17話-測定1
1
先生の後に続き降車の外へ出る。
「ここにいる30名は今からこのゲートに入ってもらいます」
蝋先生の後ろには巨大な空間の裂け目が出来ており、空間の裂け目からここら辺では見られない景色が広がっている。
「まずは皆さんの魔力量を見ます」
そう告げると先生はゲート中に入っていく。
「行こう、彼方」
「え、あ、うん」
生徒もそれぞれの感情を抱きながらゲートに入っていく。
ゲートの先に待ち受けていたのはだだっ広い荒野。
右も左もまっ平らな景色が広がっており分かりやすく言うと殺風景。
蝋先生は1人だけ離れた位置に立つと此方へ振り向き、それでは測定を始めますと
言い放つ。
「1人ずつ私の前に来て、私に向かって魔力を流してください」
「待機組は3人1組の班になって交流をしてもらいます」
「誰と組むかはこちらで指示します」
蝋先生の指示に従い、彼方も3人1組の班を作る。
何の因果か個性的な3人が集まってしまった。
「あら?"卓越した雑魚"じゃない」
「こんにちは、菫」
「...」
彼方の班は彼方、刹那、菫の3人で構成されていた。
卓越した雑魚。
菫は刹那をそう評していた。
原因は恐らく先程の自己紹介だろうと彼方は考えた。
彼方には一瞥もくれず、退屈そうに先生の方を見ている。
菫が評価するまでもないモブという事だろう。
「折角ですし、何か、話しま、せん、か?」
彼方が勇気を振り絞ってだした提案は刹那のみが受理したようで、菫を抜いた2人で話しながら順番が来るのを待つことになった。
2
「蒼園彼方さーん」
名前を呼ばれる。
「あ、彼方の番じゃん」
「うん、それじゃあ言ってくる」
刹那との交流を一時中断し先生の元へ向かう。
蝋先生は生徒に何度も魔力を流されていたが常ににこやかに立っている。
しかし、1度だけその笑顔が消える瞬間が存在していた。
群青菫が魔力を流した時。
菫が魔量を流している間、周囲に漏れ出したであろう魔力が生徒全員をわずかながらに押さえつけていた。
全員がそれを感じ取ったようで、周囲の目は菫に釘付けに。
周囲に魔力が漏れ出すほどの魔力量、周囲を見下すだけの力は備え付けていることが判明した瞬間である。
(落ち着け、大丈夫)
蝋先生の前に立ち、緊張を抑え込もうとする。
「はい、では私の方に集中して。ゆっくりと魔力を流してください」
「はい」
(魔力のコントロールはお母さんと散々やった。大丈夫)
自分に言い聞かせながら魔力を流していく。
蝋先生の周りに、局所的に流された魔力は行き場がない。
行き場のない魔力は当然のように蝋先生を巻き込みながら下へ落ちていく。
(少しずつで助かった~。一気に最大出力で魔力を流すと疲れちゃうからな~)
蝋先生に流される魔力は徐々に、徐々に、その力を増していく。
「...ッ」
蝋先生が苦しそうな声を上げる。
「先生?」
「何でもありません。続けて下さい」
「はい」
徐々に、徐々に、彼方の魔力は蝋先生を苦しめる。
遂には顔から笑顔が消え、膝をつく。
「先生!?え、あの、大丈夫です...か?」
「大丈夫。けど、次の測定に移りましょうか」
その言葉を以て、ミゼリに属する30人の生徒の魔力量測定は終わった。
菫だけがこの一部始終を遠巻きに見ていた。
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