SS#2 女騎士とラブラブデート大作戦



[時系列]結婚式後〜冒険者活動前



「普通にラブラブデートがしたいです」



いつだかと同じように全裸土下座をキメる女騎士が居た。非常に無様。



「ラブラブデート……?よくしてるだろ」



全裸で首輪にリードつけて夜の街を2人でラブラブデートとか頻繁にやる。四つん這いになり、目をハートにして、だらしなく舌出してヨダレ垂らして大喜びなのにね女騎士。


ちなみにちゃんと《透明化》を使ってるので周りに俺たちのラブラブデートはバレてない。



「旦那様。アレはデートでは無く散歩です」



そういえば、結婚して以来。女騎士の俺の呼び方がご主人様から旦那様になってる。まぁ、呼び方なんてなんでもいいから、どうしたということでもないが。



「普通のラブラブデートがしたいんです!お願いします!何でもしますから!」



女騎士の何でもしますほど安っぽいものもない。言われなくてもなんでもしてもらうし、やらせる。


でもまぁ、爛れた生活をしてはいるが、そういった普通の事はなんやかんやでしてなかった気がする。


夢見る少女をこじらせている女騎士だ。そういった願望もあるのだろう。



「ちなみにラナの言う普通のラブラブデートって、どんなん?」


「そうですね。普通に待ち合わせして2人で腕を組んで街を散策したり、可愛い服を選んでもらったり、ラブロマンス劇をイチャイチャしながら見たり、美味しいスイーツをあーんし合ったり、お花畑で追いかけっこしたり、夜景の綺麗な場所で2人で愛を囁きあったり、そして最後に高級宿屋で普通のイチャラブして朝チュンしたいです」



概ねわからなくもないが、花畑で追いかけっこってなに?バカなの?


何にしても特に拒否する理由もなかったので了承した。



◇◇◇



翌日。


朝起きると「9時に噴水広場で待ち合わせ」と書き置きを残して女騎士の姿が消えていた。


俺はその書き置きにしたがって9時ピッタリに着くように調整して噴水広場に到着した。


そしてそこには遠目にもわかる異質な存在が立っていた。


純白の魔法少女みたいなフリフリ衣装に身を包んだ三十路のババアが夢見る少女の様な様相で待ち人を待っている姿があった。



きっつぅ……。



え?嘘でしょ?俺アレに話しかけんの?待って、通行人が明らかにヤバい奴だから関わったらアカンと目を逸らしながら遠巻きに歩ってるやん。


まさかとは思うがアレで朝からあそこに居たの?なんで誰も通報しないの?おまりさんあいつです。ヤバい薬キメたアッパラパーがあそこに居ます逮捕してください。


アイツには羞恥心というものは無いのか……俺が徹底的に羞恥心をぶっ殺したのが原因か?となるとあの化け物を産んでしまったのは俺の責任ということか。よし自首しよう。



「あっ!ダーリン!」



不味い。奴に俺の存在がバレた。


満面の笑みで手を振りながらこっちに近ずいてくる。女の子みたいな走り方で。なんだその走り方。嘘つけや、おまえ普段は陸上選手もビックリな綺麗なフォームで走るだろうが。


それにダーリンって、ダーリンって!やめろ!そんな恥ずかしい呼び方すな!通行人が一斉にこっち見てるじゃねぇか!



