#12 新婚初夜どこいった?
「はぁ……はぁ……刻印が熱い……あるじめぇ。我の魔力を抜き取ったな……」
聖女ちゃんを抱えてメストカゲの墜落現場に到着した。半壊した教会。その瓦礫の山の上にメストカゲが居た。
息を荒らげるメストカゲ。かなりの高さから落ちたが傷1つ無いようだ。流石はドラゴン頑丈である。
今更だがファンタジー生物のドラゴンは魔力で持って空を飛ぶ。そのため魔力を抜き取った事で墜落したのだ。
「わぁ!これがドラゴンさんですか!近くで見ると大きいですね!」
聖女ちゃんが感嘆の息を漏らす。初めて近場で見るドラゴンに興奮気味である。
「む?誰だ……ってあるじではないかっ!?探したぞ!今までどこにいたんだ!」
聖女ちゃんの声に反応して振り向いたメストカゲが俺に気がついて喜びの声を上げる。
「やかましいっ!」
「んごぉっっっ!?!!」
間髪入れずに怒りに任せて俺は全力の身体強化からのフライングキックをメストカゲの腹にぶち込んだ。
変な声と共にメストカゲの巨体が吹っ飛び、教会に更なる被害が出た。
魔力が無いドラゴンなんぞ、まさにただのデカいだけのトカゲだ。恐るるに足らず。
『怒り』そう俺は怒っている。
「よくもこれからお楽しみっていうところを邪魔しやがって、コノヤロウッ!」
結婚式が終われば何が待っていたか?言わずもがな新婚初夜ックスである。ウェディングドレスの花嫁2人とくんずほぐれつお楽しみと人生に1度あるか無いかの最高のめくるめく快楽が俺を待っていたというのに!俺、この為に頑張ったのに!ちょっとだけ禁欲もしたのに!それに水を指しやがってからに!許さん!絶対に許さんからな!
湧き上がる感情は怒り。俺のエロマンガみたいな生活の邪魔をするというのなら、例えそれが女神様だって許す訳にはいかないのだ。
まぁ、原因はほぼ自分にあったりするから自業自得だったりするんだけども。知らん。
おお!許さんぞ悪しきドラゴンめ!(棒)
「ぐぬぉ……さ、流石はあるじだ……番である我を容赦なく蹴り飛ばすとは……この容赦の無さ!やはり我の番はあるじをもって他に居ない!さぁあるじ!共に我らが巣穴に帰り、もっと子を作ろう!交尾!交尾っ!」
何事か戯言を喚いているメストカゲ。
「何言ってるんですかこのトカゲさんは!ガンマ様と子作りするのは私ですッ!ぽっと出のトカゲさんはさっさと巣に帰ってください!」
ビシィっと指を指して宣言する聖女ちゃん。あらやだイケメン。聖女ちゃんカッコイイ。好き。
「なんだこの人間のメスは?我のあるじと子作りだと?何を馬鹿な。あるじは我の番。貴様のような華奢な人間のメスに興味などあるわけがない」
「その言葉そっくりそのままお返し致します!畜生風情にガンマ様が性的欲求を覚えるとは思えません!」
「畜生?この女神の実子である四季龍の我を畜生風情と?はっ!大口を叩いたなメス!喰らってやる!」
ぐわっと大口を開けてメストカゲは聖女ちゃんに突進する。しかしながら、それを許す俺ではない。
すかさず聖女ちゃんとメストカゲの間に割って入った。
「ロエちゃんに手を出そうとする奴に容赦はしない!」
お前にはとっておきをくれてやるぞメストカゲッ!
「《日本魂壱ノ型・女体盛り》ッッ!!」
スキルの発動と共に顕現する巨大な"皿"
それはメストカゲの巨体をも上回るほどの大きさ。
「せいやっ!」
「ぬごっー?!」
突進してくるメストカゲのその勢いを利用しつつ、腕をとって力任せに一本背負いをキメる。轟音と共に皿の上へと背中から仰向けに叩きつけた。
俺のとっておきは皿の上に対象を乗せる事でその効力を表す。
「か、身体がまったく動かない!?それに、な、なんだ空から……ーー!?」
突如、空から降り注ぐのは無数の野菜、果実、肉に魚と様々な料理。次から次へと降り注ぐ食材はメストカゲの上に盛り付けられていく。
そして完成するメストカゲの女体盛りッ!
これぞ48のスケベスキル――その奥の手。
《日本魂壱ノ型・女体盛り》である。
現代日本、古くから伝わる伝統的な性文化がひとつ『女体盛り』
全裸の女性に料理を盛り付け楽しむという日本が産んだドスケベ文化である。
やりたい。是非ともやりたい。日本人として日本人に生まれたのなら、この日本の伝統芸に憧れを示さない男子がいないわけがない(誇張)
そんな俺のジャパニーズスケベソウルが荒ぶり辿り着いた極地こそ《日本魂壱ノ型・女体盛り》である。
これは契約魔法を用意たスキルになっており、特定の条件を満たすことによって契約が執行される。
契約の条件は3つ。
"皿の上"に"女体"を"盛り付け"る事だ。
この条件を満たすことで契約魔法が執行され、対象が女体盛りと化す。そして――。
「ぐおぉおお、またか!また動けぬぅ……!」
女体盛りと化した者は食事が終わるまで動けなくなるのだ!動いたら料理が台無しになるからな!
「わぁ!凄いです!なんか美味しそうな料理がいっぱい降ってきましたよ!ガンマ様、これはどうなっているんですか?」
「この料理は本当の料理じゃない。盛られた当人の魔力無いし生命エネルギーが具現化したものだ」
空から降ってきた謎の料理の正体は本来であれば魔力。盛られた者の魔力を強制的に吸い出し、料理として具現化させる。
しかし、メストカゲは俺に魔力を吸い取られ、ほぼ残量が無くなっている。その代わりとして生命エネルギーが強制抽出され料理として具現化している。
魔力をMPとするならば、生命エネルギー、早い話がHPみたいなものである。全部無くなれば死ぬ。
まぁ、このメストカゲ。四季龍とか大層な肩書きを持っているだけあって、その生命エネルギーもほぼ無限みたいな量があるから、この程度でどうこうなるものでも無い。
「まったく動けぬこの状況……あ、あるじは動けぬ我にナニをするつもりだ!またあんな事やこんな事をするつもだな!はぁ!はぁ!」
ナニを想像したのか息を荒らげるメストカゲ。
「人の事を喰う喰う言ってるおまえにはちょっと自分が喰われることを味わってもらおうと思ってな」
「は?」
「おまえの上に盛り付けられた料理はおまえ自身の生命エネルギーで出来ている。つまりその料理はおまえ自身と言っても差し支えないわけだ。それを食われる事はつまりどういう事かわかるか?」
「いやいやまてまてなんか我の思ってたのと違う」
「大丈夫。大丈夫。喰われるのも気持ちいいぞ。多分」
「のぉーーーー!!!!」
結婚式という祝いの席に女体盛り。これほどの贅沢があるだろうか?いや無いだろう。ならば全力で楽しもう女体盛りを!ドラゴンだけど。
