#6 モンスターとはやるかやられるかの関係である



激闘の末(戦闘開始3分)カラミティ・デス・フォレスト・プリンセス・スパイダー・クイーンの《擬人化(ヒューマナイズ)》に成功した。抵抗が激しく魔力が半分ぐらい持ってかれたが成功したので良しとしよう。


そこにいるのは人間サイズまで縮小した半人半蜘蛛のモンスター娘。


白い髪に赤い肌、黒い6つの瞳に8本足。完全に異形のそれだが、めっちゃ美少女になったカラミティ・デス・フォレスト・プリンセス・スパイダー・クイーン――いい加減、名前が長い。カラ美でいいやカラ美。


プリンセスとかクイーンとかってついてるからね。流石にメスだったよね。



よしスケベしようぜ!



「―――――ッ!」



カラ美は自身の変化に驚き、体を確かめるように見ては動かしている。よしチャンス。


俺はカラ美に《変化(メタモルフォーゼ)》で触手を生やしながら飛びかかり、押し倒した。



「――ッ!?」



抵抗しようとするカラ美。それを許さず、すかさず触手で全身を絡め取り動きを封じる。さらに触手から感度倍加の液体をこれでもかと滴らせる。



「《麻痺(パラライズ)》」



すかさず行使した《麻痺》で若干動きが鈍った。レジストされてかかりが悪い。半がかりといったところか。


なおも激しく暴れ回るカラ美。純粋な力勝負。かなり力が強い。時間をかければ振りほどかれそうだが――!



「《発情霧(エストレスフォッグ)》」



顔面を鷲掴み《発情霧》を直吸いさせてやる。



「《感度倍加(センシティブ)》」



さらに立て続けに発動させた魔法。


48のスケベスキルが1つ

《感度倍加(センシティブ)》

対象の性感帯の感度を3000倍にする魔法だ。みなまで語らぬ。スケベ忍者のアレを再現する魔法である。


流石に脳みそぶっ壊れそうな危険性があるので人間にはまだ怖くて使ったことは無い。モンスター相手にはよく使うが。



「――ッ!――ッ!――ッ!?」



抵抗が弱まり。びくっびくっびくっとカラ美の身体が痙攣し始めた。表情は蕩け、舌を出して涎を垂らしている。



「《刻印(イングレイブ)》」



抵抗が弱った隙をついてカラ美の下腹部に淫紋を刻む。



「さーて、カラ美ちゃん。こっからが"本番"だ!」



俺はニチャニチャとゲスい笑顔と共に複数の触手を蠢かせた。















不老の魔女リーバ=バアロ


俺の嫁の1人で現在妊娠中の彼女は人間でありながら数百年を生きる不死の存在だ。この不死性にはいろいろと理由があるのだが、今は置いておく。


リーバは若い頃には世界各国あらゆる所を旅して回ったそうな。その結果、様々な知識を有しているリーバだが。それゆえの弊害で人間関係がとても煩わしくなった。そんな煩わしさを断つために俺の故郷近くの魔の森の奥地に1人住み着いたそうな。


元の気質が根暗、ヒッキー体質、コミュ障とまさに陰キャの代表みたいなリーバは一人暮らしを満喫していた。


そんなリーバの趣味は執筆活動。文章を書くことが好きだったリーバは旅で培った自身の知識を書籍化していく。

そのどれもが出るところに出ればかなりの高額で売れるであろう代物であった。


あとロマンス小説やらちょっとエッチな小説とかも書いてた。それらは俺が片っ端から朗読してあげたり実践してあげた「もういっそ殺せ!」なんて言ってた。死なんくせに。


もちろん俺はリーバの著書は全て読破した。さらにリーバから書籍にある知識以外のものも吸収している。俺の中には、かの不老の魔女様の知識がまるっと吸収されているわけだ。



そんな知識の一旦。



『モンスター』


それは異形の怪物。人の敵対生命体。


またの名を魔物。魔力だまりから自然発生したとか、魔力によって元動物が変質した成れの果てとか、様々な説が浮上しているが真実は未だに明らかにはなっていない。


基本的に奴らは人間を食料か苗床ぐらいにしか思っておらず、出くわせば10割襲ってくる。


中には知性を持ったモンスターも居るには居るが、人間に対する認識は変わらない。やっぱり襲ってくる。


だからこそモンスター相手に情も情けも必要は無い。こちらがヤらねば食うか犯されるかしかないのだから。







様々な液体に塗れ、アヘ顔で虚空を見つめるカラ美。時折、体をビクつかせている。



(スッキリ)



そして俺の手にはカラミティ・デス・フォレスト・プリンセス・スパイダー・クイーンの糸が大量にあった。しこたま出させたし、こちらもお返しとばかりにしこたま出した。ついでに周辺に張り巡らされていた糸も全部回収した。




とりあえずウェディングドレスの元の材料は入手完了。次、行ってみようか。


と、その前にカラ美との激戦(?)で大量の魔力を消費した。淫紋経由で魔力をカラ美から吸い上げて回復する。カラ美の体が激しく痙攣した。魔力吸い上げるのも気持ちいいものね。



