#18 勇者との勝負



「んぎぃいいいいいーーーーッッッ!!!」



時が動き出すと同時に姫様の嬌声が室内に響いた。



「「「は……?」」」



一同、揃って口を開けて唖然とする。何が起こったのかまったく理解出来ない。


俺の首が飛ぶ、そう思った瞬間に場面は一転。一瞬にして切り替わったのだから。



「あっ……あっ……」



縛られ吊るされた姫様の身体が大きく波打つように痙攣する。口からは意味を成さない言葉ばかりが漏れる。


時間停止時の蓄積された刺激が一瞬にして姫様を襲っているのだ。頭の中はぐちゃぐちゃに訳の分からないことになっているだろう。


そして、さらに張り付いた振動する小石が秘所を刺激し新たな快楽の波が押し寄せる。



「んひぃいいいいッッッ!!!」



一際大きく声を上げ、激しく身体を痙攣させた。下腹部から盛大に黄色い液体を撒き散らす。


姫様の身体は力を失ってガクリと項垂れる。ピチャリピチャリと音を立てて姫様から流れ出した液体がその下に水黙りを作っていく。


一瞬にして押し寄せた快楽の高波を脳が処理しきれずオーバーフローして気絶したか。とりあえず振動を止めてやる。



「ひ、姫様……!?こ、これはどうなって――あ、くぅ、食い込む……!な、なんで私は縛られて……!?」



黒騎士が姫様の痴態で我に返るが、黒騎士は縛られ吊るされたままだ。身動きをすれば当然黒騎士の引き締まった身体、その秘所に荒縄が食い込む。



「は?は?は?えぇ?あれ?ガンマくん?あれ?」



隣のクソザコちゃんが状況についていけずに目を白黒させる。



「……んな!?なんだ!どうなってやがる!?」



ギルマス殿がわけも分からず叫ぶ。



「くっ!なんだどうなっているんだ!?何故、私は縛られて――って裸!?あ、いや、んんんっ!」



じたばたと現状を把握しようとする黒騎士。自分が縛られている現状にさらに服を着ていないことに気が付き、身体が徐々に紅潮していく。



「……これ、おまえがやったの?」



混沌とする場で彼女だけは動揺することなく俺の方を向いていた。痴態を晒すメンバー2人の事など気にした様子もなく。冷静沈着、氷のような冷たい印象を受けた。



「なにをしたの?」


「見ての通り縛って吊るした。流石に自分が殺されるってなった時に何もしないわけがないだろうに」


「おまえかッッッ!!!このような真似をしてただですむと思ってないだろうな!くっ……!」



黒騎士が叫び魔力が膨れ上がる。身体強化で縄を引きちぎろうとしているようだが、縄はビクともせず拘束を抜け出せない。


その荒縄。ガンマくん特性の荒縄ぞ?ちょっとやそっとで引きちぎれると思ったら大間違いだぜ!あのドラゴンフィジカルのメストカゲですら力のみでブチ切るのに結構な時間を要する代物だ!



