#20 姫様に対する容赦のない雑な扱い
王都にある最上級宿。そこのスイートルームが勇者パーティーの王都での拠点となっていた。
豪華な内装、広いリビングダイニングに個室多数。なにより特筆すべき点はバカデカい浴室だ。複数人が一緒に入っても全員が足を伸ばせるだけのスペースがある。なにこれ暴れたい放題じゃん。
異世界と言えども、この世界には入浴の文化はあった。とはいえ一般人が利用できるのは共同浴場ぐらいなもので一般家庭で浴室が備え付けてあるのはほんのひと握り。
裕福層でもなければ維持費用ばかりがかかるので浴室を備え付ける余裕がそもそも無い。
それを鑑みるに巨大浴室付きスイートルームとか贅沢の極みである。1泊いくらかかるんでしょうね。そして、そこを拠点として常時借りている勇者パーティーは相当に稼いでいるか、勇者特権で国から出資されているかのどちらかだろう。わりとどうでもいいが。
そんな高級宿スイートルームの巨大浴槽にて俺と嫁たち――聖女ちゃん、女騎士、メストカゲにクソザコちゃんの5人と勇者パーティーの勇者、姫様、黒騎士の3人。
計8人が集まって全員で入浴していた。
円形の巨大な浴槽にぐるりと向かい合うようにして8人で輪を作っている。
俺の両サイドは女騎士とメストカゲが固め、女騎士の逆隣にクソザコちゃん。そして我らのビックボス聖女ちゃんは俺の目の前、というか足の上に俺に抱えられる様に位置取っている。
ここが私の定位置ですが何か?と言わんばかりである。何も文句は無いどころか大歓迎ですが何か?と言わんばかりの俺である。
お風呂ですからね全員が全裸です。そしてみんなピタリと身体を密着させてる。俺は聖女ちゃんを後ろから抱きしめている。
なんたる至高の極みッ!ふわぁ。聖女ちゃんの生肌スベプニやわこい。我が猛り棒が地獄の閻魔様が如く顔面真っ赤にして血管が浮かび上がらせておるわ。
閻魔様の好物は2つのもっちり巨大大福である。美味しそ過ぎて思わず頬ずりしちゃうね。ずりずり。
あ、ちょ、聖女ちゃんあかんて猛り棒を聖女ちゃんのやわこいやわこで包んだらあかん。今勇者様の目の前だから、いくら湯船が乳白色でよく見えないからって!え?先っぽだけ?それなら……あ、ちょ!根元までいってる!あっ、あっ、あっ……ふぅ……(賢者タイム)
そして、そんな我々5人に対面するようにして勇者を真ん中に両サイドに姫様と黒騎士が位置どっていた。
勇者ちゃんは自分には隠すものは無いとばかりに堂々と全裸であった。しかし目隠しはしていた。隠すところが違う気がする。しかしながら倒錯的なエロスを感じるね。わかってるじゃないか勇者ちゃん。とりあえず脳裏に勇者ちゃんの裸体を焼き付けた。
対して姫様と黒騎士は身体にタオルを巻き付けて肌を隠して恥ずかしそうにしているが、もうすでに2人とも全身余すとこなく視姦している。大丈夫。2人の裸体は既に脳内に焼き付いてるから。
2人は勇者ちゃんとは違い、オペラマスクと鉄仮面を外して素顔をさらしていた。あの奇抜な見た目とは裏腹に素顔はどちらも可愛いかった。
そんな感じで8人で親交を深めるために入浴中である。
「な、なんでワタクシが殿方と混浴しなければならないのですか……もしもがあったらどう責任をとるおつもりなんですか?」
「責任とるんで、していいですか?」
「そういうことじゃありません!」
オペラマスクを外して素顔になったホワイトローズさん改め第4王女ソルト=リーク。彼女の素性は案の定ガチモンのお姫様だった。お転婆な彼女は城を飛び出し勇者の助けとなる為に勇者パーティーに身を置いていた。
「まぁまぁ姫様落ち着いて」
「落ち着いてじゃありませんよセロ!だいたい何なんですかまったく!意識を失って目を覚ましてみれば彼らが勇者様のパーティーに加わる事になったなんて、まったくわけがわかりませんわ!」
姫様はおもらしと共に意識を失ってから、あれこれ終わるまで気を失っていた。わけがわからないのも当然だと思う。
「だいたいなんで意識を失ったのか……まったく思い出せませんわ」
「姫様……それは思い出さない方がいいかと……」
プンスカ怒る姫様を宥める鉄仮面を外した黒騎士改め王都の近衛騎士団長セロ=コラナ。お転婆お姫様の護衛兼勇者を補助する為に勇者パーティーに居る。
一応、女騎士とは違い現役の騎士団長である。王家の虎の子である近衛騎士団。その団長である彼女は言わずもがな相当の実力者である。
現役の女騎士が『守護神』と呼ばれた最強の盾ならば、黒騎士は『剣聖』と呼ばれる最強の剣であった。王都の防衛の双璧を成していた団長達である。
