2話-転生
1
「んん...?ここ、は」
彼方の目に広がるのは見慣れない天井。
(ネトゲやってたはずなんだけど、何がどうなってるの?)
「おはよう。気分はどう?」
「うぇ!?あ、いいデス」
全く知らない人物に体の心配をされ、彼方はカタコトになりながら言葉を返す。
「あははは!それは良かった!ご飯を持ってくるからこれでも飲んで待っててね」
コップに橙色の液体が注ぎ込まれる。
彼方は自然とその懐かしい香りに意識が割かれる。
「ゆっくり飲むんだよ」
そう言い謎の人物が部屋を後にする。
「ありがとうございま...行っちゃった」
(折角の好意だし有難く頂こう)
ゴクッ
彼方の口の中に広がった味は彼方が良く知る味だった。
(あ、オレンジジュースだ。久しぶりに飲んだなぁ)
(それにしても此処どこだろう)
辺りを見渡す。
まず目に入ったのは照明。ひし形の照明が部屋を明るく照らしている。
そして表面が曇りガラスで作られたスタンドミラー。
部屋の1面には外国語であろう言葉が彫られているように見受けられる。
最後に何の変哲もない気の机と椅子がポツンと存在する。
(それにしてもこのベッドふかふかだなぁ)
ベッドの横にあるキャビネットにコップを置き横になる。
「お待たせ。口に合えば嬉しいけど」
「いや、その、大丈夫です」
謎の人物が丸盆に料理を沢山のせて傍に座る。
「大丈夫なものか、しっかり食べないと駄目だよ」
「あ、はい」
(口に入る物なら食べられるって意味で言ったけどまぁいっか)
スプーンで料理を掬い彼方の口元へ持ってくる。
「ほら、口開けて。あーん」
「え、ちょちょちょっちょっちょちょっと待ってください」
「大丈夫です。自分で食べられます」
「まだ1の鐘くらいなのに偉いね。でも、食べる順番があるから私が食べさせるよ」
彼方は半ば強引にご飯を口に詰め込まれるのであった。
窓の外は冷たい水底のように昏く、外の景色を隠していた。
2
次の日。
漸く白んだ空。
光が彼方の顔を照らし、眠りを妨げる。
「うぅん...カーテン閉めたはずだけど...」
「閉めてない!ここ人の家だ!」
毛布を跳ね除けベッドから飛び起きる。
(なんだかんだで一晩お世話になっちゃったー。お礼言ってさっさと帰ろう)
彼方は扉まで歩いて些細なことに気づいた。
(ここの扉デカすぎない?ドアノブの位置上すぎでしょ!?)
そうツッコミつつ扉を開け、廊下に出る。
廊下はカーペットが敷かれ、窓からは朝の光が差し込んでいる。
彼方が歩みを進めると水槽が見え始め、図鑑で見たことも無いような魚や動物が顔を見せる。
「こらこら。そっちは危ないよ」
振り返ると昨日の謎の人物がこちらに向かってきていた。
「いやその私の服を探してまして...」
「捨てたよ。ボロボロでとても着れる状態ではなかったから」
「え!?捨て、え?」
「ほら、部屋に戻って。昨日の果実水飲んでゆっくりしよう?」
謎の人物がしゃがみ彼方と視線を合わせる。
まるで小さい子供と話すときの仕草だ。
(うひゃ~この人でっか!身長何メートルあるの?)
「いやでも親が心配しますし...」
「はぁ...見え見えの嘘は駄目だよ。私が親代わりになるから、まずはその虚言癖を治そうね」
そう言い、謎の人物は彼方を軽々と持ち上げる。
(ハァァ!?私ろくじゅ...違う違う。私55kg!力やばすぎでしょ!)
「部屋に戻ったらあなたの事教えてね~♪」
(ちょっと!誘拐ですよこれ!ヤダ怖い怖い怖い!)
「こーら暴れたら危ないでしょ。あ、今日はいい天気だよ~ほら」
謎の人物が窓を開け、彼方に外を見るように促す。
(え、どこ。ここ...)
彼方の眼前に広がる景色は日本とはかけ離れた景色であった。
存在感を放つ大きな教会、アスファルトのアの部分が微塵も感じられない道。
鳥でも飛行機でもヘリコプターでもない飛行物体。
そして、ゲームやアニメの中でしか見たことない、コスプレが如き姿をした人々。
「いい天気でしょ?今日も中央大陸は平和だね~」
(ちょっと!ほんとにどこなのよここーーーー!!!!」
「ぎゃー!!耳元で騒がないでー!」
「あ、ごめんなさい」
(心の声が漏れちゃってた...)
「ここは王様の城。ほら部屋に戻るからね」
(王様~?もう訳分かんない)
彼方は考えるのをやめた。
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