#4 女騎士は負かしてやらんとなぁ!







深夜、王都、教会本部、訓練場にて相対する2つの影があった。


俺と女騎士さんだ。女騎士さんは白銀のフルプレートアーマーに業物の大剣を背負っている。


軽く捻ってやる的な感じで、鎧無しに木製の訓練用武器を使おうとしたので「負けた時の言い訳か?」等々死ぬほど煽り散らかしてやったら、ガッチガチのフル装備になった。女騎士さん煽り耐性低し。


女騎士さんはやっぱり全力で来てもらって負かしてやらんとね。ある種の礼儀だ。



「ここは神殿騎士専用の訓練場だ。ここには結界が貼られていて、ちょっとやそっとじゃ外に被害は出ない。思う存分に暴れられるぞ」


「なるほどお約束だなぁ……あ、ついでにこいつも貼っておこう《魔法鏡(マジックミラー)》」



魔力を練り上げ魔法を発動する。


《魔法鏡(マジックミラー)》

48のスケベスキルの1つ

中からは見えるが外からは見えない壁を貼る魔法だ。言わずもがな元ネタはマジックミラー号である。


そんな壁を結界を覆うように展開。


これで中でナニが起きようとも外から見られる心配は無くなった。



「……不可視の壁か?」


「外からこちらが見えなくなるようにした。夜で誰も居ないが、団長殿の負かされる姿が晒されるのは流石に忍びないと思ってな」


「減らず口を……!」



煽ってやるとピキリと女騎士さんの額に青筋が浮かぶ。



「貴様。装備はそれだけか?」



女騎士さんは不機嫌を隠さず問う。


ガッチガチのフル装備に対する俺は私服に片手剣のみ。いつも通りの装備だ。防御力はまさに布切れ1枚程度のものである。



「人には実戦用の装備を持ち出させておいてそれか。貴様こそ、それを負けた時の言い訳にするわけではあるまいな?」


「これで充分だと思ったまで。なに油断してるわけじゃい。これは油断じゃなくて余裕だ」



ピシッ!



地面に転がって居た小石が割れた。溢れでんばかりの殺気と魔力が女騎士さんから向けられる。一般人なら卒倒レベルの殺気である。これは本気で殺しにくる。



「模擬戦を始めるぞ」



怒りを抑えるように女騎士さんが静かに呟いた。



「いつでもどうぞ」



殺気を向けられてもなお涼しげに俺は答える。



月明かりの下、戦いの火蓋が切って落とされた。



「《光刃》」



戦闘開始と同時に女騎士さんは大剣を縦に一閃。その軌跡をなぞるように光の刃が出現し、一直線に飛んでくる。


距離はある、光の刃の射線をしっかり確認し避ける。


真横を通り抜けていった光の刃は後ろの壁にぶつかると派手な光と音を出して消滅した。壁に傷はない、これが結界の効果か。


あんなもんまともに喰らえば真っ二つになりかねない。女騎士さん本気で殺しに来てませんかね?



「おいおい、殺す気まんまんかよ」


「この程度で死ぬようならどの道、聖女様の護衛など務まらん。わかったら潔く死ね」


「死ねと言われて死ねるか!《透明化》」



撹乱とばかり《透明化》を使って姿を消した。



「姿が消えた?ふん、その様な小細工。私には効かん!」



女騎士さんはその場で剣を振り回し、光の刃を飛ばす。


姿が見えなくても気配で追っているのか女騎士さんの狙いは的確だった。見えない俺に光の刃が殺到する。


それを身体強化を発動させ走りながら躱し、魔法を発動。



「《発情霧(エストレスフォッグ)》」



辺り一帯が薄く霧に包まれていく。



「霧?毒の類か。そんなもの女神の加護を持つ神殿騎士には効かんぞ!女神の加護はあらゆる状態異常を無効にする!」



そんなもの知ったものかとばかりに大剣を振るスピードが上がった。それに伴い飛来する光の刃の数が増える。


弾幕シューティングの如く押し寄せる光の刃達。


《発情霧》の効果が効いてくるまでは回避一択。なに回避だけに専念していれば避けられないほどじゃない。



「姿を消し、毒を撒き、そして逃げてばかり。実に小賢しい戦い方だ」


「はっ!離れたところから遠距離攻撃ばかりの団長殿には言われたくないな!」


「黙れ。貴様と一緒にするな。これが私の戦い方だ。文句があるなら逃げてばかりいないで、直接私を叩きに来い」



安い挑発だ。もちろん、そんな挑発には乗らず俺は回避に専念し続けた。




女神の加護を与えられし神殿騎士。与えられる女神の加護は光属性の魔法。光属性の魔法は主に回復と光を操る。


女騎士さんが使う光の刃は光を収束させ物理的に干渉する魔法だ。収束した光はあらゆるものを断ち切る刃になり、そして、あらゆるモノを阻む盾にもなる。


女騎士さんを見やる。いつの間にかにその背後には複数の光の盾が浮遊し、尚且つ女騎士さんを中心として球体状に薄く光が展開していた。


光属性の防御魔法だと思われる。ちょっとやそっとの攻撃じゃ、恐らく女騎士さんには届かない。



神殿騎士団団長ラナ=スロコック――

またの名を『教会の守護神』



聖女ちゃんから世間話の1つで聞いたことがある女騎士さんの話だ。


特筆すべき点はありとあらゆるものを阻む、その防御力。弱い攻撃は女騎士さんを中心に広がる球体状の光に阻まれ。それを越えても7つの光の盾があらゆる攻撃を塞き止める。


女騎士さんはその防御力でもって暴走した数百のモンスターから王都をたった1人で守り抜いたという逸話もある。まさに鉄壁。


そんな鉄壁の乙女だが、機動力はそこまで高くはない。


かわりにそれを補うのが、なんでもぶった斬るあの光の刃だ。あれを遠距離からガンガン飛ばす。


やる事は守りを固めて、高火力の光の刃で叩き伏せると実にシンプルながら強力。さながら頑丈な固定砲台と言ったところか。



だがしかし、その戦い方は俺にとって非常に相性がいい。



なんせ俺は女騎士さんにそもそも"普通に攻撃"するつもりが一切ない。故にいくら防御力が高かろうが関係ないのだ。



「はぁ……はぁ……」



女騎士さんの様子に変化が起こり始じめた。見るからに息があがり始めたのである。それに伴い。光の刃の精度も少しづつ落ち始めている。


疲れから息があがった訳では無い。女騎士さんの魔力量はそんな生易しい量ではない。まったくの別の理由で息があがり始めている。


どうやら徐々に効いてきたようだ。



「何故だ……状態異常は効かないはず……なのに体が……熱い……まさか、この霧かっ……!」


「御明答。この霧は吸い込んだ者は"発情"する」


「なっ!?」


「人が発情するのは状態異常ではないだろ?」



48のスケベスキルが1つ

発情霧(エストレスフォッグ)》

吸い込んだ者を強制発情させる霧を発生させる魔法だ。霧は無味無臭、毒素の類は一切含まれておらず体に害はない。


このスキルの便利なところは防ぐのが難しいってところだ。


他の魔法は相手の魔力量によって効き目が薄かったり、レジストされてしまう場合がある。だが、この霧は発生時に魔力を使うも、発生した霧は普通の霧とほぼ同じ。魔力云々関係なく相手の体に直接効果を表す。故にどんな相手だろうと、どんなに防御力が高かろうが、効き目が出るのだ。


変わりに強い風で吹き飛ばされてしまうという弱点もあるが。



「ぐっ……!」



女騎士さんは大剣を大きく振る。光の刃を飛ばす訳では無い。風圧であたりの霧を吹き飛ばそうと試みたのだ。しかし、焼け石に水。


覚えているだろうか、俺が最初魔法鏡を結界の上から重ねるように展開したことを。


アレは外から中を見えなくするようにする意味合いもあったが本来の目的は別。この訓練場は密閉した空間にする事が本当の目的だ。


お陰様で《発情霧》は漏れ出す事無く、この訓練場内を埋めつくしている。


いくら吹き飛ばそうとも、その霧は体にまとわりつく。



「団長殿。攻撃の手が些か緩やかになってきたが、どうかなされたか?」



俺は透明化を解除して女騎士さんを煽っていく。



「はぁ……はぁ……だ、黙れ……っ!」



フルフェイスのヘルム越しでもわかるほどに女騎士さんの息は上がっていた。ヘルムの下では顔を真っ赤にしていることだろう。


その状態で攻撃の手を止めないのは賞賛に値するが、それまでだ。もはや発情し正確さを失った女騎士さんの攻撃に俺が当たることは無い。


ちなみにだが、俺も《発情霧》を吸い込んでいるが効果はない。だって常にムラムラしてるから(オイ)


なんにせよ女騎士さんの動きはかなり鈍ってきた。ならば次の一手だ。



「《融解粘液(メルトローション)》」



地面に手を付け、そこから大量の液体を放つ。放たれた液体は俺を中心に訓練場一帯の地面を侵食した。



「……地面を濡らした?水魔法か……しかし、水浸しにしたところで……」


「こいつはただの水じゃない、ローションだ!」


「……は?ろーしょん?なんだそれは……」



聞いたことがない単語に女騎士さんは疑問符をうかべた。


当然だろう。元の世界では慣れ親しまれた(?)ネバネバぬるねるな液体ことローションだが、この異世界でローションは存在していなかった。


だから俺が魔法で作った。とっておきの改良を施して。



「なっ……?!足元が……溶けてっ……!酸の……類か……!」



女騎士さんの足元まで侵食した《融解粘液》はじゅーっと蒸気を上げて、触れた足裏を溶かし始める。



《融解粘液(メルトローション)》

身につけているものだけを溶かして相手を丸裸にするローションを出す魔法だ。


丸裸にする為ならどんなものでも溶かす。俺の魔力を死ぬほど込めているので、どんな防御魔法だろうと気合いで貫通する。そして鎧から服、下着まで容赦なく溶かして丸裸にする。


体は溶かさないし、一切の害はない。俺の作り出すローションの性質はほぼ水と一緒。飲み込んでしまっても問題なし、なんだったら水分補給にもなるという安心安全のご都合主義設定。


こればかりはスケベファンタジーに無くてはならないモノだ。これを開発した時の気合いの入れようは相当なものだった。エロに対する飽くなき情熱がそうさせた。


ちなみに服を溶かさない普通の《粘液(ローション)》や媚薬効果がある《媚薬粘液(スケベローション)》などバリエーションもあり。



「くっ……あっ?!」



1歩。たった1歩。女騎士さんは後ろに後ずさった。



しかし、それが運の尽き。



その1歩でもって、女騎士さんはローションに足をとられ――



「うわぁーっ!!」



――すっ転んだ。



《発情霧》の影響でふらつく頭でローションの上を歩くなどとローション初心者には不可能である。


そして、ローションの上。1度コケればどうなるかなど火を見るより明らかだ。



「くぅ……くそっ!この液体……!滑って……ぬぐっ……!?おのれ……!」



まともに立ち上がれもしない。ガシャガシャと音をたてて、立ち上がろうと力を込めれば滑り、ゆっくり立ち上がろうとしてもバランスを崩して滑り、滑り、こけて、倒れる。まさにローション相撲の1幕。


そして、そんなことをしていれば当然ローションは全身にまとわりつき――その装備を溶かす!



「……はぁ……はぁ……!クソッ……!鎧が溶けて……このままでは私も……!」


「その液体は身につけているものだけを溶かす。大丈夫、身体の方には一切の害はない」



まぁ、丸裸にはなってしまうけどね!


女の子を丸裸にするための魔法は他にも存在する。


服だけを転送させる事が出来る《転送(トランスポート)》や、着てる衣類をはじけさせる《強制解除(パージ)》など。


しかし、俺のイチオシは断然融解粘液だ。


為す術なく服が徐々に溶かされて、肌が顕になってくる。それが恥ずかしく羞恥に打ち震える女の子の姿。いとエモし。最高じゃんね。



「うぐ……このような……辱めを……はぁ……はぁ……貴様……許さんぞ……!」



鎧が溶け、下の衣類も半溶けになり、所々、肌色が見え始めている。ヘルムはすっ転んでる最中に脱げたので今は女騎士さんのその表情が見えていた。


《発情霧》の影響と肌を晒しつつある現状に顔は真っ赤。羞恥に耐えるように口はキッと結ばれ、こちらを睨みつけている。



「《光球》ッ!」



もはや立ち上がる事を諦め座り込んだままだが、女騎士さんはそれでもこちらに魔法を放ってきた。


手元に既に大剣は無い。すっ転んだ拍子に取り落としてローションで滑ってどっか行った。


大剣が無いと光の刃は放てないのだろう。かわりに光の球体がこちらに襲い来る。



この状況下であって、まだ戦意喪失しないその心意気や、よし。それでこそ女騎士と言うものだ。



スーッとスケートの様にローションで滑って避けながら女騎士さんに接近する。俺ぐらいのローションマスターになれば滑ってコケるなど無様な姿を晒すはずが無い。むしろ、このローションフィールドで俺の機動力は上がる。我、ローションと共にあり。



「《変化(メタモルフォーゼ)》」



滑りながら魔法を発動させて俺は背中からぬめぬめしてテカテカしたどう見てもアレな複数の触手を生やした。


お次の48のスケベスキル


《変化(メタモルフォーゼ)》


身体を変化させる魔法だ。様々ものに変化する事が出来るが、もっぱら背中から複数のぬめぬめてかてかしたスケベな触手を生やす。


触手は俺の思うまま自由自在に動き、おまけに触れたものの感度を倍増させる液体も出る。


やはり女の子を相手するのなら触手の1本でも生やせないと話にならない。手数がかなり増える。異次元な動きも出来る。



「な、なんだ、その……うねうねと……おぞましい触手は……!」



俺の変化を見て女騎士さんは声を上げるが、構わず女騎士さんに突撃。


途中、俺を阻む球体上の光を触手でもってこじ開ける。



「……くっ!光盾よっ……!」



女騎士さんの周りを浮遊していた7つの光の盾が動く。光の盾は1箇所に集まってひとつの大きな光の盾となり俺を阻むべく立ち塞がった。


硬い。込められている魔力の密度が濃い。これはちょっとやそっとじゃ突破は出来ない。だがしかし!


俺の意志をもって触手がぐんと伸びた。大きな光の盾を外から回り込み、覆いこむように大きく伸びる複数の触手。


こんなもの相手にするつもりは無い。狙うは本体。女騎士さん。



「くっ、こいつら……絡みついて!……んんっ!……やめろ!離せ……!あぁ……!」



捕らえた。光の盾越しに見える女騎士さんは覆いこむように殺到した複数の触手に絡めとられている。


触手は僅かに溶け残っていた残りの布切れを剥ぎ取り女騎士さんは完全に丸裸。そして、その肢体を舐るようにヌメヌメと触手が這い回っていく。



「んっ……!ぐぅううううーー……!」



ビクンッと女騎士さんの体が跳ねる。


発情し火照った身体に容赦なく這い回る触手に限界を迎えたのだろう。


スーッと溶けるようにして光の盾が消えていく。



「……はぁ……はぁ……私は……くっ……!」



荒い呼吸のまま、体から力が抜けたのか、四肢をダラりと触手に預けている。


光の盾は消え、俺を阻むものは無い。


ぴちゃりぴちゃりと足音を立てて近ずいて行く。



さてお楽しみはこれからだ。しっかり女騎士さんを負けせてやろう。











「はぁ……はぁ……頭が……もう……このような醜態……これ以上……生き恥を晒すぐらいなら……くっ!殺すなら……殺せ……!」



女騎士さんのぉ!くっ殺頂きましたァ!!



触手による攻めは続いている。その間、俺は一切手を出さずにその痴態を堪能していた。触手まみれの女騎士、眼福眼福。



「殺すわけないだろ。これは俺とラナさんとの勝負であって殺し合いじゃないんだから、負けを認めるっていうなら終わりにするが?」



「……このような……卑怯な手の数々……誰が……貴様なんぞに……負けを認めるものか……負け認めるぐらいなら……私は死を選ぶ……!」



「流石それでこそ女騎士だな!それなら《刻印(イングレイブ)》」



俺はそっと女騎士さんの下腹部に手を当て魔法を発動する。



「こ、今度は……なにを……!……んんっ?!あっ……下腹部が……んぁ!……熱いッ!……ああッ!」



見ると僅かに明滅する刻印が女騎士さんの下腹部に浮かんでいた。



「淫紋を刻んだ。これは対象者の快楽を増幅させ使用者に服従するようになる刻印だ。この淫紋は達する度に力を増し、宿主の心を犯して、意志とは関係なく快楽を求めるようになる。さて、いつまで持つかな?」



《刻印(イングレイブ)》

女の子に淫紋を刻んでスケベにする魔法だ。それ以外に魔力のパスを繋げ、魔力の供給、抽出も出来るようになったりするが、主な目的は女の子をスケベにする魔法だ。



発情霧にローションと触手。トドメに淫紋。さてこれで女騎士さんの理性はどう崩壊するか、見ものである。



加減は無しだ!全力で負かす!













「はぁ……はぁ……わかった……負けを認めます……あ、あなたに、服従を誓います……――だからっ……!」









「……みんなっ!ごめんなさい……っ!こんないっぱい負けちゃうザコ団長で……っ!ラナは簡単に負けちゃうダメな女ですっ…!」










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