神との契約ー楯の目

フリドール

終わらないチュートリアル編

1話-プロローグ

1


2022年/―月/―日/01時04分


「はぁ...学校行きたくないなぁ...」


コンビニに夜食を買いに行った帰り道、自然と口から零れた。


友達いない歴6年、中学デビュー失敗を高校卒業間近まで引きずり、ぼっち生活。

勉強はぼちぼち頑張っていたけどアニメやゲームの魅力に勝てずにのめり込んで成績は中の下まで落ち込んでいた。


「あ、新規ダンジョン今日からだっけ」


ソシャゲのガチャを天井まで回し、虚無に支配された瞳に火が灯る。


「よし、限定も引けたし気合い入れるか!」


今日が金曜日で良かった~。上機嫌でネトゲにログインする。


SDMMORPG―ソウルダイブMMORPG リーサルアーカイブ


今年で20周年を迎える大人気MMORPG。まるで自分がもう1つの世界に来たみたいに、リアルなグラフィックでプレイ出来るVRMMORPGだ。


「お、桃ぶるさんようやく来た!」

「ごめーん、仮眠取ってた><」


桃ぶる、桃色ブルドックという名前がゲームでの私の名前だ。

ギルドの皆からは桃ぶると呼ばれている。


「早期攻略組はもう初めてますよー」

「よし、貢献度報酬も深層ボスも全部とっちゃおー!攻略組はカフェインと攻略アイテム準備してダンジョン前集合!」

「よっしゃー!」「待ってましたー!」


ギルメンの皆は今日もやる気満々!ギルマスとして頑張っちゃうぞー!



2



「お、今回は人が多いね~(; ・`д・´)」


珍しく早期攻略組以外もダンジョンに入っていく姿が見える。普段は情報が出揃ってから攻略する人がほとんどだが、今日の光景は以上だ。


「20周年記念ダンジョンだから報酬美味いんすよ」

「今日は新人も参加してんすよ!」


新人がギルドに入るのは珍しくないけど攻略組に入るのは珍しい。


「この新人めちゃ強いんすよwwww」

「グラフィックアップデートが来て復帰したらしいよ」

「復帰勢か~よろしくね(*´▽`*)」


挨拶しつつステータスを見る。


名前:探し中

レベル:190 性別:神 誕生:1月1日 焔座 

メイン職業:閃撃者―レベル30

サブ職業:剣士―レベル20 / 傭兵―レベル20

     ???        / ???

     ???       / ???

     ???       / ???


(うわ、私でも知らない職業6つ持ってるじゃん。それに閃撃者って何!?)


「よろしくお願いしますね。ギルマスさん」


少年のように見える男はにこやかに笑いかけたが、目はこちらを見定めるような目をしていた。



3


「A班休憩ー!多分もう少しで早期攻略組に追いつくから英気養っといてー!」


5時間に及ぶダンジョン攻略。例年通りならばダンジョンは10階層で構築されており、クリアには数日かけなければならない。

情報が出揃ってしまえば3時間程度でクリア出来てしまうのだが、皆と試行錯誤して攻略する時間が好きなので早期攻略をしている。 


(残りの4班にも休憩するように言っておこうかな~)


「ギルマスさん」

「どうしたの?バフが噛み合わなかったりした?」


先ほどの新人が私に話しかける。


「いいえ、完璧です。僕が使うスキルの事は知らないはずなのに貴方は完璧なタイミングでバフをかけてくれました」

「ほんと?長い事魔法職やってるし勘が冴えわたってるのかな!(≧▽≦)」


(良かった~見たことが無い職業だけど何とかなるもんだな~)


「ギルマスさんは毎回早期攻略しているんですか?」

「そうだよ~。自慢だけど、初回クリアはうちのギルドで独占しているのだ!」


最大手ギルド "紅の帰り道" の前ギルマスが戦闘狂なのもあり、ダンジョンの初回クリアの名前には私のギルドの名前が刻まれている。


リアルが多忙になった為、人間関係が良好かつ長年ギルドに在籍していた私にギルマス権限が移ったのだ。


私は折角だからとギルドの名前を刻むありもしない風習を受け継いでいる。


「それは凄いですね~。ギルマスさんはこっちが現実だったら良いな~とか考えたりはしませんか~?」

「あはははは!何回も思ったよ。現実よりこっちの方が楽しいもん!」

「それを聞いて安心しました」


少年のような男は深淵のような瞳を開けて心底嬉しそうに言葉を紡ぐ。


「今から雷が落ちてピリッとするけど我慢してね」

「え?」


(急に何を言い出すんだこの人)


「入念な審査の結果、僕の世界に招待することにしたよ!それじゃあおやすみ、蒼園彼方そうえん かなたさん」


徐々に視界がホワイトアウトし、意識が薄れていく。


待ちきれないとでも言いたげな楽しそうな姿が見える。


それが私―蒼園彼方が今世で見た最後の景色だった。



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