4話-魔法の才

1


紫雷の司書が管理する図書館。

王国の歴史や英雄譚、伝記に絵本と言った様々な本が取り揃えられている。

利用者は1日に2人いたら豪運。


図書館の主な光源は食雷虫。

食べる雷により体の色を変え、雷のエネルギーを自身のエネルギーへと変換する。

余ったエネルギーは光という形として外に放出される。


「こんにちは、零。図書館と本借りるよ」

「壊さなきゃ大丈夫ですよー」


れい

図書館の現館長であり、住民の相談窓口も務めている。

昔は雷の発生源として嫌われていたが、櫻巴に拾われてからは民の頼れる味方になっている。


「はい、娘さんの本」

「ありがとう。行こうか、彼方」


はいと答え、櫻巴に着いていく。


「あの、櫻巴さん。娘さんの本って言うのは?」

「彼方が大事そうに抱えていた本だよ。あと、私は櫻巴じゃなくて櫻巴」


向かい合って席に座る。


「はい、彼方の本。返すのが遅れてごめんね」

「いえ、大丈夫です」


(私が抱えていた本。一体どんな内容が書かれているんだろう)


本を手に取る。

その瞬間、静電気程度の痛みが彼方に襲う。


「痛っ」

「大丈夫?彼方」

「だ、大丈夫です」


(そっか、思い出した。私、神様に招待するとか言われたんだっけ。

この本は確か転生の特典的な奴)


「この本とても大事な物なんです。ありがとうございます」

「うんうん。素直にお礼が言える彼方はいい子だね~」


櫻巴に頭を撫でられながらも次々に記憶が復元されていく。


(この本はチート級の魔法が使える魔導書アイテム。そして私の片目はあらゆる攻撃から身を護る楯が出るはず)


「そしてもう1つ、彼方に提案があるんだけど」

「なんですか?」

「魔法を勉強してみない?」


1秒でも異世界ものに触れた人間なら誰もが求めるもの、魔法。

彼方にそれを拒否する理由は1ミリも存在しなかった。


「します!」

「よ、良かった。彼方がこんなに乗り気だとは思わなかったよ」


星々の煌めきが如く輝かせる目を前に、櫻巴は若干押され気味であった。


「それじゃあ、まずは魔力量を測定するよ。この結果を元に何をするか考えるから」

「はい!」


(確か、神様は魔法職をやっていたからと言う理由で魔力量をめっちゃ増やしたって言ってたはず...!)


櫻巴が取り出したのは真っ白なコイン。


「それじゃあこのコインを握って思いっきり魔力を流してみて」

「は、はい!」


(コインを握って、魔力を流す。流す、流す...どうやってやるの...)


「コインを握る手に集中して、ゆっくり、ゆっくり、彼方の内側からコインに向かって何かが流れ込んでくるはずだよ」

「...」


(むむむ、難しい...ゲームの時みたいに魔法を使おうとしたらいけるかな?)


頭の中のイメージを変えたのが功を奏したのか、コインはその色を変えた。


(ん?何かいけたっぽい?)


「あっははははは!彼方はいきなり感覚を掴んだみたいだね!」

「へ?」

「最初から魔力を感じる人なんて滅多にいないんだよ」

「え?」


「凄いものを見れたし、コインも見せてくれるかな」

「はい」


手の中にあるコインを櫻巴に見せる。


「...へ~」


櫻巴が悦に入る。

確信したような、期待した以上の何かを見たような顔をわずかに浮かべる。


彼方が握っていたコインは漆黒に変わっていた。


2


櫻巴と共に図書館を後にする。


「さっき、零さんに何を渡していたんですか?」

「仕事の書類だよ。あのお姉さんは人気者なんだ」


「それにしてもコインが黒くなるなんてビックリしたよ!」

「それ、どう凄いんですか?」

「魔法打ち放題だよ!打ち放題!」


(打ち放題!?あぁ...神様に感謝しないと。異世界、最高です...!)


「そのうち魔法の学校に通わせるから、彼方を沢山鍛えちゃうからね~♪」

「お、お手柔らかに」


櫻巴は彼方を軽々と持ち上げ、頬ずりをする。

空は朱色に輝いていた。




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