第35話

川中亮平は間一髪で助かった。

 ダークエルフのアグライアーの常軌を逸する力のお陰だ。アグライアーはソーサラーでありながら戦士でもあり、一時的に筋力を増加させる『怒り』が使えたのだ。

 仲間だと思っていた皆に裏切られた彼は、アグライアーに涙した。 

「勘違いするな」彼女は素っ気ない。

「お前はまだ成長しきっていない、異世界人とやらの可能性を試したかっだけだ」

 その後、自分がバロード殺害の容疑者にされたと知った。もう表の世界で歩けない。

 数日前までは誰もが憧れの視線を向ける英雄だったのに。

「橙夜……橙夜ぁ!」亮平は憎しみに全身の血が沸騰いてした。

「見ていろ、覚えていろ、いつかお前を破滅させてやる! 俺が味わった以上の悔しさを与えてやる……これは俺のゲームだ! 俺だけがいい思いをするゲームなんだ! お前は徹底的に苦しませてやる! そうだ、その時まで死ぬなよ!」

 亮平は傷だらけで血まみれで哄笑した。いつまでもいつまでも笑い続けた。


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