そんなこんなあり俺達の結婚式は幕を閉じた。
メストカゲ襲来の影響でわりと洒落にならない被害を受けた王都。
伸びまくった植物に建築物の大半は被害を受け、大乱交大会の影響で複数の女性が妊娠した。
しかし、不幸中の幸いと言うべきか。この世界の男女比率は男性2割女性8割と何故か男性の出生率が低いエロマンガ仕樣であった。最高か。
そのため、あの大乱行大会があっても妊娠した女性は全体の1割り程度。
その1割の女性にしても大半が「既成事実が出来た!」なんて喜んでいたりする。それをネタに揺すられ独身男性が結婚を余儀なくされ。既婚者にしても第2第3の嫁が出来る事になり、世はまさに結婚ラッシュ。
王都復興の傍ら、簡易的な結婚式が何度も行われた。
銀月龍、春の化身たるドラゴンは、まさに春を連れてきた結果となったわけだ。
被害を受けた建築物にしても、根を張った植物などなどを取り除くのではなく、それを利用する形で新たに改装して手間を最小限に抑える事となったようだ。
咲いた花にしては、ほぼそのまま。これから王都は花がいっぱい咲いてる素敵な都ということにしようなどとぶん投げ案が可決した。
そうして王都は春の都として栄えていくのはまた別の話。
で、そんな大事件を巻き起こした張本人であるメストカゲだが……。
「帰らん!我はあるじと一緒でなければ絶対に帰らない!番は常に一緒に居るものだ!絶対にあるじから離れんからな!」
との事で俺の言うことをひとつも聞きやしない。一晩では淫紋による支配も完全なもので無い。抵抗に抵抗を重ねたメストカゲに根負けした。
強制送還する事も出来るが、コイツから目を離すと何をしでかすか分からない。順当に目が届く範囲に居てもらう方が安心出来る。
流石にドラゴンの姿で傍に置く訳にも行かず《擬人化(ヒューマナイズ)》をかけた。
「ほぉ。これが人の子の身体か。なんとも心許ないな」
角、羽、尻尾とドラゴン要素を残しつつ、病的なまでに白いアルビノのスレンダーな肢体。その半分ほどは鱗に覆われている。銀髪癖毛のモン娘お姉さんが爆誕した。これなら「ただの竜人です」とギリギリの無理矢理、誤魔化せる範囲だ。
「よし、あるじ。我は腹が減った何か喰いたい」
見目麗しく、聡明さを兼ね備えたその姿に心奪われそうになったが、残念ながら中身はただの腹ぺこトカゲである。まぁ力を発揮できないように常に魔力を抜き取っているから、空腹感を覚えるのだろう。
とりあえず腹パンになるまで注いでやった。いやほら淫紋の支配強めないといけないし。しかし、まぁやっぱりドラゴンの身体より人間の身体の方がいいなぁと思いましたまる
「これが伝説の四季龍か……」
そんな光景を虚ろな瞳で眺めている女騎士。きっと今までの常識とか価値観がガラガラと音を立てて崩れて言ってるに違いない。女騎士よ。深く考えたら負けだぞ。
「まったくガンマ様ったら本当に節操が無いんですから!これは誰が誰のモノかというのをしっかりわからせなければなりませんね!」
独占欲が強めな聖女ちゃん。ニッコリ笑顔で俺に迫る。目は全く笑っていなかった。《良性化(フタナリ)》《女体化(コンバージョン)》を強要された。逆らえなかった。
聖女ちゃんにたっぷりわからされた。俺でなければメス堕ちして聖女ちゃん専用のしごき穴に覚醒するところだった。危ない危ない。はひっ!私は聖女様専用です!お好きな時にご使用ください!はぁはぁ!
