#10 結婚式は春の訪れと共に



紆余曲折、いろエロあったが本日は俺、聖女ちゃん、女騎士3人での結婚式である。


俺があしらった最高級ウェディングドレスを身に纏う2人の花嫁。眼福である。頑張った甲斐があった。


聖女ちゃんはともかく超ミニスカウェディングドレス姿の女騎士は股をモジモジとして恥ずかしそうにしている。よし、狙い通り。



「な、なんで私のはこんな短いんだ……これでは少し動いたら下着が見えてしまうでは無いか……」


「いいぞラナ姫!可愛いぞっ!」


「こ、こういう時に姫を使うなぁ……」



だって姫って呼んで欲しいって言うからー。



「それにしてもこのドレス。凄い肌触りです。それに本当に綺麗で……これは一体なんの素材で出来てるんですか?」


「素材?これはカラミティ・デス・フォレスト・プリンセス・スパイダー・クイーンの糸を織た布で作った。そこらの鎧より遥かに防御力もある。多少ドンパチした程度じゃ破けないから激しく動いても大丈夫だ!」


「はぁ!?お、おま!こ、これ!そんな高価な物だったのかっ!?」



大袈裟に驚いてくれる女騎士。いい反応してくれるなぁ、好き。



「……からみてぃです?これはそんな高価な物なのですか?」



キョトンと小首を傾げる聖女ちゃん。あざと可愛い、好き。箱入り感がある聖女ちゃんが知らなくても無理はない。



「カラミティ・デス・フォレスト・プリンセス・スパイダー・クイーンはデスフォレストの奥地に住まうと言われる災害級モンスターです。その糸から作る布は女神の羽衣の様だとも言われ、下着1着で家が1件建つほどの高級品です……それをこんな贅沢に使って……」


「ふぁ!?そんな高級品なのですか!でしたらこのドレス1着で――」


「おそらく町がひとつ出来ますね……」


「わぁ凄いですねぇ」



聖女ちゃん語彙力消失。スケールがデカくて思考が停止した模様。


かく言う俺もわりと驚いてる。高級品だと知ってはいたが詳しい値段までは知らなかった。そんなにするんだね。町ひとつがなんぼのもんじゃ。めくるめく新婚初夜ックスの方が大事じゃ。



「嬉しくない?」


「「嬉しいですッ!」」



間髪入れずに2人揃って返答を返してくれた。よし!今後もじゃんじゃんカラ美産の布でエロい下着とかコスプレ衣装とか作ってプレゼントしよう!俺氏、御満悦。



「これのあとで聞くには些か怖いのだが……ちなみにこれは何の素材なんだ?」



おずおずと左手の薬指に嵌めた不紫花の婚約指輪を見せながら女騎士は問うてくる。



「幻想的な輝きを放つ紫色の宝石……それにこの途方も無い魔力密度。アメシストなどとは違うようだし、これは一体なんなんだ?」


「私の指輪の宝石も。どこか優しくポカポカしてて、まるで春を感じさせるような銀色の宝石。これは何なんでしょうか?」


「銀色の方は銀月の涙で紫の方は不紫花の結晶だ」


「銀月の涙ですか。ラナ知ってますか?……ラナ?」


「…………」



口をあんぐり開けて絶句する女騎士。あ、白目剥いてる。



「アクメイキをキメたみたいな顔をしてラナはどうしてしまったのでしょうか。ガンマ様、またラナにえっちな事しました?」



スケベは全部俺のせいみたいな言い方。実に光栄だが今回はまだエロい事は何もしてない。遠隔操作出来るローターもセットしてない。



「それでガンマ様。銀月の涙とは何なんでしょうか?」


「銀色のデカいトカゲが居てな、文字通りそれが流す涙だ。なかなかの高級品で何があっても壊れない至高の宝石だ!」


「何があっても壊れない……まるで私とガンマ様の絆の様です!素敵ですね!」


「それにちょっとしたオマケもある」


「オマケですか?」



近くの花瓶に刺さっていた花を拝借。俺はそれをクシャリと握りつぶした。



「こら!ガンマ様!そういうことはいけません!めっ!ですよ!めっ!」



聖女ちゃんにめっ!された。興奮した。



「ロエちゃん、ちょっとその指輪に魔力込めてみて」


「はい?こうですか?」



魔力を込められた銀月の涙が淡い銀光を放つ。するとその光を浴びて潰れた花が、まるで時間が遡っていくかのように再生していく。程なくして花は元通り――いや元よりも美しく再生した。



