14話-櫻巴の帰還

1


3の鐘が鳴って330日が経過。


(もうすぐ1年か~。お母さん全然帰ってこないな~)


焦げ目が消えつつある草原で横になっている彼方。

そんな彼方の元に1人の人間が歩いてきた。


「彼方~元気にしてた~?」


(聞き馴染みがある声だなぁ)


「彼方ー?」


櫻巴が顔を見せる。


「おわおわおわおわ!うぇー!お母さん!」

「元気そうで良かった」

「全然すぐじゃないじゃん!あと日記!」

「うわー元気すぎるねぇ」


嬉しさのあまり櫻巴の方を全力で揺さぶる彼方。

特に抵抗もしないで揺さぶられ続ける櫻巴。


「おかえりー!」

「うん、ただいま」


彼方が櫻巴に抱き着く。


「面白い事が沢山あったからご飯でも食べながら聞く?」

「うん」

「じゃあ、城に戻ろう」


櫻巴は彼方を脇に抱えて城に戻る。


(あ~これ久しぶりだな~)


彼方は謎の安心感を覚えていた。


2


「それで、開拓地でなにしてたの?」

「植生の調査に治安の確認。あとは観光かな」

「えー!私も行きたかった!」


「近いうちに行けるよ。生徒の枠が確保できたからもうすぐ入学出来る。卒業する頃には私テストも終わってる頃だよ」

「本当?」


櫻巴は笑って答える。


「本当だよ。彼方は強いし、日記も書いてるんでしょ?」

「うん」

「私が渡したペンは物凄く魔力を食う厄介なペンなんだけど、魔力は消費すればするだけ成長する。彼方の魔力量を更に鍛えるには必要な物だったんだよ」


唐突なカミングアウト。

思わず面食らう彼方。


「え、毎日あのペンで日記書かせてたのはそういう事!?」

「そうだよ」


にこやかに返答する櫻巴。


「でも便利でしょ?魔力を流したらどこでも文字が書けるんだから」

「まぁ、うん」


否定できなかった。


「学校と言えば、彼方の同期は面白いのが揃ってるから楽しみにするといい」

「え、どんな人?」

「それは教えられない。でも退屈はしないと思うよ」

「えーどんな人なんだろう」


元の世界では友達いない歴6年。成績も落ち込み気味で娯楽を消費するために生きてきたが、ここで再起するチャンスが舞い込んできた。

彼方にとってまたとない機会だ。


その後も冒険者の事や遺跡から発掘された文明の話、喋る植物や開拓地に存在する町の特徴等様々な話を聞いた。

中でも彼方が興味を引いたのは町の話である。


「カーラーという町は楽しかったよ。私を超えるかもしれない逸材がいたからね」

「え、お母さんより強いの?」

「いずれは超えるだろうね?おかげで私も魔法の研究をするやる気が湧いてきたよ」

「まだ強くなるの...」

「はは、強さに限界はないよ。彼方」


(うへ~、マジ?)


彼方は内心まじかよと突っ込んだ。


「あとはイーソドが面白かったね」

「強い人がいたの?」

「いや、あそこは別の意味で面白い。カーラーは武力が物を言う町だけど、イーソドは未知で溢れてる都市だった」


(未知で溢れてる都市!ロマンの塊じゃん!)


「局所固有都市イーソド、そこの絶対支配者ガブエイラに統治された都市は少々異質だった」


(おーおー新しい詠唱かと思った)


「あそこはこことはまた違う、電脳空間というもう1つ世界を発見して栄えているんだ。あと目が疲れる」

「え?ファンタジー要素の欠片もない...」


思わず彼方のツッコミが入る。

電脳世界という言葉でなんとなくイーソドの全容が思い浮かんでくる


「ファンタジー?」

「え、いや何でもない...」


その後イーソドの話を聞いたが、聞けば聞くほどノスタルジーな気分になった。

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