何?」

「魔法で剣って作れる?このくらいのサイズのやつ」


刹那が片手剣程度のサイズが欲しいと体を使って説明してくれる。

切れ味は保証しないが、彼方ならば造作もない事だ。


「ほら」


彼方が承諾するよりも早く、菫が剣を手渡す。


「ありがとう。菫は優しいんだね」

「雑魚が自分の舞台で滑稽な姿を晒すのが見たいだけ。重さはどう?」

「もうちょっと重くしてほしいかな」


菫が剣に手を伸ばすと、剣の重さが変わったのだろう。

刹那は嬉しそうな顔をする。


「理想の剣が出来た様ね。それじゃあ頑張って踠きなさい」

「ありがとう!」


菫は口調はアレでも結構優しいのかもしれない。


2


「測定始め!」


一斉にゴーレムが動き出す。

刹那はゴーレムの元へ一直線に疾走する。

菫は動く気配すらないが彼方は刹那に補助魔法をかけようとしていた。


そんな後方に陣取る2人の肩にポンと手が乗る。


(?)


彼方が振り返ると蝋先生がにこやかな笑顔で立っていた。


「2人はこっち」

「え?」

「...」


「特別なゴーレムが相手するから」


蝋先生は2人の手を取り、目の前に出来たゲートへ足を進める。

刹那は1人、ゴーレムの残骸からそれを眺めていた。


3


ゲートが閉じ、2人が連れ出されたのは木々が生い茂る森。

気温は少し熱いと感じるくらいで空気は乾燥している。


「2人は特別に私が見ます」

「で、でも、他の人は...」

「あっちは他の先生が視てくれてるから大丈夫」


彼方は焦りを露わにするが、菫は落ち着き払っていた。


「菫さんは能力測定の事詳しいみたいね」

「あんなバレバレの擬装してたら想像つきます」

「うふふ、群青の血は凄いわね」


2人が仲良くお話している最中に重い足音が聞こえてくる。

恐らく、先程のゴーレムを遥かに凌ぐ大きさの持ち主。

蝋先生の発言からしてこの音の主は一択しかない。


すなわち、特別なゴーレム。


「それでは頑張ってください」


蝋先生が1歩距離を取る。


「が、頑張りましょう。菫さん」

「雑魚の癖に名前間違えないで。私の名前は菫」

「う、ごめん...なさい」


間違えたくて間違えたわけではないが、翻訳のせいで不和を生み出す。

この問題を解決する策を見つける他なかった。


だが、こんなことでへこんでいる暇ではない。

目の前には40mはあろう大きさのゴーレムが目前まで迫っているのだから。

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