そんな銀月龍襲来事件から早いもので半年が経過。
長らくの調教の末、メストカゲの淫紋の支配がほぼ完璧なモノになり。俺は聖女様専用のメス奴隷となった。今じゃすっかり自分から喜んで腰を振ってる。聖女様しゅき。はっ!?俺は一体何を……。
「お?目が覚めたか。今、朝食が出来るからちょっと待っててくれ」
目を覚ました俺の目の前には朝食を用意する裸エプロンの女騎士が居た。なんたる新妻ムーヴ。なんやかんやで女騎士が1番まとも(?)な存在なのかもしれない。
「あっ!?コラ!危ないから今はっ……!まったくしょうがない奴だな旦那様は……」
とりあえず秒で襲った。
そんな感じで嫁2人(+その他1匹)と共にエロマンガみたいな生活を送っていた。
傷跡を残しつつも王都もだいぶ復興して、かつての生活を取り戻しつつある。
「そう言えばガンマ様。魔王討伐はどうなったんでしょうか?」
女騎士との事後。4人で朝食を囲んでいると。ふと聖女ちゃんが口にした一言。
魔王。魔王なぁ……もうなんか今が幸せでわりとどうでもよくなってきてるんだよなぁ。
「魔王か。前もモンスター被害がそこそこ増えたとは思っていたが……最近はそれの非では無いな。週に1回ほどのペースで王都にもモンスターが押し寄せるようになった。これは異常だ」
女騎士がボヤく。
「魔王復活。噂程度のモノかとも思っていたが現実味を帯びてきた。本当に復活しているやもしれん」
なるほど。俺は美少女魔王が居ることを疑ってはなかったが、一般人的には復活してるかもという見解だ。
魔王うんちゃら騒がれては居るものの実際の所、魔王の姿を見たものはまだ居ないという。故に、かもしれないの状況で止まっている。
俺もこの半年間、ただスケベな事ばかりをしていた訳では無い。ちょくちょく魔王についての情報を調べてはいたが魔王の正体については分かってない。
ただ、気になる噂は耳にした。
「魔王の配下を名乗る『魔人』って奴と出くわしたのが居るらしいぞ」
「魔人?それは初めて聞くな」
この異世界。人間の他に森人(エルフ)、土人(ドワーフ)、獣人(ビースト)、海人(フィッシャー)、竜人(ドラゴニュート)などなど様々な人種が存在するが、『魔人』と呼ばれる者は未だかつて居なかった。
「なんでも「我々は魔王様に仕える魔人。この世界は魔王様に捧げる」とかなんとか言ってたらしい。モンスターと人を掛け合わせたような見た目で全員がすっごい美少女だったとか。そんな現実離れした存在が居るわけがないと与太話ってことになってるけどな」
その話を聞いてちょっと興奮した。
要は美少女のモンスター娘集団って事だろう。それを従える魔王は実にけしからん。というか魔王も美少女である訳だし、魔王を討伐(性的な意味)すればその美少女モン娘集団も我が手に出来るのではないか?素晴らしい。絶対、魔王倒す(性的な意味で)
しかし、魔人ねぇ。なんとはなしにカラミティ・デス・フォレスト・プリンセス・スパイダー・クイーンことカラ美の事が脳裏を過った。
「ふむ。半人半魔の美少女集団か……」
「半人半魔ですか……」
じっとり聖女ちゃんと女騎士の視線は、ガツガツと謎のでかい骨をむしゃぶるメストカゲに注がれている。
「むしゃむしゃ……なんだ?我に何か用か?むしゃむしゃ」
視線に気が付きメストカゲはキョトンと首を傾げた。
「モンスターと人を掛け合わせたというと、ハリングさんがまさにそれだと思うんですが」
「そうだな。竜人というにはドラゴンの色が強い。半人半魔――魔人と言えなくも無い」
そして2人の視線は俺に向いた。
「ガンマ様」
「旦那様」
「まって。俺、疑われてる?その魔人集団と関わりがあるんじゃないの?って疑われてる?」
「旦那様よ。私はこれまでの人生の中でモンスターを人に変える馬鹿げた魔法は旦那様が使う以外で見たことも聞いたことも無かった」
「ガンマ様はメスのモンスターさんと出会った時、どうなさいますか?」
「《擬人化》使ってスケベします」
「その後は?」
「…………その場に放置」
「放置したモンスターさんのその後はご存知ですか?」
「………………わかりません」
たらたらと冷や汗が頬を伝う。
「…………」
「…………」
「…………」
「むしゃむしゃ」
静まり返る場。メストカゲの咀嚼音だけが響く。
「…………もしかしてなんだけど…………魔人が言う魔王様って…………俺?」
「可能性は充分あるな」
「そうですね。この流れからしてガンマ様の可能性は非常に高いかと」
マジ?
魔王様、美少女じゃねーじゃんッ!
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