9話-魔法の勉強
1
2の鐘と1631日(日記より)
天気は晴れ時々強風。
彼方と櫻巴は見晴らしのいい草原で向かい合っていた。
「それじゃあ魔法のお勉強だね」
「うん」
ゴクリと喉を鳴らす。
魔力をコントロールする術ばかり教えられてきたが、いよいよ魔法をバンバン使うことが出来る。
「彼方はどうやって魔法を行使するか分かるかな?」
「詠唱、あとはイメージをしっかり持つこと」
「その通り。彼方はそれが出来たから漆黒なる宵の明星という魔法を生み出せた」
1回使って速攻使用禁止された魔法だ。
「詠唱は言葉で魔法を使う。それ以外にも目や物、文字や記号等が魔法を使うものになり得る」
櫻巴が片手を前へ伸ばすと、彼方の後ろに壁が出来た。
「こんな感じで周りの物を使うことで魔法を行使することが出来る」
(これが無詠唱魔法ってヤツ...!)
「でもこれは膨大な魔力を使うから使うことは滅多にない」
そう言って櫻巴はスクロールを取り出す。
「だから基本的に自分の言葉や文字に魔力を流して魔法を使う。
全て自分で完結させていると消費魔力も少ないし、イメージもしっかりしてるから魔法の威力も違う」
櫻巴の取り出したスクロールは淡い光を放ち、彼方の背後の壁を崩す。
「他人が作ったスクロールや他人が使っている詠唱を使っても、その人の考えやイメージは伝わらない。分からないから無駄に魔力を使って再現しようとする」
櫻巴はもう1枚のスクロールを取り出す。
「すると、威力と消費魔力が見合わなくなる。まぁ詠唱が被ったりすることはあるけどね」
スクロールは淡い光絵御放ち、櫻巴の後ろに壁を立てる。
が、すぐに音を立てて崩れ去った。
「これが魔法の基本。ここまでは分かった?」
「う、うん」
(つまり、他人の魔法をパクっても使い物にならない。という事かな)
2
「よし、じゃあスクロールをいくつか渡すからまずは使って見よう」
櫻巴にスクロールを3つ渡される。
「あの的に当てて御覧。そしたら次に行くよ」
櫻巴が即座に的を作り出す。
(お、チュートリアル的な奴かな?)
スクロールに魔力を流し込む。
スクロールは淡い光を放ち、火球となって的へ向かう。
しかし火球は的まで届かずに消失してしまう。
「えー?魔力が足りなかったかなー」
2枚目のスクロールに先ほどの倍の魔力を流す。
スクロールは淡い光を放ち、火の槍となって的の奥へ突き刺さる。
「惜しいね。もっと魔力を流してみたら?」
櫻巴が地面の火を消しながら助言をする。
彼方は言われた通り魔力を思いっきり流す。
(うおー!全力の魔法を喰らえー!)
スクロールは淡い光を放つ。
しかし何も起こらずに灰になって消えた。
「あれ?不発?」
「いや、発動したよ。発動したからスクロールは灰になった」
「上を見て御覧、彼方」
彼方が上を見ると1本の巨大な炎の槍が上空から降ってきていた。
「今度は魔力を流しすぎ。もうちょっと感覚を掴まないとね」
「あれ、どうしたら。あれ...」
『さようなら。失敗作』
櫻巴が詠唱すると上空の槍は霧散していた。
「それじゃあ彼方、もう少し頑張ってみようか」
「は、はひ...」
先程はなった魔法に魔力を使いすぎて、ほとんど空になった彼方にスクロールがまた渡される。
「大丈夫。その調子ならすぐ終わるよ」
的に当たるころには夕暮れ時の空になっていた。
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