「えへへ!おはよ!ダーリン!」



だきっ。走ってきた女騎士に抱きつかれた。もうダメだ……逃げられない……。つか誰コイツ。もう別人になってるよぉ。



「時間ピッタリだったね!」


「ま、待ったか?」


「ううん!私も今来たところだよ!ちゅ!」



言うや否や頬っぺにキスしてくる女騎士。通行人の皆さん全員がうわぁ……って目で見てくる。俺も、うわぁ……だよ。


これがこいつの言う普通のラブラブデートかぁ。新しい羞恥プレイの間違いかなんかだと思いたい。


キャッキャッとはしゃぐ女騎士。心底楽しそうだ。こいつの羞恥心はとっくに死んでるんだな……。


もういいや。死なば諸共。俺の羞恥心もこいつと共に心中しよう。羞恥心おまえを殺す。死ね。


俺は振り切った。



「そんなこと言って結構待ったんじゃないかハニー?」


「そんな事ないよ!ちょっと……ちょっとだけ楽しみで早く着いちゃっただけだから!」


「そうかやっぱり待たせちゃったんだな。それならその穴埋めをしないとな」


「あっ……!ん……!」



女騎士の顎に手を添えクイッとやって唇を重ねた。短く触れ合うだけのキスをする。



「もう……!ダーリンってば!こんな人前で……!」



羞恥で頬を薄く朱に染めて、顔を逸らすその表情は恋を知ったばかりの乙女のそれである(3〇歳)


わぁ。かっわいいー!



そして地獄の普通にラブラブデートが始まった。



◇◇◇



「ねぇねぇダーリン。今日のデートは何処に連れてってくれるのー?」



俺の腕に抱きついてグイグイと脂肪が極限まで落とされ引き締まったAカップの胸を押し付けてくる。悲しいかな女騎士のそれはもはや胸筋。


何処に連れてってくれるのってデートプランは全部考えて来たんじゃないの?おまえが考えてくると思って俺はノープランなんだが?彼氏にリードされたい乙女心ってか?それなら先に言っとけや。



「とりあえずしばらく2人で歩こうかハニー」


「うん!」



無邪気な笑顔で元気のいい返事。俺の腕を抱きしめる力が強くなる。強すぎてちょっと痛い。



特に目的もなく王都を歩いた。銀月龍襲来事件から王都の至る所で花やらなにやらが咲き乱れていて、花の都と言う言葉が脳裏を過ぎる。


ただ歩いているだけなのに何が楽しいのか女騎士はニコニコしている。


まぁ、でもこうして目的も無く嫁と2人でまったり散歩というのも悪くない。寝ても醒めてもスケベばかりだったから。逆に新鮮味があった。


道行く人々に奇異の視線を向けられてるが気にしない気にしない。



このあとめちゃくちゃ普通(?)にデートした。



◇◇◇



「ねぇねぇダーリン!これ似合ってるかな?」



服屋。女騎士が試着したのはフリフリゴテゴテのゴスロリ衣装。それを身にまといフワリと一回転してみせる。悲しいことに致命的なまでに似合ってはいない。


練習したのかってぐらい様になっている立ち振る舞い。実際、部屋で1人ファッションショーとかやってそうだな、コイツ。



「うん。凄く似合ってるよハニー!でもハニーにはこっちの方がいいかな!」



俺は女騎士に、紐――否、スーパーマイクロビキニアーマーを手渡した。そして容赦なく着させた。ムキムキスレンダーなツルペタ貧乳にほぼ紐のマイクロビキニは大変お似合いでめっちゃ興奮した。


