#19 勝負の行く末
人種の男女比率は男2割に対して女性が8割ではあるが、モンスターの雄雌比率は人種の真逆。
雄が8割、雌が2割だ。
モンスターは1部の強い雄のみが雌を娶り、孕ませる事が出来る。
人種は男性1人に対して複数の女性が侍りハーレムを形成するが、モンスターは1匹の雌に対して番となる雄は1匹のみ。
必然的にモンスターの雄は溢れる事になる。
果たして、その番を持てずに溢れたモンスター共はどうなるか?答えは簡単だ。
数が多い人種の女性を襲い、犯すのだ。
生き物に刻まれた生存本能のひとつ子孫繁栄。モンスターはどの種族よりも自信に刻まれた生存本能に忠実に生きる。
それがモンスター共が人の村や町を襲撃する真相だ。モンスターは自分の子を産むメスを求めている。
「《覗穴(ノゾキアナ)》」
親指と人差し指で輪っかを作り、それを覗き込むと目の前の光景とは別の光景が広がった。
48のスケベスキルがひとつ。
《覗穴(ノゾキアナ)》
指で作った輪っかに自分の見たい風景を投影する魔法だ。《次元穴》の映像だけの簡易版みたいなものである。そのお陰で低燃費且つ広範囲に渡って覗き見る事が可能になっている。
当然、女子トイレ、女子更衣室、女風呂などを覗くためのスケベスキルではあるが、今はモンスター集団の様子見をする為に使っていた。実につまらん。
テンションは下がった。女の子の着替え覗きたい。
王都を向けて進撃するモンスターの大群。ゴブリン、オーク、オーガ、コボルト、ウェアフルフ、グリズリーetc……
どいつもこいつも目を血走らせて、ヨダレを垂らしながら進んでいる。見るからに興奮状態にあるのは明白だ。
やはり全部、雄だな。雌は1匹もいない。
これなら容赦なくヤッちまって構わんだろう。
さてさて。勇者との勝負ということで1000体以上のモンスターを食い止めなければならなくなった。
負けたら勇者ちゃんにガンマ君の所有権が渡ってしまう。きっと酷いことされる!エロマンガみたいに!(大興奮)
ありっちゃありよりのありありじゃね?勇者ちゃん目隠ししてるけどなかなかの美少女だぜ?逆に目隠しがエッチな雰囲気を助長しててめっちゃエッチ。もう負けてよくね?
いやでもそんなことになったら聖女ちゃんに怒られるか……怒られるな。わざと負けるのはやめておこう。
王都を守る外壁の外に広がる大平原。普段は小動物系のモンスターがちらほらと居るぐらいの穏やかな場所だが、今はその雰囲気が一転していた。
遠目に迫り来るモンスターの大群は地平線を埋めつくす程。土埃をあげてこちらに向かってくる。
モンスターは王都を目指して真っ直ぐに進軍する。奴らは本能的に理解しているのだ。そこに獲物が、大勢のメスが居ることを。
これを食い止めるのはなかなか骨が折れそうだ。
しかしながら勇者との勝負は「モンスターを食い止める」事だ。なにも全員まるっと皆殺しにしなくてはならない訳では無い。そういう約束はしてないからな。
だったら俺にもなんとかなる。
俺にはリゼルのような最上級範囲魔法は使えない。高火力の魔法をバカスカ撃ちこんでモンスターを殲滅することは出来ない。
俺はハリングのようなドラゴン由来のインチキ地味たフィジカルを持ってはいない。力任せにぶん殴ってモンスターを蹴散らせはしない。
俺はラナのような守護神と呼ばれるだけの防衛力を持ってるわけではない。というかラナも女神の加護を無くして守護神と呼ばれたのも昔の話。今はただのメス犬。
俺にはロエちゃんの様に慈愛の精神を持ち合わせていない。モンスターを優しさで包み沈静化させることは出来ない。は?そんなこと出来ないだろって?ざけんなてめぇ!俺のロエちゃんに不可能なんて無いんだよ!ロエちゃんが白といえば白、黒といえば黒だ!モンスター共もロエちゃんを見れば土下座で許しを乞い願う!
で、なんの話だっけ?あ、そうそう俺には俺のやり方があるって話。
モンスターの1000や10000がなんだってんだ。可愛い女の子の為ならば!やってやれない道理は無い!それが男の子ってもんだぜ!
メストカゲから常時吸っている魔力。そして聖女ちゃんに散々ぶち犯されて俺の魔力量の上限もまた上がっている。流石に無限という程には程遠いが派手にヤンチャ出来るだけの余裕はある。
さて!やるかよ!
「《発情霧(エストレスフォッグ)》」
もはやお馴染み《発情霧》吸ったモノを性的興奮状態にする霧だ。それをモンスターの大群よりさらに広域を覆い尽くすように特盛盛大にぶちまける。
《発情霧》を吸い元々興奮していたモンスター達がさらなる興奮状態となる。進撃のスピードがあがった。ただただメスを求めて暴走するイキリダチ集団へと昇華する。
それを確認し、すかさず《転送》で集団の真ん中上空付近に移動し《魔法鏡》で空中に足場を作る。
「《誘惑(フェロモン)》」
48のスケベスキルのひとつ
《誘惑(フェロモン)》
他者を誘惑する甘い香りを放つ魔法だ。この匂いを嗅いだ相手は匂いを発した相手が気になって気
になってちょっとスケベな気分になる。
出来れば女の子に使いたかったが今回の相手はモンスター集団である。
魔力を盛大に込めて、全範囲すべてのモンスター達に届くように《誘惑》を放つ。
《誘惑》を嗅いだモンスター集団が俺の足元に集うように動いた。次第に広範囲にバラけていたモンスター達がひとつの塊となり始める。
よしここで最後の仕上げだ。
右手に《挟壁(スポッリウォール)》左手に《女体化(コンバージョン)》の二重詠唱。
そのふたつを融合させて完成する混成魔法。
「《ニョタイカベ》」
魔法の行使。非現実の権限。地面よりそそり立つのは無数の穴が空いた壁。それがモンスターの大群を覆うように展開する。
「はぁ……はぁ……」
荒い息ともに手を膝に着く。流石にこの大規模での魔法の行使は効くなぁ。魔力の大半を消費した。
なけなしの魔力で《転送》を使い。壁の外側に移動し、その場で大の字になってぶっ倒れる。
これが決まれば大丈夫のはず……!
広域に展開した《ニョタイカベ》でもってモンスターの大群をそのうちに閉じ込めた。これがただの壁だったなら、足止め程度にしかならなかったであろう。
だがしかし当然ながらただの壁では無い。《挟壁》《女体化》の効果を付随した特性の壁だ。
壁には無数の穴が空いている。丁度、ギリギリ通り抜けられそうな大きさの穴が。
《挟壁》穴を通り抜けようとしたモノを一通りスケベするまで拘束する不可侵の壁。
《女体化》対象を女体化するご都合主義魔法。
ふたつを合わせた事により、通り抜けようとしたモノを拘束し、女体化させる。それが《ニョタイカベ》だ。
壁の外に出ようとモンスター共は何も考えずに穴を潜り、そして拘束され女体化。
壁の内側に向けて突き出される多数の尻が壁のように折り重なる。
となれば後続の極限イキリダチ集団の行動はわかりきっている。我を忘れてその壁に挟まった尻に殺到する。
目の前にメスが居るなら犯す。
壁に挟まったモンスターは為す術なく後続のモンスターに再起不能になるまでされ、そして壁から開放される。
そしてまた新たなモンスターが壁に挟まり同じ末路を辿る。
それの繰り返しだ。
これぞ我が秘策!連鎖尻壁雌堕ちの計である!
「オロロロロロロロロロロ……」
盛大に吐いた。
だって見てみろよアレ!壁から無数に上半身だけ突き出しているゴブリンとかの惨状を!
顔を赤らめ快楽に染まった表情で盛大に喘ぎ声あげてるんだぜ?見た目は元の姿のままで。
そして再起不能になったモンスターがボトボトと壁から解放されて壁の外側に積まれていく。
虚ろな瞳、恍惚とした表情、そして下から流れ出る白濁液。
流石にキツいってッッッ!!!予想以上にメンタルに響く!どう見たってグロ画像じゃん!こんなの女子供に見せられないよ!見た目可愛い女の子ならミラクルおっきしてたところだけどモンスターなんだもん!