「わぁ!お花が元通りに!凄いです!凄いです!」


「花だけじゃなくて植物なら大概は再生、成長させることが出来るぞ」


「本当ですか!?銀月の涙って凄いんですね!」


「凄いなんてものでは無いですよロエ様ッ!」



あぁ、女騎士が復活した。



「まさか本当に本物なのか!この銀月の涙はッ……!ご、ご主人様、こここここれを何処で手に入れたんだ!?」


「何処で手に入れたって。そりゃおまえ銀月の涙なんだから銀色トカゲを泣かしてとってきたに決まってるだろ。他に入手方法があるものでも無いし」


「あわわわ」



泡を吹いて女騎士は卒倒した。危なっ!


俺はそれをすかさず受け止めた。ウェディングドレスが俺が汚す前に汚れる所だった。まったく何やってるんだこのメス犬は!躾だ!躾!



「あっ!?またラナにえっちな事して!ラナばかりズルいですよ!私にもしてください!」


「してない。してない。あとでたっぷりしてあげるから今は我慢、我慢」



結婚式が終われば新婚初夜ックスが待っているのだ。今は我慢の時。



「むぅ!約束ですよ!いっぱい!いーっぱいしてくださいね!もし約束を破ったら――!」



股間がひゅんってなった。大丈夫。ついてる。まだ俺のムスコはついてる。


でも、聖女ちゃんに無理矢理ヤラれるの気持ちいいんだよァ……はっ!?俺は一体何を考えている……!