ちなみに黒騎士は三十路すぎの女騎士とは違いまだ若い20代前半である。それで近衛騎士団長の剣聖なのだから自力は女騎士より高いかも知れない。
「それに彼とリゼルさんはともかく何故ここに聖女様と元団長さんが……まさか彼が2人と結婚したという例のアレなんですの?」
「はい。そうですよ。ガンマ様が私の旦那様です」
「そうだな。旦那様が私の旦那様だ」
「なるほど……彼が例の「魔王を打ち倒すもの」でしたか?教会から発表があったものの、これといった情報も活躍も全く無く、聖女様は悪い男に騙されたと、もっぱらの噂だったあの方ですか……」
なんかそんなこともあったような気がするなー。確かに俺自身矢面にたって何かしたというのはこれまで無かった。むしろ積極的に隠してきた。
全ては俺を煽りに来るであろうメスガキちゃんをわからせるために実力は隠したかった。今のところメスガキちゃんが煽りには来てない。変わりにクソザコちゃんをわからせはしたが。
「しかし最初会った時から思っいましたが、このようななんの取り柄も無さそうな男の何が良いので?やはり聖女様も元団長さんも騙されているのではありませんか」
ピキリと場の空気が氷りついたような音が聞こえた。
「……ソルト様。ちょっとお言葉が過ぎるのではありませんか?」
笑顔の聖女ちゃん。その瞳の奥の深淵に暗い暗い感情が宿った。
「だってそうでしょう。何かしら秀でるものがあるのならまだしも、このうだつの上がらなさ。言葉巧みに唆されたのではないですか?今からでも遅くはありません。関係をスッパリ断った方がよろしいかと思いますわ」
なんだろう。この姫様の空気の読めなさと地雷を的確に踏み抜く能力は。俺だけならまだしも聖女ちゃん相手にそれはあかんて。
「そうですね……今なら……今ならまだ遅くはありません。私も聖女と呼ばれる身。床に額を擦り付けながら謝罪して今の言葉を撤回して頂ければ寛大な心で持って許しを差し上げましょう」
「はい?何故、ワタクシが謝罪しなければならないのでしょうか。本当の事を言ったまでですわ。イヤです」
心底訳が分からないと言った具合の姫様。
「勇者様」
確認するように聖女ちゃんは勇者を呼ぶ。勇者はそれに淡々と返事をする。
「弱肉強食。好きにするといい」
「そうですか。ありがとうございます」
聖女ちゃんは優しく微笑む。あかんなーこれは何言ってもダメな奴。余計な口出しはせんとこ。
「セロさん」
「は、はい……!な、なんでしょうか聖女様……?」
「手出ししなければ貴女には何も致しません。大人しくして頂けますか」
「ひぇ!?い、いや……!そそそそそれは流石に!ひ、姫様に危害を加えるというのなら黙って見ているというのは……!」
「危害?何をおっしゃっているのか分かりませんね。私はただちょっと小生意気なお姫様にガンマ様の素晴らしさを教えて差し上げるだけですので危害など加えませんよ?ただ少しばかり色に狂ってしまうかもしれませんが」
「そ、そうなのですか……それならば私は……」
「黙って見ていてください。いいですね?」
「は、はひっ!わ、わかりました!」
黒騎士は空気が読めた。聖女ちゃんの圧に屈っする。コクコクと壊れた機械の様に首を縦に振って同意の意を示す。
「さて。それでは他人の夫を蔑む愚かなお姫様に世の通りを教えて差し上げましょう。さぁ、ソルト様、貴女にガンマ様の洗礼を受けて頂きましょう」
浴室の床に転がる姫様を見る。
虚ろな瞳は虚空を見つめ光を失っている。
ボールギャグで口を封じられ、拘束具で身体の自由を失い、身体中が様々な体液で汚れている。
下から垂れ流す赤色混じりの白濁した液体が、ナニがあったのか雄弁に語っていた。
ち、違うんです!ヤッたのは僕ですが僕ではないんです!(?)聖女ちゃんが!聖女ちゃんがヤレって言うから!ヤレって言うのでノリノリでヤリました!(オイ)
はい。姫様のロイヤルまんまんとても堪能させていただきました。素晴らしかったです。今後も是非ともよろしくヤリたいですね。
あ、最初はガクガクブルブル震えていた黒騎士ちゃんが気がついたら熱っぽい視線で俺を――というか俺の息子ちゃんを見ている。
「セロ」
「な、なんだラナ殿」
「おまえとは立場上何かと衝突する事もあったが、私ももう騎士団長を辞して女の幸せを掴むことが出来た」
「そ、そうか……そういえば2人で飲みに行った時、結婚したい結婚したい言っていたものな」
「酔った私はそんなこと言っていたのか?いやまあそれは今はいい。私もいい歳だったからな。そんな願望はあったが心のどこかで諦めてもいた」
