第51話:ライオンの前

「エビいれよ♪」

魚広場に着いた、あやかちゃんが楽しそうに提案する




「お、エビ良いね~♪」

加賀君が賛成



「じゃあ、大きめので♪」

自分も賛成




「あと、この前食べたみりんのアナゴも入れたいな♪ここにも置いてあるかなぁ?」

あやかちゃんが次々と提案していく。

少なくとも、この女の子のグループではリーダー的存在




「じゃあ、あのデカイ”たこ”とか入れるか?」

っと自分が提案



「え~、やめようよ。大きすぎっ」

っと、あやかちゃんに断られる自分



「あ、そう・・・」

ちょっと寂しい自分・・・




んで結構、海鮮を買う自分たち


「じゃあ、向かうよ?」

っと、敏君の車に乗り込む




魚広場を離れ、しばらくすると緑一面の

一本道に出る。

そして、しばらく進み坂道を上っていくと

目的地のバーベキュー場に着いた。

ここは、アスレチックやバンジーなどもあり、バーベキュー以外も色々と遊べる場所だ



「おーっし、付きましたよ。降りて降りて♪」

皆が、車から降りだす


敏君の車は、自動でドアが開く


「あ、すごいね~」

っと、後ろの席から降りた、あやかちゃんがまた驚く。

さっき、魚広場でも驚いてたような・・・?

(この当時は目ずらしめの機能だったので自分も最初は驚いた)


降りたとき、更にセミの鳴き声が大きく聞こえる。

真夏のような場所だった。



「わ、水がこぼれてるよっ」

自分が持っていた、エビの入った袋から水が漏れていたことに気が付く

エビのヒゲが袋を破ったみたい・・・



「敏君の車、濡れちゃったかな?」

っと、心配する自分



「あ、いいよ。いいよ。」

っと言う敏君。寛大だ




バーベキュー場に付いた自分たちは、役割別にわかれた


あやかちゃん達、女の子は肉や海鮮を切る係り


加賀君は、火を炊く係り


自分と、敏君は・・・・お茶をくむ係り・・・




お茶を用意するだけだったので、

すぐに任務を終える自分と敏君。


加賀君は、炊いている火を、一眼レフカメラで撮影していた。

(加賀君は、カメラも趣味と実益を兼ねてやっている。この日も持ってきていた。)


それを、しばらく見る、自分と敏君



ちょっと、女の子たちが気になったので、水場に行く自分


水場では、あやかちゃん達が肉や海鮮を切っていた


「お、あやかちゃんが料理してるじゃん」

っと、少し冷やかし気味で言う自分

でも、初めて料理っぽいことをしている

あやかちゃんを見て嬉しくなっていた



「も~、ただ切ってるだけだよ。

  もう少しで終わるから待っててね♪」

包丁片手に言うあやかちゃん


なんかいいなぁっと新鮮に思う自分



あやかちゃん達が、切った食べ物を持ってくる。順に焼いていき、お茶でかんぱいをする


毎回思うが、自然の中で食べる食べ物はうまい。更に好きな人と一緒だと尚うまい


最後の方では、定番の鉄板で焼きそばを作る。これがまた、うまい


お腹いっぱいになった自分達

談笑しながら休憩し、その後アスレチックの方に向かう



子供用かと思っていたが、かなり本格的な造り。

ロープにつながれた棒をつかんで、

川を超えて着地するアスレチックは結構勇気がいった


女の子達は、アスレチックをスルーしていったが、あやかちゃんだけは、負けず嫌いで一生懸命、自分達男子の後をついて来ていた。

そんな、あやかちゃんが可愛くて大好きだ


そんなこんなで、アスレチック場の最後に休憩所があったのでかき氷を食べた



そして、ほど良い時間が来たのでバーベキュー場を後にし

途中、あやかちゃんの提案で、めずらしい鉄板で作るアイスを食べれる所によってから

一人暮らしの加賀君の家に行った。


そして、しばらく加賀君の家で遊んだ後、

駅まで敏君と一緒に、総合駅へあやかちゃん達を送りこの日の会を終えた・・・






何だかすごく楽しい夏休みのようだった・・・


本当にすごく・・・






















このバーベキューの数日後、

自分は”秋の新作”を買った

今度ずらした誕生日の日、

あやかちゃんに渡すために・・・


喜んでくれる顔を想像しながら・・・





























また、数日が経った土曜日の夜

いつものように、あやかちゃんが飲み会の帰りに迎えに来て欲しいと言うので

二越前のライオンの近くに車を止めて待った




時間は夜中の11時

待ち合わせの時間


まだ、待ち合わせ場所に来ない

あやかちゃんに電話をする自分


トゥルルルルルルウルルルルル


トゥルルルルルルウルルルルル


トゥルルルルルルウルルルルル



何度かコールしたが、あやかちゃんは電話に出ない


しばらく、待つ自分・・・




夜中なのでいつもはにぎわっている繁華街もたまに人が通る程度


遠くの方で酔っ払いが叫んでいる



時間は夜中の11時20分をまわる


もう一度、電話をする自分



トゥルルルルルルウルルルルル


トゥルルルルルルウルルルルル


トゥルルルルルルウルルルルル






・・・やっぱりつながらない


そして、またしばらく待つ




すると、車のインパネの上に置いていた携帯がブルブルと鳴り出す



あやかちゃんからだ


電話を取る自分


「あ、もしもし。あやかちゃん」



「あ、コウちゃん。ごめんね、遅くなって・・・」



「あ~、いいよいいよ。もう近くに居る?」



「うんん、ごめん。まだ終わってないの・・・」



「そうなんだ、いつ頃終わりそう?」



「あ、ちょっと待って。またかけるからっ」

っと、電話を突然切るあやかちゃん


ん?っとなる自分


しばらく待つ自分



20分ほど経過する・・・



何となく少しだけ、不安になる自分


あやかちゃんに電話をする



電話に出ないあやかちゃん



また、しばらく待つ自分



更に10分程して、あやかちゃんから電話が掛かってくる




「ごめんね。え~っと、今、実は凄く盛り上がっていて・・・」



「うん・・・」



「今から、二次会に移るんだって。

    っで、私もちょっと一人で抜けられない雰囲気なの・・・」



「え~、そうなんだ・・・」



「・・・うん。ごめんね」



「じゃあ、終わるまで待つよ。車で寝てる」



「え、コウちゃん。全然終わりそうも無いから、帰って」



「や、いいよ。いいよ。長くても3時間位でしょ?」




「いつになるか、分からないから・・・」



「いいよ。寝てればいいから」



「本当にいつになるか分からないから、今日は帰ってっ」



強く念をおされて言う、あやかちゃんに

「・・・うん、分かった。じゃあ、今日は帰るよ・・・」

っと、ものすごく寂しい気持ちで言う自分



「うん、今日は本当にごめんね。じゃあまたね」

と電話を切る、あやかちゃん




夜中の11時に呼び出されて、帰ってと言われる自分・・・

”迎えに来てって言われたから来たのに・・・”っと少し思いながら、凄く寂しい気分になる自分・・・


少しだけ、窓を開けていたせいか、寒くなる車内、秋の空気を感じる・・・








二越前のライオンをぼーーっとしばらく眺める自分・・・






たまに通りすぎる人達を何人も見送り、

冷たい空気が車内を冷やしていく・・・










「第52話:ココロの声」

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