「くっ……!待ってろセロ!今、俺がその縄をといて――」


「まぁ待てギルマス殿」



吊るされた黒騎士を解放するべく動こうとしたギルマス殿を声で制す。



「ギルマス殿は俺がどういった手段で2人を縛り上げたかは理解出来たか?理解出来てないなら下手に動かない方がいいぞ。これと"同じ目"にあいたくないならな」


「このクソ虫がッ……!やっぱりてめぇにリゼルは任せらんねぇと思った俺の判断は正しかったようだなぁ!このゲス野郎ッ!」


「勘違いするなよギルマス殿。仮にアンタが自分の首に刃物突きつけられてリゼルを寄越せと言われたらどうする?」


「そんな奴はぶっ殺すッ!」



反射的に即答するギルマス殿。言い放ってからバツの悪そうな顔をしている。


The脳筋。血の気が多い。これで俺にあーだーこーだーとはどの口が言ってるんだって話である。



「ぶっ殺してないだけ俺はまだ良心的な対応だと思うんだが」


「ぐっ……クソがッ……だが流石に、これは……」


「はぁ……分かったよ」



ため息をひとつ吐いて《転送》を発動。姫様と黒騎士を縛っていた縄を手元に戻した。


バシャと姫様が自分で作った水溜まりの上に落下し、ドサリと黒騎士も床に落下した。



「姫様……!」



開放された黒騎士はすかさず姫様に駆け寄り無事を確かめる。気絶しているだけで外傷は少し縄のあとがついたぐらいだと確認するとキッとこちらを無言で睨みつけてきた。


下手なことを言ってまたなにかされないかと警戒しているのだろう。



「なんにしてもリゼルの勇者パーティー加入は無しって事で、"お話し合い"はこれで終わりでいいか?他に何にも無いようなら帰るけど」



席を立ち上がりながら、勇者パーティー――勇者の方を見る。勇者の顔はこちらを向いている。目隠しされていてその目は見えない。感情も気薄で何を考えているかはまるっきりわからなかった。



「まって」


「まだ何かある?」



勇者の制止の声に止まって聞き返す。



「おまえ……面白いね」



面白い、とはこれ如何に。何をもって面白いとしたのか。はっ!?まさか勇者も緊縛プレイに興味津々で?それはいいね!私も縛られたい的な?くっ、こんなことなら勇者も諸共縛り上げて置けばよかったか……!



「私にも何したかまるでわからなかった」



勇者でも流石に止まった時間での出来事は認知出来なかった。当然だ。《時間停止》は俺の手札で最強のカードだぞ。これを見破られていたら、かなり厳しいものがある。



「おまえに興味がある。私と勝負して」


「勝負?別に構わないけど。勝負っていうからには一切の手加減はしないぞ。アレより酷いこといっぱいするがいいのか?」



未だに意識の戻らない姫様を指差す。女の子との勝負となったら手加減無しで女騎士ルート直行である。確実に容赦なくちんちんは突っ込むまである。



「ゆ、勇者様!ちょっとボクから彼との勝負はやめておいた方がいいと進言させてもらってもいいかな!」



ガンマくん被害者の会、会員ナンバー4。リゼルさんがまってまってと止めに入ってきた。



「なぜ?」


「そ、それはですね!その……えっと……彼と戦うと……子供っていうか……あの……」



なんだよクソザコちゃんやめろよぉ。今、相手の同意(?)の元、勇者と激しい身体のぶつかり合いが出来る流れだったじゃん。余計なこと言うなよー。



「私が犯されると?」


「……はい」



体験者は語る。俺との勝負の末路を。勇者のストレートな物言いに顔を赤らめちっちゃくなるクソザコちゃん。恥ずかしがってるの?普段あんな事やこんな事いっぱいしてるのに。なにそれ可愛い。好き。



「私を犯すの?」


「はい。勝負っていうなら、おちんぽ無しじゃ生きられない身体にしてやります」


「ちょっとガンマくんんんんんんんん!???!?やめて!ホントそういうのやめてくれないかな!?母上も居るんだから!ほら見てくれよ!母上が鬼の形相でこっち見ているよ!?」



バカヤロウ!雷ババアが怖くてちんちん出来るか!ちんちん!



「おまえやっぱり面白いね。いいよ。出来るならやってみるといい」


「ゆ、勇者様ッ!?」



挑発するように勇者はニヤリと口元を歪めて俺の方を向く。


よっしゃ!言質頂きましたッ!いやー俺も酷いことはあんまりしたくないんだけどなーここまで言われたらなー。やぶさかじゃないなー。致し方無し致し方無しゲヘヘヘヘヘ。



と心の中でほくそ笑んでいると、なにやら部屋の外が騒がしくなってきた。ドタバタと部屋に近づく足音が聞こえドンドンとギルマスルームの扉がノックされた。



「ギルドマスター!緊急の要件が!中に入ってもよろしいでしょうか!」



ギルドの職員か扉越しに叫ぶように呼びかけてきた。



「なんだ!入って――」



――こい、と言おうとしたところでギルマス殿は姫様の惨状をみて改める。この現場を見せるのはわりと不味い。



「くっ!入ってくんな!取り込み中だ!その場で要件だけ言え!」


「え?は、はい!モンスターの襲撃です!目測で数は1000体は越える大規模集団です!先頭集団は1時間もしないうちに第1防壁付近に到着する模様!至急、対応してください!」