よし、この衣装でデート続行!と思ったが泣きながら睨まれた。その表情にさらなる興奮を掻き立てられたが、今日はやめといてやろう。後日、絶対に着させて街中連れ回すが。



◇◇◇



「わぁ……!」



劇場。この異世界にはテレビも無ければ映画などある訳もなく。となれば市民のもっぱらの娯楽は劇であった。


演目『破滅の魔王と白馬の勇者』


世界を混沌に誘う魔王が現れ、お姫様がその魔王に攫われてしまう。愛する姫を救い出すべく立ち上がった勇者は苦難を乗り越え魔王を倒し、お姫様を救い出す。


しかし、瀕死の魔王が放った最後の一撃で勇者も命を落としてしまうが、最後はお姫様のキスにより勇者は蘇生しハッピーエンド。


その後2人は末永く幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし。



ベッタベタのベタベタやないか。王道中の王道。使い古されたテンプレ内容だが、これが意外と人気がある。



万人受けするストーリー。王道はみんなに愛されているからこそ王道と言われるのである。


出演者の名演もありわりと楽しかったが、隣で目をキラキラさせて興奮気味に舞台に食い入る女騎士を見ていると若干、冷めた。



「面白かったねダーリン!ねぇダーリン……ダーリンは私が攫われたら助けに来てくれる?」


「はっはっはっ!何言ってるんだいハニー!ハニーはお姫様みたいに簡単に攫われるほどヤワな女じゃないだろ?」



身体強化無しの素のフィジカルだけで言えば女騎士は俺を上回る。普通に殴って岩をも砕く。女騎士はピー〇姫というよりド〇キーである。



「むぅ……」



女騎士はむくれっつらで頬をプクーと可愛く膨らませる。可愛いというよりはいろいろと可哀想である。



「それにお前の事は誰にも攫わせやしないよ、ラナ姫」


「……ッ!もうっ……!旦那様は不意にそういう事を言う……狡いぞ……」



◇◇◇



「はい!あーん!」



昼時、小洒落た喫茶店のオープンテラスの1席を陣取って女騎士と対面していた。


バカップルもドン引くぐらいにクッソ甘い空気を出しながらイチャラブしていた。


食べさせ合いっこは基本。カップル御用達の2人でひとつの物を飲むアベックストロー備え付けの飲み物を2人で飲んだりしている。


相変わらず周りからの視線は痛いがもう慣れた。


ああ!女騎士は可愛いなぁ!(ヤケクソ)



そんな可愛い女騎士はデザートで食べていたイチゴのショートケーキを見ている。


唐突にそのショートケーキの生クリームを少しだけ指ですくった。何をするのかと見ていたら、あろう事か指についた生クリームを俺の頬に塗る。



「もうっ!ダーリンったら!頬っぺに生クリームがついてるぞっ!ちゅっ!」



それをセルフですんなッッッ!!!



自分でつけた生クリームを自分で舐めとる奴なんか初めて見たわッ!


オッケーわかった。おまえがその気なら倍返しだッ!



俺はショートケーキに乗ったイチゴを摘み、それを女騎士の唇に押し付ける。



「おっとこんな所に美味しそうなイチゴが――……」


「んんんーーーっっっ!!?んちゅ……じゅるっ……んくっ……」



イチゴの上から唇を押し当て奪い取る。それを口内で潰しながら舌を使って女騎士の口の中に押し込みながら咀嚼する。広がる酸味と甘み、それと2人の唾液が絡まり、なんとも官能的な味がする。