「ご馳走様。また素材が必要になったら遊びに来るから。その時はよろしくな」



最後に意識の朦朧としたカラ美の頭を撫で踵を返す。次なる素材を求めて俺はその場を後にした。


















デスフォレストを抜けた先には広大な山脈地帯。ここまで到達した冒険者はひと握り。人の手はまったく入っておらず、ありのままの自然がある。そこに一際高く佇む巨大な山があった。



『霊峰』



見上げるほどに高く聳え立つ。頂上付近は雲がかかってて見えない始末。まともに登山したら1ヶ月ぐらいかかりそうだ。


しかし、俺の目的の物はあの霊峰の頂きにある。


そして、1ヶ月もかけてちんたら山登ってる時間は無い。カラ美ちゃんと遊んでて丸一日使ってる。期限は残り2日。



やむ無し、荒業を使おう。



出来れば使いたくないが新婚初夜ックスの為ならば多少の無茶は通すべし。それが男の子ってもんでしょ!



地面に手を付け深く集中する。練り上げる膨大な魔力。常識を無視して不可能を可能とするだけの魔力量。5割――いや8割は必要か?失敗したら元も子もない8割行ってみよう。



ゴウッと練り上げた膨大な魔力に周辺が震える。



一発勝負だ!ヘマすんなよ俺!



「《粘液(ローション)》ッッ!!」



気合いと共に魔法を行使する。行使する魔法は《粘液》ローションを出す魔法だ。


量の掌から吹き出したローションが爆発する。立っていた場所を盛大なクレーターに変えて俺は地面から砲弾のように飛び立った。



「おっほぉおおおおおおおーーーーーッッッ!!!!!」



爆音と共に手のひらから莫大なローションをジェット噴射の如く放出して、高速で空をぶっ飛んでいく。


《粘液》の放出に勢いをつけて、その推進力で俺は空を飛んでいた。これぞ秘技ローション・ジェットである。細かい理屈はご都合主義で粉砕した知らん。


大量のローションを撒き散らしながら空を駆け上がっていく俺。雲を突き抜け、勢いそのままに霊峰の山頂を越える。雲のその先に広がる1面の青空に到着したところでローションの勢いが衰えていく。


体感する浮遊感。重力から解き放たれた気分だ。


うかうかもしてられないほっといたら落ちる。こんな高さから落ちたら流石に死ぬ。



「《魔法鏡(マジックミラー)》」



《魔法鏡》で空中に足場を作り出した。どこでも壁を作れる《魔法鏡》いろんな用途で使えて便利だ。流石に長年愛されてきた企画ものだけある(関係無い)



ふわりと《魔法鏡》の上に着地する。なんとか上まで飛べた。一安心だ。



雲の上の世界。見渡す限りの雲海が広がり所々雲を突き抜けた山の山頂部分が見える。その中でも一際大きいのが霊峰の山頂。


霊峰の山頂は大きく窪んでクレーターのようになっていた。そこは色とりどりの花が咲き乱れる花畑。さながら空中庭園といった所か。


遠目からでもわかる。その空中庭園の真ん中に巨大な生物が横たわっている。



ドラゴンだ。



銀色の鱗に全身覆われた西洋風のドラゴンが横たわっている。寝ているのであろう。実に美しい。


かなり離れているこの距離でもわかる莫大な魔力量。


おそらくあれで間違いない。


ドラゴン、その中でも最上位に位置する四季龍と呼ばれるドラゴンが居る。



『銀月龍ハリング』



太古より存在するとされる古のドラゴン。四季龍。その一体であり"春"を操るとされる伝説級のモンスターだ。俺がここに来た理由である。



"銀月の涙"と呼ばれる銀色の宝石がある。


銀月の涙は月の光のように淡い銀色の光を放ち。その美しさはあらゆるものを魅了し虜にする魔性の輝きを秘めている。


さらにそれを身につけた者は銀月龍の力の一端を行使出来るようになるらしい。至宝中の至宝だ。


これはもはや金でどうにかなるものではなく。国宝レベルの代物。現存する銀月の涙は今は何処かの国の宝物庫に厳重に保管されてるともっぱらの噂。真偽は不明。


そんな伝説級の代物である銀月の涙。その名の通りあの銀月龍の涙なのである。あいつの涙の結晶が銀色の宝石となるらしい。



銀色と聞いて1番に思い浮かぶのが銀髪ロングヘアーの聖女ちゃんである。



銀月の涙――是非とも聖女ちゃんに送る婚約指輪の素材にしたいッ!最高の美少女には最高の婚約指輪を!


それが俺がここに来た理由である。



「四季龍だかなんだか知らんが、女の子の為に戦う俺に負ける理由はない!銀月龍……泣かせてやるッ!」



性的な意味で!四季龍って全頭メスらしいからね!



とはいえ俺の魔力残量はローションジェットでハッスルし過ぎたの性で約2割ほどしか残ってない。些か心許ない。


戦う気は満々だが。ワンチャン話し合いで済むならそれもいいかと思う。でも相手はモンスター。多分、人みたら食おうとしてくるだろうなぁ。



まぁなるようになるさ!



「《転送(トランスポート)》」



《転送》対象を1度行った場所や目の届く範囲に転送出来る魔法。今の見える位置なら銀月龍の近くまで飛べる。


俺は自分を対象として《転送》を行使。銀月龍のすぐ側に降り立った。



俺の接近に気がついたのか、ムクリと銀月龍がその巨体を動かし起き上がる。


見上げる程に大きいその巨体。間近で見るとその見た目もあって圧迫感が凄い。



「……人の子か。珍しい」



人語を話す銀月龍。流石は最上位のドラゴン。知性があるようだ。カラ美ちゃんなんて人の言葉ひとつもわからなかったのに。



「ここには用があって来た。単刀直入に言おう。銀月龍ハリング。おまえの涙が欲しい」


「ここまで人の子が訪れるのはいつ以来か……ふむ、思い出せん……」



銀月龍は独り言のように呟き。明後日の方向を向きながら思案していた。


こいつ俺の話をまるで聞いてない。聞く意味が無いと言わんばかりに。


おっとりとした口調で、こちらの話は一切無視を決め込み。銀月龍は続けて口にする。



「ここ数年寝てたからな。腹が減ってる。前回、来たモノは浅ましくも逃走したからな。此度はしっかり喰らってやろう。光栄に思えよ人の子よ」



おまけに完全に食い物としか見られてない。


やっぱり知性があって人語を語れてもモンスターはモンスターか。


だったらヤるしかない。むしろ、もとよりそのつもり!この銀色トカゲが!わからせてやる!戦闘開始ッ!



ばさりと銀月龍は翼をはためかせると全身から淡い銀色の光を放つ。するとそれに呼応するように辺りの植物達が蠢いた。


"春"を操るとされる銀月龍のその能力。春に木花が芽吹くように、奴は植物を自由自在に操れる。


急速に成長する植物達。ぼこぼこと地面から巨大化した植物の根が飛び出してきた。それは意志を持っているかのように動き、俺に殺到する。


そんな触手っぽいもので俺に挑もうとは片腹痛い!ホントの触手ってもんを見せやる!


《変化(メタモルフォーゼ)》を発動させて触手を生やし、無数の植物の根を迎撃していく。数は多いが俺の触手の数はそれを圧倒する。


《変化》で生やした触手の数は魔力さえあれば幾らでもその数を増やせる。


襲い来る植物の根を触手でもって打ち払う。こちとら触手は体の一部。1本1本の練度が違うぜ!



「ほぉ、なんとも面妖な魔法を使う人の子だ。これは味にも期待できるな」



余裕ぶって語る銀月龍。くっ!《擬人化(ヒューマナイズ)》してわからせてやりたい余裕っぷり……!


しかし、魔力残量を考えると《擬人化》は厳しい。カラ美の擬人化で5割の魔力を消費した。カラ美より強いであろう銀月龍を《擬人化》させるには現状では魔力が足りない。レジストされなければいけるだろうが抵抗されない訳は無い。



「これはどうか?」



ぶわりと辺り一面に植物の花粉や胞子が舞い上がる。色とりどりのそれが銀月龍の放つ淡い銀光を受けて幻想的な景色を作り出す。さながらファンタジー絵本の中に迷い込んでしまったかのような錯覚をうけた。


しかし、これはそんな生易しいものでは無い。


吸い込んだり触れただけで、毒、麻痺、混乱、睡眠、幻覚etc…状態異常のフルコースを食らう羽目になる劇物だ。


媚薬系には超耐性を持ってる俺だが普通の毒は普通に食らう。《粘液》を発動、全身を覆うように展開し、劇毒の空気をシャットアウトする。


ローションの壁に阻まれ劇物達が俺に効果を及ぼすことは無い。



「水魔法か?にしては滑りそうな……ほぉ!なるほど!我が食べやすいように自ら下処理をしたか!人の子にしては感心だ。それならばつるりと食べやすそうだな!」



なんとも見当違いな事をほざく銀月龍。食うことしか頭にないんかコイツ。


まぁ俺はスケベする事しか頭にないが、それはよし!(?)



「もう待ちきれん。喰う」



大きな翼を広げて飛翔する。辛抱たまらんとはがりに銀月龍は大口を開けてこちらに突撃して来た。巨体に見合わぬ素早さ。


アレもこれも全部ガン無視。なんとも欲望に忠実だ。そういうとこ嫌いじゃない。



たが、これは好都合!



すかさず魔力を練り上げて魔法を行使する。



「《挟壁(スッポリウォール)》」


「ぬぉ!?」



銀月龍の突撃を阻むように顕現したのは巨大な壁。銀月龍の背丈とほぼ同じ大きさの壁だ。


ただの壁ではない。壁の真ん中には穴が空いていた。


まるで銀月龍が"ギリギリ通れそうな大きさの穴"だ。



一瞬、考える素振りを見せたが食欲に負けたのだろう、くぐり抜けられると考えたか、その穴に銀月龍は何も考えずに突っ込んだ。



「なんと……!?」



すっぽり



そんな擬音が聞こえそうな程、見事なまでに銀月龍は壁の穴に挟まった。

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