「ちなみにラナの紫の奴はなんなんですか?」


「それは不紫花っていう紫の花をまとめて凝縮して宝石にした。銀月の涙には劣るが高級品だな」


「そうなんですか!」



自分の貰ったものの方が高級品だと聞いて嬉しそうな聖女ちゃん。



「俺が作ったものだから世界にひとつしかない特別製だ。その希少性を考えると銀月の涙とどっこいどっこいかも」


「そうなんですか……」



自分の貰った物がどっこいどっこいだと聞いてちょっとガッカリしてる聖女ちゃん。


わかりやすいなぁ。でもガッカリされてもこれは譲れない。嫁に優劣はつけない。みんな大好き愛してる。



「あと身につけてると多分ちょっと寿命が伸びる」


「なるほど!それはババアのラナには丁度いいですね!」



確かにそうだが聖女ちゃんの口が汚い。誰だ俺の聖女ちゃんを汚した奴は!俺か。汚せる所は全部汚した感はある。



「はっ……!?ラナはババアじゃない!お姫様だ!」



気絶していた女騎士が覚醒した。なんか世迷言を言ってる。



「ささ!ガンマ様!そろそろお時間です!妄言を垂れ流すババアは放置して2人で参りましょう!」


「そうだな!行こうかロエちゃん!」


「ちょ!?ラナを置いてかないで!ご主人様ぁあっ!」
















そんなこんなで結婚式が行われた。


聖女様と元神殿騎士団長の有名人2人の結婚式に参列客はかなりの人数が来ている。


ほぼ知らない人しか居ない。


2人に比べて無名の俺。むしろ俺を知っている人がほぼ居ない。1部の教会関係者ぐらいのものである。


周囲から羨望やら嫉妬やら疑惑やら様々な感情の視線が向けられているが、1番は「誰やねんおまえ」という視線だった。


王都に来てから聖女ちゃんとスケベしてるか女騎士とスケベしてるかのどっちかだったからなぁ。最高に充実した日々だったけど。


俺の本来の目的は魔王討伐(性的な意味)だ。ほぼ忘れてたが。


結婚式終わったら、ある程度は冒険者活動して多少は名を売ろう。流石にビックネーム2人の旦那が無名のままではカッコがつかない。



いや、しかし、でも、やっぱり、どうしよう。



有名になって箔がついたとしよう。するとそれに釣られて女の子が擦り寄ってくる。


しかし、無名のままで聖女ちゃんと女騎士に寄生するクズ男の様に振舞ったとしよう。


すると、どうだ。俺をただのクソザコナメクジヒモ太郎と侮るメスガキが「ざーこざーこ」と煽りに来るのではないだろうか?


そして、それを返り討ちにしてわからせてやる。



ありよりのありあり。



名声に惹かれ擦り寄ってくる女の子にろくな奴などほぼ居ないだろう。大概はビッチか腹黒だ。そんな奴らとのスケベは楽しめるか?


俺はただ性行為がしたいのではない。スケベがしたいのだ(?)


愛の無い性行為など要らぬ。



ていうかメスガキをわからせたいッ!(オイ)



よし!名前を売るのは無しの方向で!実力は隠して嫁2人に寄生するヒモ太郎を演じていく事にしよう。そのうちきっとメスガキが釣れるはずだ(希望的観測)


冒険者活動かぁクソ生意気なメスガキが釣れるの楽しみだなぁ(ゲス顔)



そんな事を考えてると両隣の花嫁に脇腹を抓られた。



















結婚式はつつがなく終わりを迎えようとしていた。



外に出て3人で花びら舞い散る道を歩く。


聖女ちゃんはニッコリと最強の聖女スマイル。破壊力がありすぎて滾る。


参列客もそんな聖女ちゃんに見とれて惚けている。


はっはっはっ!この聖女スマイルは俺のモノ!お前らにはやらんからな!



対する女騎士も満面の笑みである。見るからにはしゃいでいる。ミニスカウェディングドレスでルンルンである。完全に周りが見えてない。


見てみろ神殿騎士達がドン引きしてるぞ。凛々しく気高い団長様のそんな姿は見たくなかったとばかりに。


すまんな団員共。うちのお姫様は夢見る少女をこじらせた残念なババアなんだ。可愛いじゃろ?



かく言う俺は空気である事に徹している。主役は彼女らだ。俺が目立ってもしょうがない。というか知り合いもなんも居ない。わりといたたまれない。知ったこっちゃないけど。


自身の左手の薬指を見る。


そこには5色に光る結婚指輪が嵌められている。


金、赤、黒、銀、紫。


嫁達と交換した結婚指輪を《創作(クリエイション)》で混ぜてひとつの指輪にしてある。俺と嫁達との絆の証だ。


ちゃんと嫁が増えたことを嫁に報告しないとなぁ。


故郷に残してきた妊娠中の嫁3人。もう少ししたら出産するだろう。流石に子供達が生まれる時には立ち会いたい。しばらくしたら1度、帰省しようと思う。



魔王討伐する!って旅立ってからの事を思い返す。



新たに嫁を2人増やした。以上。



…………まぁ十分すぎる成果だよね!(すっとぼけ)





空は快晴。春の麗らかな気候が俺たちを優しく包むよう。


一陣の風が吹く。春一番か。辺りを舞っていた花びらがひときわ高く空へと舞い上がっていく。


俺たちの結婚式を祝うように。

























…………春?




カーンカーンカーンカーンカーン




煩いまでに鐘の音が響く。周囲がどよめいた。


この鐘の音は式を祝福するものでは無い。まったく別の意味を孕んだ鐘の音。



警報。



「ドラゴンだぁあーーーーっ!!!!ドラゴンが王都に向かって飛んできてるぞぉおおおッッッ!!!」



誰かが叫んだ。





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