壁の内側のことはもはや想像すらしたくないと思った。
◇◇◇◇◇◇
第1防壁、王都を囲い外敵から身を守る最大の防壁。そこに備え付けられた見張り台から勇者リクシャは眼下の大平原を見下ろしていた。
「あの霧で覆われて3時間か……状況は?」
「はい。あれから未だに動きは何一つありません」
「そうか」
「あのギルドマスター……あの霧はなんなんでしょう……それにモンスターの大群は……」
「俺にもわからん。だが状況から見るにあのクソ虫がやったと見るべきか」
「クソ虫?」
「いや。いい。なんでもねぇ。なんにしてもまだ状況は不透明だ。各員警戒を怠るなよ」
「了解しました」
隣で同じように状況を見守るギルドマスターが職員とやり取りをいているが、リクシャはそれに興味すら示さず、無言で濃い霧が立ち込める大平原の方を向いていた。
勝負の取り決めをしたあとの彼の言葉を思い返す。
「あの数だ。派手にやるから巻き添えになりたくなかったら、外に出てる奴ら全員引っ込めて、手出しはするな」
彼のその言葉に難色を示したのはギルドマスター。彼の事を信頼していない彼女は彼1人だけに任せる事を危険視した。
しかしそれをリクシャは押しとどめる。いざとなったら自分が何とかすると。そのリクシャの発言で渋々ながら彼の言葉をギルドマスターは了承した。
外に出ていた斥候や先遣隊を呼び戻し、王都を防衛する為に集まった冒険者や騎士団にモンスターが外壁に取り付くまで手出しはするなと指示を出した。
そうして彼はたった1人でモンスターの大群に向かった。
「頼むよ!お願いだからやめてくれよ!流石のキミでも無謀がすぎる!ボクはどうなったっていいから!キミのためならなんだってする!なんだってするから!だから、行かないで……!」
彼が出立する間際に彼に懇願し泣きすがるリゼルの姿が印象的であった。あれから彼女はずっと隅でメソメソ泣いている。
それとは対象的だったのは話を聞き駆けつけた。彼のパーティーメンバーであった。
「ガンマ様、今夜の晩御飯は何に致しましょうか?」
「おい旦那様!これから私と散歩の約束だったじゃないか!?へ?お座りで待機してろ?はい!わかりました!はぁ!はぁ!はぁ!」
「あるじー。腹がすいたんだが。触手1本出してから行ってもらえるか?」
などなど随分と呑気な様子だ。見るに何一つ心配はしてない彼に対する絶対的な信頼度が伺えた。
かく言う彼もまた散歩にでも出かけるような気軽さで向かったのだが。
面白い奴だとリクシャは思う。
初め会った時は、ちょっと言動が荒い、ごくごく普通の平凡な奴だと思った。
強者の纏う覇気もなく。手練が内に秘めるしたたかさがある訳でもなく。
彼から感じるのは一重に邪な考えだけだった。
口先だけの馬鹿な男だと思った。
しかし短い間ではあるが、その評価は変わっていく。
勇者という絶対的な強者であるリクシャにも解き明かせない事をやってみせて、リクシャに対して一切の物怖じせずに食ってかかってくる。仕舞いにはリクシャにも出来ないことをやって見せると戯言を宣った。
自分に対してこのような行動、言動、態度を見せる人は初めてであった。
だから余計に面白いと感じる。
勇者という立場、来る日も来る日も無機質に感慨もなく作業的にモンスターを殺して回り、どこかで欠落した感情。
その無くした感情が彼とのやり取りで少しだけ顔を出した。
もし彼が言った通りにこの勝負に勝って見せたとしたならば――。
「おい!霧が晴れてきたぞ!」
誰かが叫ぶその前に状況の変化を目隠し越しに食い入るようにリクシャは見ていた。
「な……なんだ……これは……?」
霧が晴れたその先に広がった光景を見てリクシャは口元を歪める。
「おまえは面白い奴」
モンスター達が倒れ付し積み重なって大きな円を描いている。動きは無い。全てが全て倒れて王都に進行する気配は無い。
どうなっているかはわからない。何をしたのかさっぱりわからない。
わかることがあるならば、それは彼が王都に一切の被害を出さずに1000体ものモンスターを食い止めた事だけ。
つまり勝負は彼の勝ち。
リクシャの感情が動く。
この感情をなんと表現していいのかリクシャはわからない。
わからないがこの感情に従うのはおそらく間違いはないと、そう思った。だからリクシャは動く。
全力の身体強化で持って見張り台から跳躍した。外壁の外に降り立ち勢いそのままに一直線に駆け抜ける。彼が居るであろう場所に向かって。
「よう勇者!来たのか。ほら約束通り食い止めたぞ。勝負は俺の勝ちだな!」
見つけた彼はニヤニヤと笑いながら語りかけてきた。
しかしリクシャはそれを無視して駆ける。彼の横を通り過ぎても、なお駆ける。
積み重なったモンスター目掛けて駆け続けた。
「は……?あぁッッッ!?おまえ、まさかッ……!?」
通り過ぎたリクシャを前に一瞬唖然としたが、すぐに何かに気がついたのか彼が声を上げる。だがもう遅い。
力を込めておもいッきり感情任せに、積み重なったモンスターをぶん殴る。その衝撃で一度に数十体ものモンスター達が宙を舞った。
「あーあ……無抵抗のモンスター相手に酷い仕打ち……」
諦めたように彼は呟く。
「おまえは言った。この勝負「私の手を煩わせたら私の勝ち。手を出すかどうかは私が決めていい」って。残念。おまえは私の手を煩わせた」
「言ったけどさ……それは汚くない?」
「知らない。勝負は私の勝ち」
感情のままにリクシャは宣言した。
「これでおまえは私のモノ」
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