ぐちゃぐちゃと音を立てて絡まる舌と舌。お互いを貪るようなディープキス。女騎士の表情はトロンと蕩けて見慣れたメスの顔へと変化していく。


しばし堪能したあと唇を離すとツーッと糸が延びて途切れた。



「ご馳走様」


「もう……ダーリンったら、こんな所で大胆なんだからっ……!」



メス顔で満更でもない女騎士であった。



そして、俺のムラムラが限界に達した。



◇◇◇



人が行き交う大通りの端に身の丈ほどの謎の立方体が出現した。


ガラス張りのようなその立方体ではあるが外面は白く濁っていて中の様子は見えない。


街行く人々はそれを不審に眺めたり、人によっては触ったりしているが、それの正体はまったく分からない。


その立方体を囲むように僅かばかりの人だかりが出来始めていた。



何を隠そう、この立方体。外側から中は見えないが、内側からは外が見えるガンマくんの発動したスケベスキル《魔法鏡(マジックミラー)》であった。




◇◇◇




「つーん」



女騎士がスネた。



ムラムラしてヤッた。反省はしてない。凄く気持ちは良かった。



「そもそもラナが可愛いのがいけない。おまえが可愛くなかったら俺もムラムラしなかったからこんな事にはならなかった」


「……そ、そうか?今の私は可愛い、か?」


「その年齢でその服で女の子みたいに周りを気にせず頭ん中お花畑ではしゃぎまくるドギツイ所が最高に可愛い」


「それは褒めているのか……?」



いや全く、これっぽっちも褒めてはないけど、褒めてる。



「おまえと結婚してよかったよ」


「また旦那様はそういうこと言う……」



ふいっとそっぽを向きつつも女騎士は俺の手を取り歩き始めた。



「多少時間を取られはしたが、まだデートは終わってないからな!行くぞダーリン!」



◇◇◇



「うふふ!捕まえてごらんなさーい!」


「ははは!待てこいつぅー!」



お花畑で追いかけっこなう。



あー……ちっちゃい女の子がこっち指さしてんなー。ママさんがすかさず女の子の目を隠した。見ちゃいけません的な?うん、お願いだからなるべく見ないで欲しいなぁ……。


少年が俺たちを見て笑い転げている。このクソガキが!ケツ穴ぶち犯して一生モノの傷刻んでやろうか、ああん?こちとら現在進行形でメンタル公開凌辱中だぞ!はぅ……もう許してぇ……。



「ほら、捕まえたぞー」


「キャッ!捕まっちゃったっ」



キャッじゃねーんだよ!そのぶりっ子声どっから出してんだテメェ!



「もう離さないぞっハニー」


「うん!離しちゃイヤだからねっダーリン」



だきっ!



「ちゅっ!ちゅっ!」



こいつの強すぎるメンタルはどうなってるんだろうなぁやっぱりヤバい薬キメてんのかなぁとか考えながら女騎士とちゅっちゅっした。



◇◇◇



そんなこんなで俺はメンタルを公開凌辱されアヘ顔ダブルピースになりながら女騎士とラブラブデートを楽しんだ。ラナたんしゅきぃ。


気がつけばすっかり日も沈み夜の帳が下りている。



今は王都の中心にそびえ立つ時計台の上に2人で寄り添い会いながら夜景を楽しんでいた。



「満足したか?」


「うむ!そうだな!途中ちょっと脱線したが概ね満足だ!付き合ってくれてありがとう旦那様っ!」


「どういたしまして」



笑みを浮かべる女騎士。今が幸せの絶頂と言わんばかりの表情で、大層ご満悦である。



「そういえば、俺はこれから冒険者として活動して魔王討伐を目指そうと思うんだが、ラナはどうする?」


「ん?どうするとは?」


「いやなに、団長を引退した身だし、なんだかんだ言って歳も歳だろ?おまえがこれからも戦う必要は無いし、専業主婦になってもいいんじゃないかと思ってな」



女騎士(3〇歳)という事を考えれば身体能力のピークはおそらく過ぎている。これからは徐々にではあるだろうが衰えていく一方だろう。


それに女騎士の根底を支える一端であった『女神の加護』も失ったわけで。


ならばわざわざ危険に身を置かずともいいのではないだろうか?なんてことを思った。



「専業主婦か……あの私が専業主婦か……それも悪くないな……」


「どうする?」


「専業主婦……魅力的ではあるが、それは子供が出来てからでいい。今はまだ1人で夫の帰りを待つのは、少し、寂しい。それにまだまだ私は現役だ!全然、戦えるぞ!」


「そうか。わかった。でもあんまり無茶するなよ」


「ふっ……旦那様は私を心配するか?この守護神と謳われた元神殿騎士団長を?」


「おまえは女の子だろ?」


「あっ……はい……」


「何があってもラナは俺が守ってやるよ」


「うんっ……!」



それはあどけなさを残す幼い少女のように、女騎士は笑った。



「よいしょ」


「あっ……」



さらりと女騎士をお姫様抱っこ。抱き上げた女騎士が俺の首に両手を回して身体を預けてくる。


伝わってくる温もりが心地いい。ほんわかと心が温まる温もり。幸せを噛み締めるようにして女騎士を抱きしめる両手に力を込める。



「それじゃそろそろ帰ろうかラナ姫」



最後にそっと唇を重ねた。








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