3話-蒼園
1
ある1部屋で彼方は質問攻めにあっていた。
相手は当然名前も分からない謎の人物。
「それじゃあ可愛いお嬢さんの名前を教えてくれるかな」
「蒼園彼方です」
「ここに来る前は何をしていたか言える範囲で教えて」
「ネトゲやってました。あとはコンビニ行ったりソシャゲやったり」
「そのネトゲっていうのは何?」
(え~今時珍しい。ネトゲブームなんてつい最近まであったのに)
「ネットに繋いでやるゲームです。リーサルアーカイブって言う有名なゲームなんですけど...」
謎の人物はいまいちピンと来ていないようだ。
「コンビニって言うのは?」
「え?コンビニですけど...」
謎の人物は時が止まったように動かない。
じっとこちらを見つめている。
(え?私変なこと言った?コンビニの種類について聞いてる?)
「アリマに行きました。アマリーマートに」
「ふぅん」
(え、めっちゃ怪訝な顔されてる!アリマアンチの方だった!?)
「ソシャゲって言うのは?」
「スマホとかパソコンで出来るゲームです。デイリーとかガチャとかあるあれです。えーっと偉人アーカイブやってました」
「ふぅん」
(めっちゃ怖い顔してる...偉人アーカイブアンチだったかなぁ)
「ん、ありがとう」
「あ、はい」
謎の人物はこれ以上ないくらいの屈託のない笑顔で彼方にお礼を言うのだった。
「はい、これ。クリンの実の果実水。元気そうだし何か食べられそうなもの持ってくるよ」
「ありがとうございます」
謎の人物は立ち上がり思い出したかのように彼方の方へ振り替える。
「私の名前を言い忘れていたね。私の名前は
「え、はい、よろしくです?」
櫻巴が部屋を後にする。
(え、あの人勝手に親を名乗ってるんだけど。絶対やばい人でしょ)
彼方は急いで部屋を出ようとドアノブに手をかける。
ガチャガチャッ
「え?鍵かけられた?」
ガチャガチャッ
「まじ??」
ガチャガチャガチャッ
(えー、どうしよう。椅子を使って窓から出れるか見てみようかな)
椅子によじ登り窓を開ける。
外から心地よい風が吹き抜け、開放的な気分を味合わせる。
(椅子もデカいな~。窓の外はっと)
彼方が下を見下ろすと、ビルの屋上にいるのかと錯覚させるほどの景色が繰り広げられていた。
彼方が脱出を諦めるのに十分な高さであった。
(うわ~、これは無理っぽいな~。脱出は取り敢えず保留にして数日ここにいよう)
彼方は頭を切り替えてベッドでごろごろすることにした。
櫻巴が来るまでのんびり鼻歌でも歌ってこれから来るご飯に想いを寄せていた。
2
「入るよ、彼方」
櫻巴が山盛りの料理を持って部屋に入ってくる。
「まだ体の調子が不安定だから沢山食べないとね」
皿には肉料理、魚料理。パンとスープも見受けられ、ガラス管のような容器には串に刺された野菜が詰まっている。
「今日も私が食べさせるよ。順番があるからね」
(今日もあーんコースかぁ。気恥ずかしいから止めてほしいんだけどなぁ)
彼方が心の中でどう思おうと櫻巴は上機嫌で彼方に食べさせる。
彼方はなすがままに状況を受け入れ口を動かすのであった。
3
何日か過ぎた日。
いつも通り朝の光に照らされ目が覚める。
(もう朝かぁ。最近寝起きも良くなったし夜更かししなくなったし、健康的な生活を送ってるなぁ)
窓を見るなりいつになったら帰れるのかと考える。
それと同時に帰る理由が特にない事も同時に理解する。
(やる事ないなぁ。せめてゲームがあればなぁ)
ぼーっと窓を眺めていると櫻巴が中に入ってくる。
「おはよう彼方。スォレンとクリンの実を食べたら、支度をして図書館にいくよ」
「ぅえ、はい」
机の上に置かれたスォレンとクリンの実(彼方が育った国の言葉を使うなら
パンとオレンジ)を食べ終え、洗面所まで向かう。
「ほら、顔を洗っておいで」
櫻巴に促される。
彼方がここ数日城で暮らして分かった事。
・ゲームで見るような兵士やお嬢様の恰好をしている人がいる
・櫻巴は大体の人より偉い
・朝ご飯は少なめ、昼ご飯はあり得ないくらい多め
・夜ご飯は食べる人と食べない人がいる
・湯船に浸かる習慣がない
そして、全員コスプレしているわけではない可能性がある。
(皆日本語喋ってるし日本のどこかだと思うんだけど...)
頭の中を整理しながら顔を洗い、タオルで顔を拭く。
「それじゃあ図書館に行こうか。シロロの皮は貰うよ」
彼方はタオルを手渡し、図書館へ案内される。
櫻巴は色んな人に敬礼されていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます