第72話

 ジュリエッタは今起きた何もかもの意味が分からなくて、小首を傾げた。

「まあいいわ」と呟くと、香水石鹸の匂いにうっとりしながら体を洗い終える。

 風呂の湯を触る。

「少し熱いわね……ったくマーゴット、お風呂に入るから薪係を頼んだのに、あの子少し弛んでるわね……まあ、熱いからこれ以上焚かなくて良いけど」

 彼女はドワーフ製の手持ちの着いた水桶を手に取ると、小川の水を湯に入れる。

「うん、これくらいかな?」

 微笑んで、ドラム缶のお湯にするりと入った。

 朝の鍛錬による手足の重みが取れていく。

「はあー、お風呂って良いわね」

 ここでぼけーと霧がかかるジュリエッタの脳裏に橙夜の姿が蘇った。

「トウヤったら、何をしに来たんだろう……?」

 ……うん?

 違和感にたどり着いた。

 辺りを見る。

 気持ちの良い朝。

 自分を見る。

 お風呂。裸。トウヤ。男。全裸。

 熱い湯の中なのにすぅーと、ジュリエッタの体から温度が抜けた。

「きゃわ……」わなわなとジュリエッタの体が震える。

「きゃわわわわわわわわわーっ!!!」

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