「1000体だと……?くっ、こんな時にバカデケェのが来やがったな……わかった!すぐに向かうからちょっと待ってろ!」


「はい!わかりました!」



ギルド職員は返事と共にドタバタと足音を立てて遠ざかっていく。


モンスターの襲撃。なんとも絶妙なタイミングで来たもんだ。姫様がさっき言った"いつ来てもおかしくない"という言葉が脳裏を過ぎる。


しかも数は1000体以上と来たもんだ。普段なら多くても数百と言ったところなのに、軽く見積って普段の10倍以上の数。かなり不味い状況だ。



「……ってわけだが――」



ギルマス殿は姫様を見やるが、姫様の意識はまだ戻っていない。



「ソルトは無理そうか……となると勇者とセロだけか……2人でやって何処までやれる?」


「倒すなら出来る。けど、守るのは無理」



問われた勇者は淡々と答える。大規模襲撃と聞いても顔色ひとつ変えない。


1000体ものモンスターが相手だ。無限の魔力を持つ勇者ならば殲滅するのは可能だろう。


しかし、いくら勇者とはいえ限界があった。1000体ものモンスターの大軍から王都を守りきれるかと言えば答えは否である。手が足りないのは明白だ。



「おいクソ虫!ソルトを使えなくしたてめぇには責任とって働いてもらうからな!」


「ソルト……?あぁ姫様ね。大丈夫。それは言われなくても協力する」



ギルマス殿に即答で返す。



「てめぇ……こういう時は素直なんだな……」



納得がいかないと表情で訴えてくるギルマス殿。俺をいったいなんだと思ってるんでしょうね。自分の性格がどうしようもないのは自覚はあるが、流石に嫁達をほおっておいて逃げ出すほど白状じゃない。


というか嫁達がピンチなら全力で敵を潰しに行くというもの。


しかしまぁモンスターの襲撃か。これは俺にしては好都合と言えば好都合か。



「よし。丁度いいから勝負しようぜ勇者様。俺が1人でモンスターの集団を食い止めれば俺の勝ち。食い止めきれずに勇者様の手を煩わせたら勇者様の勝ち。勇者様は自分の判断で手を出すかどうか決めてくれて構わない。どうだ?」


「はぁああ!?てめぇこんな時に何言って――」


「まって」



俺の混沌無形な話にものも推そうとしたギルマス殿を勇者が止めた。勇者はゆっくりと口を開く。



「私には出来ないこと。おまえに出来るの?」


「出来なきゃこんな勝負を持ちかけるわけないだろ」


「そう。出来るんだ」



ニヤリと勇者は口元を歪める。



「ちょ、ちょっと待ってくれないかいガンマ君!流石のキミと言えどもそれは流石に無理なんじゃないかい?相手は1000体を越えるモンスターの大軍だよ!いくらなんでも無茶が過ぎる!」


「リゼル。何度も言ってるが俺はおまえを手放す気は一切無い」


「が、ガンマ君……」


「おまえは今夜の寝床を温めて股を濡らして待っててくればいい」


「ちょっとガンマ君!?そういうとこ!本当にそういうとこだよキミは!ここはもっとカッコイイこと言ってくれないかい!?」



一転してプンスカ怒るクソザコちゃん。うん。確かに俺も今の発言はちょっとどうかと思った。


でも俺はヒーローなんかじゃない。四六時中エロいことしか考えてないただのドスケベだ。



「それで勇者様。勝負は受けるか?」



だからこそ俺には俺のヤリ方があるってもんだ。



「いいよ。その勝負うける」


「よし。それじゃ俺が勝ったらリゼルは諦めてくれ。俺が負けたらリゼルの勇者パーティー加入にもう口出ししない」


「それはダメ」


「は?圧倒的におまえに有利な条件だと思うんだが、何が不満だ?」


「私が勝ったら。おまえを貰う」



ビシリと勇者は俺を指差し宣言した。



「おまえは面白い奴。だから私のモノにする。それに、おまえを貰えばその子も付いてくる。一石二鳥」


「なんとも強欲なことで。わかった。それでいい」



そうして俺と勇者との勝負が始まった。





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