第45話:涙のわけ

あやかちゃんが泣いている・・・





「あやかちゃん・・・大丈夫?」

車に乗り込みながら、あやかちゃんの顔を覗き込む





「・・・うん」

あやかちゃんは、両手で顔はおさえたまま




「・・・あや」

もう一度、声をかけようとすると




「うん、何でもないよ(笑顔)」

っと、涙目の笑顔で顔をおさえていた両手を下ろした




「・・・」

突然の笑顔で、何も言えない自分・・・




「ごめんね。

 そうだ、ワラビ餅まだ残ってるよ食べよ、食べよ♪」

と言い、またワラビ餅を食べだす、あやかちゃん




「うん、うん」

っとつられて、自分もワラビ餅を食べだす




「私、昔からワラビ餅、好きなんだ♪」

と言いながら、ワラビ餅を食べるあやかちゃん




「うん、僕も昔から好き。

 昔は、家で作って食べるくらい好きだったよ」

何故か、さっき、あやかちゃんが泣いていた事について聞けない自分




「そうなんだ、私も作ったことあるよ♪」

何事もなかったように、ワラビ餅を食べながら談笑する二人

ワラビ餅も無くなり、


「じゃ、すすもっか」

と、その場を出発する




とは言っても、まだまだ花火渋滞は続いている

ゆっくりと花火大会周辺を通り抜け、少し遠回りをしながらも大通りに出る



その、車内で

「今日、何に食べよっかな~♪」

運転しながら、今晩の食事場所を考える自分



「うん、そうだね・・・」

なんとなく、元気の無いあやかちゃん



「そうだな~」

と言いながら、元気の無いあやかちゃんが気になっていた。

さっき見せた、涙のわけも・・・




花火渋滞も大通りに出てしまえば、ほとんど影響が無く

スムーズに進んでいた




途中、信号が赤になり止る車



あやかちゃんの方を見る自分



ハンカチで目をおさえる、あやかちゃん・・・




また、泣いている・・・?



「あ、あやかちゃん・・・。どうしたの?」



何も言わないあやかちゃん



「大丈夫・・・?」

また、泣いていることにびっくりする自分



「・・・うん。グスン」


信号が青になるのですすむ、車



「なんか、悪いことしたかな。僕」

涙のわけを知りたい自分



「うんん、ごめんね。さっきから私・・・」

顔をあげる、あやかちゃん



「あやかちゃんどうしたの?」



「ちょっと最近、涙もろくて・・・

 病気みたいなもんだから気にしないで、コウちゃん」





「あの・・・、理由聞いてもいい・・・?」

と言われても、気になる自分




「・・・うん」

と言う、あやかちゃん



「それって、坂智さんのことで泣いてるの・・・?」

なんか、的外れの様な気もしたが、

今、一番の恋の宿敵のことで泣いているのか、気になった・・・




「うんん、全然違うよ。もう、坂智さんとは最近、連絡取ってないよ。」

と聞き、安心する自分




「そうなんだ。じゃあ・・・。」

てことは、やっぱり自分のこと・・・。さっきの”奥様”の電話・・・



「うん・・・」




「さっき、電話してたこととか・・・?」



「うん、それもある・・・」

と言う、あやかちゃん



「それ以外も・・・・?」



「なんか、コウちゃんのこととか、

 将来のこととか考えてたら涙が出てきちゃって」

と言う、あやかちゃん・・・



「そうなんだ・・・」

”そうなんだ”じゃねーだろっ!俺!っと自分ツッコミをしながらも

気の利いたことが言えない自分が情けない・・・

(あぁ、言って!気の利いたこと言ってくれ!頼むから!この時の自分!一生後悔するぞ!本当にタイムリープ出来るもんなら2022年の今からそちらに思考だけでも飛んでいきたいよ!バカバカバカ!頼むよ・・・言ってくれよ・・・)








「・・・うん」




「や、あ、うん・・・。」

やっぱり、気の利いたことが言えない自分・・・情けない・・・




「・・・。」

何も、言わないあやかちゃん



静かに、車はすすむ





「あの・・・ーえ」

何かを言おうとする自分


本当は、”なに泣いてるのっ!僕が絶対、幸せにするから

 泣かなくても大丈夫だよ”っと言いたい自分。

でも、言えない自分。

苦しいとても苦しいどうしようもない気持ち




しばらく、間の空く車内






と、不意に

「コウちゃん、もう大丈夫だよ!ごめんね

 お腹すいたね~。何食べる♪」


と、急に元気なフリをするあやかちゃん




「え~、あぁ。何食べよっか・・・」










あやかちゃんの全てを包む事が出来ない自分が・・・








・・・泣けてくる・・・



(今も泣けるよ)







「第46話:隠し事」

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