「ラナ殿ももう、さんじゅう「ゲホンゲホン」だものな」
「そうだ私もそんな歳だ。結婚して幸せな家庭を築くなど夢のまた夢だと思っていた。だがしかし旦那様と出会って私は幸せを掴めた」
「確かにあのラナ殿が結婚すると聞いた時は流石に私も驚いた。理想ばかりが高くて現実が見えていないラナ殿がまさか結婚出来ると思っていなかったからな」
「ぬぐ……!」
「なんにしてもちゃんと祝ってはなかったな。ラナ殿、改めて結婚おめでとう」
「あ、ありがとうセロ。それでそんな人生の先輩たる私からセロにアドバイスがある」
「アドバイスか?」
「そうだ。おまえから私と似たようなものを感じる。私の二の舞にならぬようにアドバイスをしてやろうと思ってな」
「わ、私はラナ殿と違って……まだ若いぞ?」
「ふん。そう言っていられるのも今のうちだけだぞセロ。私もおまえと同じ歳の頃には、まったく同じ事を考えていたよ。私はまだ大丈夫だと。これからいくらでも出会いはあるし。きっと自分とピッタリのいい人と出会えるとな」
「くっ……わ、私はそのようには……」
「セロ。おまえも姫様のお守りに仕事にと多忙であろう?そして私にはわかる。そんなおまえに出会いの場など無いし。ましてや唐突に自分の好みの相手に出会えるなんて事はまず無い。そんなことでは時間はあっという間に過ぎて私のようになる」
「ぐぬぬ。わ、私はラナ殿とは違う!そんなことにはならない!」
「そうか。それならばいい。私の心配も杞憂というものだ。10年後が楽しみだな」
「……なにが言いたいと言うのだラナ殿は」
「ここにチャンスがある」
「チャンス?」
「そうだ。チャンス。私の旦那様だ」
「彼が……?いやしかしラナ殿達の夫であろう」
「確かにそうだが。ウチの旦那様の器量は大きい。確かに少ししか関わりが無いなら心配もあるだろう。私も最初に会った時はなんなんだコイツと思ったものだ」
「ラナ。あとでお仕置な」
「ひゃい!楽しみにしてましゅ!」
「…………」
「ゴホン。まぁ、こんな感じではあるが……なんだかんだでウチの旦那様は優しい。お願いすれば大抵の事は聞いてくれるし、私の望むように接してくれる」
「そうなのか……」
「私は今、幸せだ。辛い時も苦しい時もあったが、今この幸せの為にそれらはあったんだなと思えるぐらいにな。ただ普通の女として愛し愛される今以上の幸せはないと思っているよ」
「ラナ殿……貴女は変わったな」
「変わったか。そうかも知れないし、そうじゃないかも知れない。どちらかと言えば私のメスの本能を旦那様に引き出されたと言うところだろう」
「メスの本能……」
「そうだ。私のウチに秘めたものを旦那様に何もかも引き出され、さらけ出されてしまった。だから変わったわけではない元から私はこうであったと。セロ。ここがおまえの人生の分岐点だ。過去の私の様な末路を歩むか、それとも――……」
「いや、そんな急に……そ、それに私がラナ殿のような人生を歩むとは限らないじゃないか……!」
「あの時こうしていればと思った時には手遅れだぞ」
「くっ……!確かに彼がただのどうしようも無い奴では無いのは先の襲撃の時に理解した。むしろ常識外れの力を持っている事も今ならわかるし、ラナ殿がこんな風になった事を考えると……しかしそもそも私の様な女っ気が無く可愛げの無い奴など願い下――」
「俺はそんな所、可愛いと思うぞ!」
「な、な、なっ!?可愛い……?私が……?」
「心配する事は無い。旦那様は基本的になんでもありだし、大体のことは受け入れてくれる」
「うっ……いやでもまだ出会って間もなくお互いの事をちゃんと理解しているわけでもない。こういう事は時間をかけて互いの絆を深め、ゆっくりと育んで行くのがいいのでは無いか?だからそんないきなりそんな事は……」
「身体を重ねる以上の互いを理解する行為は無いぞ。それに一度してしまえば、頭がふわふわになってわりともう全部どうでもよくなるぞ!」
「そ、それは逆に大丈夫なのか!?」
「大丈夫だ問題無い。なんにしても処女なんぞさっさと捨ててしまった方がいいぞ?歳をとるにつれて処女がバレると引かれるようになるし、陰口も叩かれるしな!」
「そ、そうなのか……?そ、それなら……」
期待や不安を抱えた目でチラリと黒騎士が俺を見た。これはGOサインですね!(?)
サッと手馴れた所作で黒騎士を押し倒した。
「へ?あ、いや、これは……!ちょ、ま、まだ心の準備が……!」
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